ラクロス

注目!! 早稲田の強力フェイスオフ

ラクロスの試合は、このフェイスオフから始まる

全日本選手権 男子決勝

12月16日@京都・西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場
早稲田大-FALCONS

試合開始直前。フィールド中央でしゃがんで向かい合うふたりに観客の視線が集中する。彼らは審判のホイッスルとともにボールを激しく奪い合う。試合開始のフェイスオフ(FO)だ。

FOに勝つ=攻撃が始まる

たとえばサッカーやラグビーで「10時キックオフ」と言うように、ラクロスでは男子は「10時フェイスオフ」、女子は「10時ドロー」と言う。得点後と各クオーター(Q)開始時にもやる。フェイスオフに勝つことは、すなわち攻撃の機会が訪れるということ。もしまったく同じオフェンス力をもつチーム同士が対戦した場合、フェイスオフで60%以上勝てば勝利の可能性が高いともいわれる。フェイスオフの成否が試合を左右すると言っても過言ではない。

全日本選手権準決勝で目に止まったのは、早稲田のFO嶋田育巳人(いくみひと、4年、West Bloomfield High School)だった。嶋田はまず試合開始のフェイスオフで、社会人クラブチームStealersのFO田村統馬に勝つ。田村はアメリカのプロラクロスリーグMLL(Major League Lacrosse)のデンバー アウトローズに所属する日本トップのフェイスオファーだ。

1枚目の写真の場面。嶋田がボールをかきだし、そのまま早稲田の主将であるMF後藤功輝(4年、早稲田実)がポゼッション。AT尾花一輝(4年、早稲田実)が絶妙なパスを通してAT菊地智貴(4年、早大学院)が先制点を決めた。この開始1分の得点で早稲田は勢いづく。その後も嶋田のフェイスオフは冴え渡った。早稲田のようにオフェンス力あるチームにとってフェイスオフで勝つことは、そのまま得点のチャンスにつながることが多い。早稲田はオフェンスもディフェンスもチームスローガンの“攻”の姿勢を貫き、一度も追いつかれることなく14-8で勝った。

フェイスオフに勝ち、笑顔でベンチに戻る嶋田

FO嶋田と浜田が決勝のキーマン

早稲田は嶋田と浜田雄介(4年、穎明館)のふたりがFOの中心で、試合の状況やコンディションによってかわるがわる登場するが、日本トップのFOにも引けを取らないプレーぶりだった。彼らはフェイスオフで勝つと、ガッツポーズをしてベンチに駆け戻ってくる。その姿が勇ましく、目を引く。「僕と浜田くんで盛り上がるところは盛り上げようと話してます。楽しんだ方が絶対に勝つと思うので」というさわやかさもいい。

スポーツ科学部の嶋田は、フェイスオフにも持論がある。「反射神経も大事ですけど、それよりもどれだけ筋肉の無駄な動きをなくすかをよく考えてます。たとえば指先を反応させるのか、腕を反応をさせるのか。結構細かく身体や筋肉を分析しています」

フェイスオフは1対1の個の勝負だが、両ウィングにいる2人のMF含めた3対3の勝負でもある。FOが取りきれなくてもMFがボールをポゼッションすれば、そこから攻撃につながる。だから嶋田は3人の連携を意識して練習に取り組む。「個で戦おうとするフェイスオファーも多いと思うんですけど、横にいるふたりのMFがボールをキープしてくれたら、そのフェイスオフは自分たちの勝ちなんです。だから1対1で負けそうになっても3対3で勝てるように練習から意識してます」

早稲田RED BATS、日本一まであと一つだ

攻撃の始まりをつくる早稲田のFOは次の全日本選手権決勝でもカギを握るはずだ。12月16日、京都・西京極総合運動公園陸上競技場兼競技場。嶋田をふくめた4年生にとって最後の、そして一番勝ちたい試合だ。相手は全日本選手権10連覇中の社会人クラブチームFALCONS。早稲田は関東ファイナル4以降、より調子があがっている。早稲田の“攻”が、常勝軍団の11連覇を止めるか。さあ早稲田大学男子ラクロス部RED BATS、悲願の頂点まであとひとつだ。

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