サッカー MF牧野、関大の一体感に包まれて
今年度最後の全国大会につながるリーグ戦も半分が過ぎた。リーグ戦の上位4位までが12月の全日本インカレ出場権を得る。この試合前の段階で暫定3位の関大は、大院大との「吹田ダービー」を2ー0でものにした。これで5連勝だ。
先制ゴールを決めたのは牧野寛太(3年、履正社)。キレのあるドリブルでの崩しを得意とし、抜群のキック精度を持つ。関大の誇るミッドフィールダーだ。
関大ペースながらも、なかなか決定的なチャンスをつくれない。前半30分、相手のファウルで左サイド、ペナルティエリア付近からのフリーキックを得る。牧野は静かにボールを置き、狙いを定める。「蹴った瞬間、ミスキックやと思った」。クロスにしたかったボールだったが、高く舞い、直接ゴール右隅に収まった。狙いとは違ったものの、自身約3カ月ぶりのゴールだけに、喜びはひとしおだった。
牧野が誇らしげにこう話す。「キックには昔から自信があったので、アシストでいい結果につながってると思います」。正確無比なパスで、何度も関大の勝利に貢献してきた。前回ゴールを奪った関学大戦も、フリーキックからの得点だった。セットプレーを得意とする関大で、2回生のときからほとんどの場面でキッカーを務め、得点につなげてきた。、このリーグ戦後期では、第7節終了時点でアシストランキング1位を独走している。
「ビルドアップの部分で攻撃に絡んで、ゴール前ならゴールもアシストもできるのが自分の特徴です」。得点に絡もうとする積極的な姿勢は、チーム内でも一目置かれている。主将で来シーズンのサンフェレッチェ広島入りが決まっているDF荒木隼人(4年、サンフレッチェ広島F.Cユース)や、関大の点取り屋であるFW加賀山泰毅(4年、JFAアカデミー福島U18)も、牧野を「攻撃の起点」と認め、信頼を置いている。
かつて堂安や初瀬とガンバの「黄金世代」に
牧野はガンバ大阪ジュニアユース出身で、当時のチームメイトには堂安律(フローニンゲン)や初瀬亮(ガンバ大阪)が名を連ねた。「黄金世代」の中にあって、そのままユースには昇格できなかった。
それでも名門の履正社高に進学すると、1年のときから10番を背負い、2年続けて全国高校総体でベスト8に進出。3年のときにはインターハイで得点王となり、優秀選手賞を受けた。さらには全日本高校選抜にも選出され、海外遠征も経験。高校サッカー界で、一躍その名を轟かせた。もちろん多くの大学からの誘いを受けたが、牧野が関大に決めたのには、一つの強い理由がある。「他のチームとは違う一体感」だという。
「練習とか試合を見てて、関大のメンバーじゃない自分にとっても一体感があったんです。だから、そこに入っていってサッカーがしたいと思いました」。そして「全員サッカー」のスローガンを掲げる関大サッカー部に足を踏み入れた。入学後の1年間はトップチームの下のカテゴリーで、全員で守り全員で攻める「関大スタイル」に自らを染める時間をすごした。「履正社では攻撃中心でした。守備が課題と感じてたので、取り組んでた部分もあります」。早朝に全体練習をする関大のシステムをメリットととらえ、自由に使える時間を自分の課題克服に費やした。
ライバルの存在が牧野の成長を促す
2年生からトップチームに所属すると、あっという間にスタメンに定着した。前田雅文監督は「調子はいいし、結果も年間通じて出せてる」と、牧野のパフォーマンスに太鼓判を押す一方で、「まだいける。あの子はまだまだいける」と、まだ見ぬポテンシャルの開花を待ち望んでいる。同じ左サイドのDF黒川圭介(3年、大阪桐蔭)はよき仲間であり、最大のライバルだ。2年生のころからともに左サイドで組んできた。黒川は全日本学生選抜やJリーグのチームの練習にも参加する実力者。ハイレベルの相方が牧野をさらに奮起させ、同じポジションの後輩の追い上げも、牧野を成長させている。
3年生の牧野にとって、そろそろ次のステージを本格的に考える時期になった。目指すはプロ。そのためにも結果を数字として残す重要性を感じている。一般的に3年生のときの全国大会で、スカウトにどれだけ強いインパクトを残せるかが大事だとされる。今年の夏は総理大臣杯の出場を逃し、チャンスをひとつ逃した。残された全国舞台は12月の全日本インカレだけ。「いろんな人に見てもらういい機会でもあるし、(黒川)圭介に比べたらまだまだだと思うので、しっかり活躍して注目されたいです」。言葉に力を込め、この冬と、その先のサッカー人生へ決意表明した。
「全員サッカー」を掲げる関大の一体感に魅せられ、自身の成長を誓った4年間。3度目の全日本インカレに出られれば、そこは関大にとっても牧野自身にとっても、絶好の晴れ舞台となる。そのためにも、牧野は残されたリーグ戦で貪欲にゴールへと向かう。