アメフト

関学の小野D「青の三銃士」を語る

2回生ながら堂々とオフェンスを率いる奥野(撮影・篠原大輔)

甲子園ボウル 西日本代表決定戦

12月2日@大阪・万博記念競技場
関西学院大(関西1位)vs立命館大(関西2位)

いよいよアメフトの甲子園ボウル出場校が決まる。大阪・万博記念競技場で14時5分にキックオフを迎える西日本代表決定戦は、関西王者の関西学院大と関西2位の立命館大の顔合わせ。関学は3人のQBを併用し、リーグ最終戦で立命に31-7で勝った。あすの対戦でも3人の起用法が見ものだ。長く関学のQBコーチを務め、現在はディレクターの小野宏さんに、「青の三銃士」について語ってもらった。

――前節の立命大戦を見られていかがでしたか

関学にとって、ものすごくいいゲームでした。先制したことでモメンタム(流れ)をつかみましたね。先手必勝という形で出だしリードの逃げ切りは勝つ可能性が高いです。RB山口祐介(4年、横浜栄)の先制タッチダウン(TD)は、最後のところは彼の個人技でしたが、デザインされたプレーが成功したのではないかと思います。ゲームプランと個人技と気持ちが組み合わさって勝てた。ただ、実力はほとんど変わらない。次の西日本代表決定戦でも勝てる保証はないです。

――関学は3人のQBを併用しました。長くQBのコーチも務めていた小野さんは併用策をどのように見られていますか

QBコーチを20年と少しやってました。当時は併用はうまくいかないと思ってました。「エース」という重く苦しい責任は一人で背負わないといけない。統合された形では機能が発揮されないというのが、これまでの関学の考え方でした。3人を使うことは異例中の異例です。今の3人は大きく異なるタイプということもあって、3人が責任を持ってやってます。「1」を「1/3」ずつに分けるのではなく、一人が「1」ずつちゃんとやってるんです。

奥野耕世(関西学院)ですが、2回生でエースを張るのは、1回生からスタメンを張った有馬(隼人)以来で、かなり例外的です。西野航輝(4年,箕面自由学園)はQB以外にRBやWRもできる。光藤航哉(4年、同志社国際)は3番手QBでキャプテンと、三者三様です。この前の立命戦で3人を併用して、最後に奥野からWR阿部拓朗(3年、池田)へのTDパスが決まったシリーズは、振り返ると大事なポイントでした。併用のうまみが詰まってました。タイプが異なると、ディフェンスはプレーをしぼりにくい。混乱します。そしてどうするかと言えば、汎用的な守備隊形になっていかざるを得ないんです。

リーグ戦の立命戦で走る西野(撮影・篠原大輔)

――光藤は関学では68年ぶりとなるQBの主将です。QBが主将を務めることはどのように考えていらっしゃいますか

攻撃の部分を大きく担っているので、QBは事実上の副将と言えます。関学は、QBには幹部職を負わせないという不文律がありました。とくにQBは出来、不出来がはっきりと見えてしまう。試合だけでなく練習から。だからQBがキャプテンをするのは、プレッシャーが大きくなる。ただでさえプレッシャーがかかるQBに心理的な圧力がかかってはゲームの行方に関わります。QBに不必要なプレッシャーをかけるのはよくないという考えを、関学は長く取ってきました。

その中で光藤が志願したのは大変なことです。立命戦まではほとんど試合に出られていない中、非常に苦しいポジションにいた。チームを引っ張るのが大変になります。アメフトは分業のスポーツなので、光藤がちょっとでもフィールドに入るのは大事です。何かのプレーを成功させると、チームがすごく盛り上がると思いますね。モメンタムや士気にも関わります。チームも3番手のQBがキャプテンをすることの難しさを理解してると思います。光藤が活躍することでチームが勢いに乗る。起爆剤になりえますね。

――3人のQBには、どんな特徴がありますか

光藤は高校の時からランのレベルが高かったです。何度も独走してきました。本能的に走るのがうまい。コース取りがいいのかなと思います。3年の春にはエースになって、短いパスのコントロールがよくなった。西野は素晴らしいアスリートですね。入学時から握力が80kgありました。関学史上、QBではダントツで1番ですね。ショットガンの隊形から、クイックにボールを投げれる強みがあります。そして奥野ですけど、正直、彼がここまでになるとは思いませんでした。小学校のチェスナットリーグ時代から有名で、私は高校から見ていましたが、体が小さいのでどうなるかなと思ってました。1回生のとき、仮想敵のチームに入ってすごいパフォーマンスをしてると、コーチたちから聞かされました。4回生がいる中で、2回生で何の実績もないQBを春からスターターで出させるのはよっぽどのことです。奥野が覚醒したのは春の関大戦です。そこからどんどん成長してますよね。

主将として関西制覇のトロフィーを受けた光藤(撮影・篠原大輔)

――関学のエースQBというのはどういったものですか

歴史を背負っているので、嫌でも歴史を感じます。甲子園ボウル出場51回、学生日本一28回。勝つことが前提だと思われてます。プレッシャーがかかり、がんじがらめになることもある。でも、突き詰めていくと最後の最後は結局、一人のフットボーラーでしかない。フットボールを自分のため、チームのために全力を尽くしてやれたらいいと思います。

――現役の選手たちへエールをお願いします

私が現役だったとき、部長に「負けてもともとやと思え」と言われました。勝つと、周りは次も勝つと思う。守るものができると人は弱くなる。でも相手は守るものがない。だから自分たちより強くなるんです。我々のチームが「負けてもともとや」と思い、負けを覚悟する。そしてリスクを負って、勝負をかける。チャレンジャーになることが大事だと思います。無心になって、ただひたすら目の前の1プレーに集中してほしいですね。

小野宏(おの・ひろむ)

1984年理学部(当時)卒。現役時は1回生でDB、2回生で主にQB、RBとして出場。3、4回生はQBとしてチームを率いた。卒業して朝日新聞社に記者として勤務した後、93年から関西学院に勤務。同年にコーチ就任。1996年からは攻撃コーディネーターとしてチームを指導した。2007年よりQB・WRコーチ、キッキングコーディネーターなどを歴任し、13年よりディレクタ―。現在、関西学院総合企画部に勤務。

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