東洋大新主将・佐藤 V奪還へ「一燈」となれ
昨秋の東都大学野球1部リーグ最終戦。亜大に敗戦後、東洋大の佐藤都志也(3年、聖光学院)は、主将の中川圭太(4年、PL学園)から「今度はお前がチームを引っ張るんだぞ。俺らができなかった日本一を託した」と言葉をかけられた。期待を一身に受けた佐藤はその後、4年生と杉本泰彦監督の推薦により、新チームの主将に指名された。
大学侍にも選出
佐藤は昨春のリーグ戦から正捕手になった。梅津晃大(4年、仙台育英)、甲斐野央(同、東洋大姫路)、上茶谷大河(同、京都学園)らの剛腕が揃った投手陣を1年間リードしてきた。2年生のときには打力を買われて一塁手も経験。一塁を守りながら捕手のリードを見て学んだ経験を「あの一年は無駄じゃなかったです」と振り返る。
バッティングでは、昨春のリーグ戦で最多タイとなる19安打。打率.358、4本塁打、11打点の成績を残してチームの3連覇に貢献した。夏には侍ジャパン大学代表に初選出され、日の丸を背負ってプレーするまでになった。
4連覇のかかった秋。「これだけのピッチャーがいるのに負けたら、それはキャッチャーである自分のせいだと思います」と、責任感を抱えながら練習を重ね、ピッチャーとのコミュニケーションも大切にしてきた。しかし、東洋大は自力優勝の可能性を最後まで残しながらも、最終戦を落として3位で終わった。
佐藤は昨秋の最終戦後に「甲斐野さんを最後に負け投手にしたくなかったし、秋に上茶谷さんに2敗をつけてしまったのは自分の実力不足です。申し訳ない気持ちしかありません」と、声を震わせた。それでも4年生から「今度はお前が引っ張っていくんだぞ」との言葉を受け、「勝たなければいけない試合を絶対落とさない、粘り強いチームを目指したいです」と、前を見すえた。
新たにミットに刻んだ言葉
昨年、佐藤のキャッチャーミットには「花よりも花を咲かせる土になれ」との言葉が刺繍されていた。だが学生ラストイヤーに向けてミットを新調。新たに刻まれた文字は「一燈照隅(いっとうしょうぐう)」。これは高校時代の恩師から教わった言葉で、聖光学院高校野球部のモットーである「不動心」と並ぶ、もう一つの部訓だ。
自分の置かれた場所で、自分にできる精一杯のことをする。そうすれば必ず、それに続く者が現れて、一つの燈(とう)もいつしか万の燈となり国中を照らす。日本の天台宗の開祖として知られる最澄(さいちょう)が説いた言葉には、そんな意味がある。
「前のミットに入れた言葉には、ピッチャーという花を咲かせる土台になろうという意味がこもってました。でも今年はキャプテンでもあるので、土台になるだけではなく、自分が光になって、それで周りも光ってくれたらなと」
新チームのスローガンは「奪還」。連覇は途絶えたが、再びリーグ優勝を果たすこと、そして2011年の全日本選手権以来達成できていない日本一を取り戻すという、二つの決意がこめられている。
新シーズンの目標について佐藤は「ここぞというときに打てるのがキャプテンだと、中川さんを見て思いました。自分もそうでありたいです」と話す。今年は春秋とも打率4割、3本塁打、15打点と三冠王も目指していく。自らがチームを導く燈になれるように、扇の要からチームを照らしたい。そんな思いを胸に背番号1をつける佐藤が、新チームの一燈(いっとう)となる。