ラクロス

青学が初の決勝へ、立役者は「謙虚すぎるエース」鈴木佳奈

爆発力のあるプレーでチームを盛り上げ、ゴールを決めるAT鈴木

関東大学リーグ女子1部ファイナル4準決勝

10月27日@駒沢オリンピック公園
青山学院大9-8日体大

青学大はリーグ戦のAブロックを慶應大に続く2位で終え、6年ぶりにFINAL4の舞台に立った。日体大とのマッチアップとなったこの一戦。点の取り合いとなり、8-8で後半を終えた。サドンデス方式の延長戦である「サドンビクトリー」に突入。そして、MF河野菜奈(3年、実践女子)のシュートが決まり、青学大が創部31年目で初のFAINAL進出を決めた。今シーズンの青学は日本一を目標に掲げており、その思いがまず一つ実を結んだ。

「ボールを渡せば点を取ってくれる」

リーグ戦にくらべて大勢の観衆が駆けつけたこの日、ひときわ大きな声援を受ける選手がいた。鈴木佳奈(4年、川和)だ。彼女は花形ポジションのATでプレーしている。一番の役割は点をとることで、果敢にゴールへと迫る。そこまではどんなATでも、やる。彼女のすごさはここからだ。鋭く速いステップで敵をかわして放つシュートは、毎回と言っていいほどゴールネットを揺らすのだ。キャプテンの大矢百桃(4年、青山)も「ケロ(鈴木のコートネーム)にボールを渡せば点を取ってくれる、っていう安心感がある」と太鼓判を押すほど、チームメイトからの信頼は厚い。

鈴木は自身初のFINAL4の舞台でも、持ち味を十分に発揮した。
3-3で迎えた前半残り5分。ここで鈴木にスポットライトが当たる。
ピタリとマークしてきたDFを振り切り、ゴール前へ侵入する。ボールをもらうと、華麗なステップでDFをかわしてパス。観客席を沸かせ、シュートチャンスを生み出した。ここは得点には繋がらなかったものの、ラスト1分を切ったところで再びボールをもらった鈴木は、ゴーリーの足元にできたわずかな隙間へシュートを放ち、勝ち越し点を決めた。
鈴木は後半に入ると、さらに存在感を増す。柴田陽子ヘッドコーチが「躍動感があって、見る人をわくわくさせるプレーができる選手です。常に勢いのあるプレーでチームを活気づけてくれる」と評する通り、鈴木は爆発力のあるプレーでチームを盛り上げた。

結局この日、彼女が放った3本のシュートは、ファウルでカウントされなかった2本目を含め、すべてゴールへ飛び込んでいった。
「絶対に決めてくれる」。彼女はこの日のプレーで、仲間からの信頼をさらに深めた。

チームの鈴木への信頼は、準決勝でまた強まった

ハンドボール仕込みのセンスあふれる動き

スピードありテクニックありと、すべてを兼ね備えた鈴木佳奈に会場中が引き込まれていく。そんな彼女のプレーを支えるのは、中学、高校時代のハンドボールの経験だ。自身が「ハンドボールありきの今なので」と語るように、ハンドボール時代に得たものが、すべての動きに生かされている。とくにボールを運ぶときの1対1の勝負や、ゴーリーを引きつけて放つシュート。これはハンドボールそのもので、彼女のセンスがあふれ出すシーンになる。さらに「絶対に走り勝つ」という強い気持ちも、ハンドに打ち込んだ時期に植え付けられた。

あらゆるシーンでハンドボールの経験が生きる

鈴木は試合でのパフォーマンスを見れば誰もがファンになってしまうような選手だが、彼女の魅力は能力の高さだけではないと感じている。アップのときから全身全霊で取り組む姿は、チーム内でも際立っている。その理由を聞いてみると、「努力してるからできるんだ、って思ってもらいたいんです。だからどんなときも手を抜かないようにしてますね」と、照れくさそうに答えてくれた。ラクロスを始めたのは大学に入ってから。高校からの経験者もいる中で彼女がチームに不可欠な選手になれたのは、この見上げた心がけがあったからなんだろうと思う。

そして、この姿は彼女自身の成長だけではなく、チームのみんなにも刺激を与えている。
柴田ヘッドコーチは「すごく真面目な選手で本当にさぼらないですし、本当に努力家です。逆にまっすぐすぎて不器用な部分もあるんですけど、そういうところも含めて、エースにしては謙虚すぎるぐらいのいいヤツなので、後輩にも慕われてるんだと思います」とたたえた。
リーダーシップを発揮できるタイプではないと鈴木は自認しているが、「謙虚すぎるエース」は小さな背中でたくさんのことを伝えている。

全力で駆け出す鈴木

青学として初のFINALは、リーグ戦で敗れた慶大との一戦となる。
「リベンジマッチは絶対に勝ちきって、青学の歴史をもっともっと変えていきたい」
あまり胸の内を口にしない鈴木が、決戦を前に熱い思いを明かしてくれた。

鈴木はFINALという最高の舞台でもチームを活気づけ、みんなをわくわくさせるプレーを繰り出すだろう。その先にこそ、目標の「日本一」がある。

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