バスケ

特集:第70回全日本大学バスケ選手権

青学・戸田晃輔は最後の2得点を忘れない

戸田はけがを押して最後の舞台・インカレに立った

全日本選手権最終日

12月16日@東京・駒沢オリンピック公園総合運動場
男子5位決定戦 青山学院大 75-59 早稲田大

関東リーグ戦、クレバーなプレーで青学を引っ張ってきた戸田晃輔(4年、湘南)に悲劇が起きた。ひざの前十字靭帯断裂。主力としての矜持からリハビリと筋トレに励み、早期の復帰を目指した。そして最後のインカレに、戸田が帰ってきた。決して万全とはいえない状況でプレーする姿に周りの選手たちも奮起し、初戦の松山大戦は126-50で大勝した。

裏方のみんなが励ましてくれた

けがをしてからの戸田は「4年間何やってたんだろう。最後でこれかよ」と心が折れかけていた。練習に参加すると、いわゆる「膝崩れ」を起こし、膝の脱臼にまで見舞われた。気持ちが沈む度に、スタッフやトレーナーたちが励ましてくれた。「ここであきらめちゃったら、それこそこの4年間、何やってたか分からなくなってしまう。応援してくれる人のためにも、最後まで努力を続けよう」。そう思い直し、もう一度立ち上がった。「インカレでもう一度チームの戦力になりたい」と、タイトルを目指すチームへの復帰を目指した。

インカレ1回戦で戸田がスリーポイントシュートを決めたとき、ベンチから真っ先に飛び出したのは主将の石井悠太(4年、豊浦)だった。「苦しい中でチームのために動いてくれた」と、戸田への感謝の気持ちを口にした。戸田も4年間ともに過ごした同期たちに対して「彼らがいなかったらこんなに頑張れなかったし、人としての成長もなかった」と話し、仲間の存在の大きさを改めて感じていた。

最後は4年生5人がコートに立った

早大との5位決定戦が4年生にとって最後の試合となった。戸田はインカレ中の練習でけがを悪化させ、コートに立てなかった。それでも「最後に4年生5人でコートに立ちたい」と願い、ベンチからひときわ大きな声を送り続けた。73-59と青学大が14点リードで迎えた残り25.2秒から、戸田がコートに立った。館内の大歓声が戸田を包んだ。ここで早大主将の濱田健太(4年、福岡第一)と、長谷川暢(4年、能代工業)が粋なことをした。もう自分たちの逆転は厳しい状況で戸田が入ってきた。それなら、と彼らは意図的にファウル。これで戸田は2本のフリースローを獲得。大盛り上がりのチームメイトに「入るかなあ」とおどけながらも、戸田は2本ともきっちり決める。これで大学バスケに別れを告げた。

「学生スポーツの本分は、人間力を高めて社会に出る準備すること」。戸田を青学にスカウトし、4年間見守ってきた廣瀬昌也ヘッドコーチは常々そう言ってきた。大学生活のすべてをかけて名門青学の看板を背負い、戦った日々は決して無駄にはならない。戸田の示した最後まであきらめない心はきっと、同じ瞬間を共有した後輩たちにも伝わっているはずだ。来年こそ日本一奪回。次の世代が、戸田の、4年生たちの思いを受け継ぐ。

in Additionあわせて読みたい