ラグビー

高校日本代表主将・城央祐 イタリア遠征「全高校ラガーマンの意志を背負って戦う」

花園の表彰式で優勝旗を手に感極まる城(すべて撮影・斉藤健仁)

昨季は格上と思われていたアイルランドU19代表に勝利したラグビーの高校日本代表。今季も3度の高校代表候補合宿を経て26名が選抜され、3月14日から27日までイタリア遠征を行う。第49期の高校日本代表のキャプテンに選ばれたのが、昨季の春の選抜大会、そして冬の花園も制して高校「2冠」に輝いた桐蔭学園(神奈川)のキャプテン、FL/NO8城央祐だ。副将を任されたチームの頭脳SO服部亮太(佐賀工業)とともに、4月から早稲田大学に進学する。

イタリアU19代表と2試合

イタリアは近年、育成年代の底上げが図られている。高校日本代表は今回の遠征でイタリアのU19代表と2試合敢行する。3年目となる高橋智也・高校日本代表監督(一関工業)は、「遠征でイタリア代表を倒すことと、将来、日本代表を担う人材になることをゴールにしている」と話し、就任してから「ザ・ファースト・ムーブ(The First Move)」、つまり、常に先手を打って勝つことをテーマに掲げてきた。そのスローガンとともに、今季はさらに「本気」というチームポリシーも定めた。

桐蔭学園に続いて高校日本代表でもキャプテンを務める城

高橋監督はキャプテンに城を選んだ理由を「常に周囲を冷静に分析し、的確なリーダーシップを発揮できる人物であり、周囲からの信頼もある。最前線で体を張るべきFWからの選出であり、自らのプレーで周囲を牽引(けんいん)してくれる」と説明し、リーダーシップに期待を寄せた。

「代表に選ばれなかった人の分も」

花園を制覇し記念撮影。城はチームメートの中心で歓喜した

高校日本代表でもキャプテンとなった城は「初めての桜のジャージーを着ることができてワクワクします! 選ばれてうれしいですが、(高校日本代表に)選ばれなかった人の分も頑張らないといけない。みんなレベルが高いので、(キャプテンとして)特に気を付けることはない。自分が支えられている側でもあるなと思います」と話した。

城は茨城県守谷市出身。小さい頃は父の影響でサッカーをやっていたが、「身体が大きくてすぐ反則になってしまった(笑)」と、小学2年から地元の常総ジュニアラグビーフットボールクラブで競技を始めた。中学時代は南茨城ラグビースクールでプレーし、今回ともに高校日本代表に選ばれたCTB阿部煌生(こうき、流通経済大柏、明治大学進学)らとも一緒にプレーしていた。「花園」こと全国高校ラグビー大会で連覇を達成した桐蔭学園のNO8佐藤健次(早稲田大3年)の姿に憧れて、親元を離れて神奈川の桐蔭学園に進学した。

「話しやすい環境」で信頼関係築く

高校1年時は花園のメンバーには選ばれたが試合に出ることはかなわず、2年時は花園予選決勝で敗退した。3年時はキャプテンとなり、「徹」というスローガンを掲げて、関東新人、春の選抜大会、関東大会、そして花園と、15人制では無敗で駆け抜けた。特に東福岡(福岡)との花園の決勝は8-5という熱戦だった。

8-5という大接戦を制し、花園優勝を決めた桐蔭学園
花園決勝で東福岡を下し、抱き合って喜ぶ桐蔭学園

桐蔭学園ラグビー部は、大会前はもちろん、大会中、そして試合直前と、ミーティングを何度も行うことが文化となっている。「話しやすい環境を作っていた」という城は、自分から意見を言うことはあまりなく、司会役に徹していたという。

「桐蔭学園の一員として、新たな歴史を作ることができました。しんどいこともありましたが、いざ終わってみたら長いようで短かった。チームメートと信頼関係を築くことができていたし、いろんなことをみんなで考えて一つのことに向かって考えて行動することができた。強いチームが作れたというか、みんなが作ってくれた。僕はその先っちょに立っていただけ(苦笑)」と謙虚な姿勢を見せた。

右は花園決勝で対戦した東福岡の高比良主将。高校日本代表では同じポジションを争うライバルだ

憧れの佐藤先輩を追い、早稲田大へ

改めて高校時代の思い出を聞くと、「高校3年生の夏合宿かな。すべてのグレードで全勝できたのはうれしかった!」と振り返った。この夏合宿では、東福岡(福岡)、東海大大阪仰星、常翔学園(大阪)、京都成章、京都工学院(京都)など、全国的な強豪と対戦し、A~Dチーム、さらに1年生同士の試合でもすべて勝利した。桐蔭学園史上初めてのことだった。

城は多くの桐蔭学園のキャプテンの先輩同様に、春から早稲田大学に進学する。「(佐藤)健次くんに憧れて桐蔭学園に来て、健次くんが早稲田大に行った。桐蔭学園では入れ違いだったので、早稲田大で一緒にやりたい思いがあった。できればバックロー(FL、NO8)がやりたい」と話す。その佐藤は早稲田大で春から新主将に就任。城は憧れの佐藤とともに、アカクロのジャージーを着て試合出場を目指す。

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「仕掛けるラグビー」でイタリア倒す

ただその前に、高校生活最後の大仕事が待っている。高校日本代表のキャプテンとしてイタリアU19代表と激突する。身長185cmの城は、花園が終わってから体重はすでに7kgほど増えて99kgになった。「実家に帰ったので飯がおいしい! でもトレーニングはしていたので体脂肪は変わっていないですし、スピードもあまり落ちていない」

花園で優勝を決め、声援に応える城(左)

イタリアU19代表は、高校日本代表より平均で身長10cmほど高く、体重で10kgほど重いという。城は「桐蔭学園では自分たちが大きい立場でしたが、(高校日本代表では)自分たちが小さい立場になる。今までやってきたラグビーよりレベルが高いので、同じことをしていては勝てない。後手に回るのではなく、自分たちから仕掛けるラグビーをやりたい」と腕を撫した。

コロナ禍もあり、大半の選手が初の海外だという高校日本代表の選手たち。アウェーで海外の選手と対戦することは、将来に向けて大きな経験となるはずだ。城は「1万6千人の高校生ラガーマンの意志を背負って、プライド、誇りを持って勝ちたいと思います」と語気を強めた。常勝軍団のキャプテンだった城は、高校日本代表でもリーダーシップを発揮し、ピッチ内外でチームの先頭に立って白星に貢献する。

高校日本代表の城主将と服部副将(左)。2人はともに早稲田大に進学する

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