アメフト やりきれ、4回生
いよいよ最終節だ。
まずは18日のリーグ最終戦、立命館大(6勝)-関西学院大(5勝1分)について触れたい。今年は5年ぶりに全勝対決とはならなかった。立命は開幕6連勝できたが、関学は前節の関大に苦しめられた。残り5秒でなんとか追いつき、負けずに済んだ。
「あの試合は何万回も見てます」
開幕時点では、両チームとも例年にくらべて低い地点からのスタートだったように思う。そこからの成長度合いは立命に分がある。しかも関学はエースRB山口祐介(4年、横浜栄)が、けがの影響で万全では臨めない。立命が優位とみる。
前節、京大に勝ったあと、立命主将のOL安東純一(4年、立命館宇治)は仲間たちの前で涙をこらえきれなかった。「これで関学とやれるんや……」。1年前を思い、感極まった。
昨年はリーグ最終戦で立命が関学に21-7で快勝。11度目の関西制覇を果たした。しかし再戦となった甲子園ボウルの西日本代表決定戦では一転、関学に3-34で完敗した。一瞬にして何もかも失った立命の選手たちは、涙に暮れた。
「あの試合の映像は何万回も見てます」。京大戦のあと、安東は言った。主将になってから、仲間に関学について語るたび、涙を流してきた。「関学のことしゃべったら、去年の2回目の試合を思い出してしまって、泣かずにいられないんです」。強烈に思い出すのは、関学にやられたプレーでもなんでもない。絶大な信頼を寄せていたキャプテンの反則だ。
西日本代表決定戦は関学にポンポンと二つのタッチダウンを奪われた。0-14。とはいえ、まだ第1Qだ。時間はある。直後の立命のオフェンスシリーズで、主将のWR近江克仁がフォルススタートの反則をした。プレーが始まる前に、前へ飛び出してしまう反則だ。防げる反則の代表格で、心に雑念が入ったときにやってしまうことが多い。近江は学生ナンバーワンのWRであり、プレーでも言葉でもチームを引っ張ってきた。こんな反則をする男ではなかった。だから安東も思ったそうだ。「近江さんの心が折れた瞬間を見てしまった」と。まったく立て直せないまま、立命は負けた。
それぞれの4年間
新チームができて主将になり、安東は決めた。今年は4回生全員でやる、と。あの近江の姿に、思った。「結局、近江さんは一人で引っ張ってた。関学にガンガンこられて、もうあかんとなった瞬間に、去年のチームは終わった」。だから4回生全員でチームを引っ張り、下級生もどんどん巻き込んでいくことにした。この1年、毎日のように4回生で集まり、話し合った。試合直後のフィールド上でも、ポジションごとの話が終わったあと、必ず4回生だけが集まって話をするようにした。関学ではよく見る光景だが、立命にはなかった。
いま、安東は言う。「去年は最後、気持ちの部分で一つになれなかった。今年は全員で痛みを乗り越え、しんどいことを乗り越えてきました。今年は違います」。この1年の取り組みを、関学にぶつける。
長くアメフトを取材してきて、この時期になると思い出す言葉がある。
2001年のシーズン、関学が3年連続の全勝優勝と甲子園ボウル出場を決めた試合のあとだった。関学の3回生QB尾崎陽介が言った。「甲子園では4回生の4人に1本ずつタッチダウンパスを通して、男にしてやりたい」。いつもはクールすぎるほどクールだった尾崎が言ったから、余計に印象に残っている。尾崎が言った4人は榊原一生、東畠功周、松山伸児、山本耕司という4回生のレシーバーたちだ。どこへ投げても捕ってくれる彼らに引っ張られ、尾崎は学生トップレベルのQBになれた。その感謝の思いがあふれたんだと思う。このシーズン、名門関学は初めてライスボウルを制し、日本一になった。
やはり、チームを支えるのは4回生なのだ。
最終節の4試合、関西1部の8チームはそれぞれの立場でラストゲームに臨む。ほとんどの4回生にとって、これが学生最後の試合だ。
いろんな4回生がいる。前出の関学のケースのように、下級生に「男にしたい」と言ってもらえる4回生がいる。人知れず裏方として走り回ってきた4回生がいる。けがでフィールドに立てない4回生がいる。アメフトに本気で打ち込めないまま来た4回生もいる。チームの方針によってメンバーから外れ、戻ってきた4回生だっている。
それぞれの立場で、やれる最善を。
やりきれ、4回生。