鉄紺の真価、発揮し続けられなかった東洋大
「鉄紺の真価でくつがえせ」。これは今シーズン、東洋大が掲げたチームスローガンだ。スローガン通りの成果と届きかけた頂を逃した悔しさ。選手たちは箱根で、その二つを強く心に刻んだ。
山本のリベンジ
1区は昨年1年生ながらここで区間賞をとった西山和弥(2年、東農大二)。今シーズンは不調だったが、箱根にかける思いをぶつけ、2年連続の区間賞を手にした。
2区山本修二(4年、遊学館)は2年生のときも2区を任され、当時もトップで襷(たすき)を受けた。しかし各校のエースに対抗できず、区間11位のタイムで8位まで落ちた。今回の最後の箱根は、東洋大のエースとして“忘れ物”を取りにいった。
中大の堀尾謙介(4年、須磨学園)と先頭で並走を続け、13km地点の難所である権太坂で突き放し、単独トップに立った。中継所目前で驚異の巻き返しを見せた国士舘大のライモイ・ヴィンセント(1年、モチョンゴイ)に抜かれたが、日本人2位の区間4位。魂の走りで最後の箱根を終えた。
3区の吉川洋次(2年、那須拓陽)は、区間新記録ペースで追い上げてきた青山学院大の森田歩希(4年、竜ヶ崎一)に抜かれはしたが、森田の背中が見える位置で4区の相澤晃(3年、学法石川)につないだ。
相澤は箱根5連覇を狙う青学・森田の快走に刺激を受けていた。「自分も区間新を出して、相手を驚かせたい」と、一気に青学の岩見秀哉(2年、須磨学園)を抜き去った。結果は1時間0分54秒の大記録。故障明けとは思えない圧巻の走りを披露した。4区(20.9km)は2006年大会から16年大会まで、第4中継所を東寄りに移し、18.5kmの距離で争われた。17年大会から以前と同じ中継所に戻したが、05年大会以前のタイムは参考記録になっている。今回、相澤は藤田敦史氏(現・駒大コーチ)が1999年に記録した05年までの区間最高である1時間0分56秒をも上回った。相澤の快挙により、東洋大は往路を新記録で制し、復路に臨んだ。
4年生の悔し涙
2年連続で6区の山下りを任された今西駿介(3年、小林)は自己記録を1分以上更新し、7区の小笹椋(4年、埼玉栄)へ。小笹は膝に痛みを抱えながらも、区間3位の力走で主将の意地を見せた。しかし東海大の阪口竜平(3年、洛南)に差を詰められ、わずか4秒差で8区の鈴木宗孝(1年、氷取沢)につないだ。鈴木はすぐに追いついてきた東海大の小松陽平(3年、東海大四)と並走。終盤で離され、2位に後退した。9区の中村拳梧(4年、八戸学院光星)と10区の大澤駿(2年、山形中央)が苦しみ、青学にも抜かれて3位でフィニッシュした。
往路優勝、復路5位で総合3位。満足している選手は誰一人としていない。悔し涙を流した4年生の姿を、後輩たちは目に焼き付けた。「力自体はすごくあるので、来年は勝てる」と小笹。山本も「来年は優勝してくれると思うので、安心して卒業できる」と、後輩たちに夢を託した。
東洋大は今大会で、11年連続して総合3位以内。「東洋大らしい攻めの走りや、あきらめない姿勢というのは、今回も現れる場面はあった」と酒井俊幸監督は評価している。3位以内を12年連続に伸ばし、そこに「優勝」の2文字が加わるよう、また新たな一歩を踏み出す。