東洋大・山本修二 父に贈るぞ区間賞
東洋大は今シーズン、学生三大駅伝(出雲、全日本、箱根)の3冠を目標に掲げたが、出雲は2位で全日本は3位。青山学院大に3冠への王手をかけられている。最後の一戦を前にして、「王者奪還、優勝、金メダル」の思いを込めたゴールドカラーのウエアを新調した。「箱根だけは譲れない」。酒井俊幸監督は12月13日、東洋大学白山キャンパスで開催された壮行会で、力強く語った。
区間賞の走りで流れを変える
12月10日にエントリーメンバーは16人に絞られた。そこからさらに10人へ。チーム内の競争が熾烈になる中で、酒井監督は箱根のキーマンとして主将の小笹椋(4年、埼玉栄)、副将の山本修二(同、遊学館)、相澤晃(3年、学法石川)、今西駿介(同、小林)、西山和弥(2年、東農大二)、吉川洋次(同、那須拓陽)の名前を挙げた。「ここで悔いのある走りをすると一生後悔すると思うので、最後は笑って終わりたい」。このレースが学生最後となるエース山本は、静かに心を燃やしている。
山本は前回、3区区間賞の走りで4年ぶりの往路優勝に貢献した。しかしその後、右足中足骨の疲労骨折と腰痛で戦線離脱。本格的に練習を再開できたのは7月になってからだった。それでも山本は「自分の身体と向き合う、いい半年だった」と前向きにとらえている。
出雲と全日本ではともに区間3位。全日本では前半の遅れを挽回して3位に浮上し、チームに流れをもたらす走りだったが、山本は満足していない。「エースと言われながら区間賞をとれてないので、区間賞の走りで流れを変えたい」。山本が目指す“流れを変える走り”は、頂に立ってこそなのだろう。走り込み不足で臨んだ出雲や全日本と違い、いまは走り込みがしっかりできているという自信もある。
そんな山本は仲のいい選手として小笹の名を挙げた。タイムは1秒も変わらない状況で入部し、同じような練習を重ね、同じような大会に出てきた。「常にそばにいて、いつもお互い意識し合って練習をしてきました。春からはお互い別々のチームで走るので、一緒に走れるのは箱根が最後です。小笹は仲のいい友だちで、よきライバルですね」。入学時の1秒弱の差について、どっちが速かったのかと聞くと、「僕です」と山本が笑った。
山本家が迎える運命の日
山本は7つ上の兄、憲二(マツダ)が活躍する姿に魅せられ、陸上を始めた。兄が4年のときの2012年、東洋大は総合優勝を果たしている。区間賞をとった前回の箱根では、兄から「おめでとう」と言葉をかけてもらった。しかし今シーズン、まだ兄からの祝いの言葉はない。出雲と全日本で満足いくレースができていないことを、兄も感じとっているようだ。「兄に『さすがだな』と言わせるような走りをしたいです」と山本は言う。
山本にとって最後の箱根は特別なものになる。父が応援に駆けつけてくれるのだ。とくに驚くことでもないような気がしたが、山本家では「まさかあの父親が」と言われているそうで、山本も「ビッグニュース」と表現した。母はよく応援に来てくれるそうだが、父は仕事が忙しく、テレビの方が観戦しやすいという理由で現地に来ることはなかった。「中学のときに1度、見に来たぐらい」と山本は言う。父は「最後の年だから」と重い腰を上げた。「自分も気を引き締めないと」と、山本ははにかむ。大手門のゴールで、久しぶりに家族6人がそろいそうだ。