“乃木オタハンドラー”開花の1年 明大・渡辺翔太
大学バスケ界にニュースターが現れた。明大2年の渡辺翔太(宇都宮工)。1年生のときこそ無名だったが、チームの主将として臨んだ昨年6月の関東大学新人戦で、拓殖大に大敗したのがターニングポイントに。大会後、外部コーチのワークアウトに通い始めてから才能を開花させ、今年1月にはストリートと大学バスケの夢の対決・TSC(Tokyo Streetball Classic)に大学選抜の一員として出場。身長168cmの小さな体でビッグマンたちを翻弄(ほんろう)し、オーディエンスの視線を釘付けにした。
昨年の前半は不完全燃焼
渡辺はバスケ選手としては小柄だが、リングに手が届くほどの跳躍力と相手を置き去りにするスピードを併せ持つ。2017年度の大学No.1ガードとして名を轟かせた齋藤拓実(桐光学園)の穴を埋める存在として期待されていた。しかし、昨年5月の関東大学選手権では、高校時代にほとんど経験のなかったシックスマンで起用されてミスを連発。不完全燃焼に終わった。
大会終了後、渡辺は6月に控える関東大学新人戦の主将を任された。練習に励んではいたが、技術的な指導は受けられないまま。「何が正解か分からず、ずっと悩んでます」と苦笑いで話していた。その不安は的中し、3回戦で拓大に35点差をつけられて敗戦。「同じ1部校として悔しいです」。渡辺の昨シーズン前半戦は、自らの実力不足を痛感させられるものとなった。
武者修行で受けた刺激
まさかの大敗から1カ月。危機感を覚えた渡辺は7月から大学での練習に加え、スキルコーチとして幅広く活動しているマーク氏主催のワークアウトに参加。ストリートボール界の第一線で活躍するKOSUKE(現BLACKTOP)らハイレベルな選手が集う環境での練習に刺激を受けた。いつしかボールを持ち歩くことが習慣となり、授業の空き時間、さらには乃木坂46齋藤飛鳥の握手会後にもハンドリング練習を重ねた。
こうして力をつけ、昨年9月に開幕した関東大学1部リーグ戦では主力としてプレータイムを伸ばした。10月22日の白鴎大戦では残り40秒で逆転シュートを決め、白星に大きく貢献。劇的な成長ぶりに「もっと早く(ワークアウトに)通っていればよかったですね」と、渡辺は饒舌だった。
スーパープレーを決めた後に披露する乃木坂46のマネキンポーズの影響もあり、渡辺の知名度は上昇。“乃木オタハンドラー”としても知れ渡った。ついには、大学バスケ界のスター選手ばかりが選抜されるTSCへ出場。巧みなハンドリングで会場を沸かせ、試合後にYouTubeへアップされたプレイバック動画では「小さくてもやれることを証明してくれた」と、印象に残った選手No.1として紹介された。
紆余曲折をへて、2018年は飛躍の年になった。入学当初に「15枚目のシングルでセンターを務めた(乃木坂46の)飛鳥さんの活躍にあやかりたい」と選んだ背番号15。その思いが、かない始めている。