創価大、覚醒の打線と投手三本柱で鬼門突破し日本一へ
「どうした? って感じだよね」。明治神宮大会の出場権をかけた横浜市長杯準決勝の上武大戦。延長タイブレークの末に勝った創価大の岸雅司監督は、思わずこう漏らした。東京新大学野球秋季リーグでは「貧打、貧打って言われてた」と苦笑い。確かに打線が機能せずに優勝を逃し、最終戦でなんとか横浜市長杯に出られる2位に滑り込んだ。
それが市長杯になると上武大戦の15安打など好投手を次々と打ち崩して、決勝進出2校に与えられる明治神宮大会の出場権を獲得した。とくに4番の山形堅心(3年、明徳義塾)は4試合で3試合連続の本塁打を含む8安打を放ち、明治神宮大会でも注目を集めそうだ。さらに1番を打つ松村誠矢(4年、日本航空)や5番の下小牧淳也(3年、日大三)ら、しぶとくシャープに振れる打者が好調で、得点パターンが多彩だ。
好投手を育ててきた伝統
そして、小川泰弘(ヤクルト)、石川柊太、田中正義(ともにソフトバンク)ら多くの好投手を送り出してきた伝統は健在。佐藤康弘コーチの指導のもと来秋のドラフト候補に挙がる杉山晃基(3年、盛岡大付)、小孫竜二(3年、遊学館)、望月大希(3年、市立船橋)という右の三本柱に大きな期待がかかる。
最速154kmのストレートを投げる杉山、リーグ戦5勝と勝ち頭の小孫に加え、187cmの長身から投げ下ろす望月が伸び盛りを迎えている。望月は春に右ひじ靭帯の損傷などで出遅れていたが、上武大戦で6回途中からマウンドに上がると、「インコースへのストレートが良かった」と振り返るように、角度ある球を強気で投げ込んでいった。8回に1点を奪われ追いつかれたが、延長10回のタイブレークでは3人の打者全員を外野フライに打ち取ってゲームセット。初めてやったと笑う両手でのガッツポーズをして、仲間たちと喜びを分かち合った。
望月は、杉山と小孫の存在を「よきライバルでアドバイスもし合います」と明かし、「激選区の関東を勝ち抜いた自信を持って一つずつ勝っていきたいです」と明治神宮大会へ抱負を語った。
横浜市長杯で関東代表を決めるようになって14年目だが、これで7度目の突破となった創価大。だがリーグ2位からの明治神宮大会出場は初めて。それだけに、岸監督は選手たちがたくましく成長する姿に目を細めている。「大会を通して強くなってます。底力を出せるようになりました。『初めてのことをやってみよう』と言いましたが、本当にリーグ2位からはい上がってくれました」
これで下克上を終わらせるつもりはない。狙うは、春秋通じて10度阻まれている“全国4強の壁”を超えての決勝進出、全国初優勝だ。