駒大4位、下史典は泣いた
前回の箱根で総合12位だった駒大は9年ぶりにシード落ちした。リベンジにかけた今回は予選会で圧勝し、総合4位で2年ぶりのシード権獲得。10区の下史典(しも・ふみのり、4年、伊賀白鳳)は仲間たちに笑顔で迎えられ、ゴールテープを切った。
鳴り物入りで入学
下は三重の強豪である伊賀白鳳高校出身。全国高校駅伝では2013年に6区、2014年はエースが集う「花の1区」と、2年連続で区間賞を獲得した。高校の先輩である中村匠吾(現・富士通)や西山雄介(現・トヨタ自動車)らの後を追い、同世代を代表するランナーとの評価で駒大に進学した。
だが、エースの座は遠かった。早くも1年生の全日本大学駅伝から勝負のかぎを握る前半区間を任されたが、華々しい結果は残せなかった。大八木弘明監督から「練習はチームで1番くらいにできてる」と言われながら、いい結果を出せない状況に苦しんだ。下自身、高校時代と大学での自分の実績を比べがちだった。
前回の箱根は2年連続で3区を任され、11位で襷(たすき)を受けとった。前半に抑えたペースの遅れが後半に響き、区間9位。順位を1つ上げ、前々回のタイムを上回る走りではあったが、箱根初出場で2区を走った山下一貴(3年、瓊浦)の遅れを取り返す期待を受けていただけに、満足のいく内容ではなかった。チームのシード落ちで、無念はさらに強まった。
最終学年になると「記録を出したい」「ほかの大学の人に勝ちたい」という気持ちが一段と大きくなった。とくに大八木監督に対する感謝の思いが強くなったという。「自分は高2の終わりごろから徐々に結果が出てきたんですけど、監督は高1の終わりから声をかけてくれてました。結果が出てない中でも声をかけ続けてくれて、強い大学に誘ってくれました。一番恩返ししたい人です」。下にとって今回の箱根は、最後の恩返しのチャンスだった。
できなかった恩返し
下は10区を任された。往路終了時点で先頭の東洋大とは3分28秒差の4位。駒大は復路の後半3区間に下を含め4年生を3人起用。三強崩しに挑んだ。6区の山下りでは國學院大をかわして3位に浮上。7区で青山学院大に抜かれ、再び4位。徐々に前との差は開き、9区の終盤には3位と2分30秒以上の差がついていた。「最低でもこの順位だけは守ってゴールしたい」。下はそう考え、高校時代からのルーティンであるコースへのお辞儀をして、ライン上に立った。9人がつないできた襷を主将の堀合大輔(4年、青森山田)から受け取り、ゴールに向かって走り始めた。
アンカーだと、同じ駅伝でも全然違う感じがした。大手町のゴールが近づくと、自分の名を呼ぶ仲間の姿が目に飛び込んできた。区間11位の走りで、総合4位でゴールした。「4年間迷惑をかけ続けたのに、監督は最後に自分を信頼して使ってくれました。それでも、いま一つ恩返しができませんでした」レース後の下は悔し涙を流した。
卒業後は高校、大学の先輩の中村がいる富士通に入社する。下は「中村匠吾さんに勝てる選手になりたい」と話し、将来的にはマラソンに挑戦する意向だ。4年間の悔しい思いは実業団でぶつける。大八木監督への恩返しは、まだできる。そう信じて、走る。