陸上・駅伝

攻めた佐藤悠基、東海大の後輩にもらった刺激

佐藤は「攻めのレース」をテーマに東京マラソンへ臨んだ(撮影・西川暖乃)

東京マラソン2019 マラソン男子

3月3日@東京都庁~東京駅前・行幸通り
16位 佐藤悠基(日清食品グループ) 2時間15分7秒

佐藤悠基(日清食品グループ)は昨年の東京マラソンで、2020年東京オリンピックの代表選考会となるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC、9月15日)への出場権をつかんだ。今年の東京マラソンはMGCを見すえて「攻めのレース」に徹した。レース序盤、先頭集団の前方で勝負した。結果は2時間15分7秒で16位。レース後、佐藤は「結果は結果としてしっかり受け止めないといけないと思ってますけど、自分がやりたかったことは7割方達成できたと思いますし、それなりに手応えをつかめました」と話した。

チャレンジできる権利がある

佐藤はいままでのマラソン経験から、スピードを維持する「スピード持久力」の弱さが自分の課題だと考えていた。1km3分を切るペースで入ると「ちょっと速いな」と感じ、引いてしまっていたという。スピード練習を意識したトレーニングを重ねてきたが、MGCが9月に迫る中、「練習でいくらできても、実際のレースで実践しないと自信にならない」という思いがわいてきたという。MGCの出場権をすでに持っている自分にはチャレンジする権利があるのに、それを使わないのはもったいない。「どんな展開になっても、いけるところまでいく」と決め、スタートラインに立った。

最初の5kmは14分38秒で入った(左から2人目が佐藤)

冷たい雨が降りしきる悪条件下でのレースにも関わらず、先頭集団は1km2分55秒のペースを刻んだ。佐藤が思っていたよりも速いペースだったが、「中途半端に攻めるのは一番よくない。世界で勝負しようと思ったら、このペースに順応していかないといけない」と、攻める気持ちを強く保ち、先頭集団に食らいついた。

21.5km付近で同じ国内招待選手の大迫傑(ナイキ)と中村匠吾(富士通)が先に脱落。日本選手で佐藤だけが先頭集団に残った。しかし、まもなく佐藤も遅れた。25km以降は単独走になり、35-40kmは19分22秒、ラスト2.195kmは9分50秒と失速してのゴールとなった。「一戦一戦が勝負のレースで結果がでなかったのは反省すべきですけど、MGCに向けて自分がやりたいことは着実にできてきてるのも実感してます。今日はもう終わってしまったので、しっかり反省して気持ちを切り替えたいです」。レース後、佐藤はそう口にして前を向いた。

世界基準で走れる距離を伸ばしていく

いちばんの収穫は、いままでだと引いてしまっていた速いペースにも「いける範囲かな」と思えたことだ。「強い気持ちが表れたと思うので、そこは評価できると思います」と佐藤。課題は残り17kmの走り方だ。「ここまで積んできたトレーニングではまだ足りないということだと思います。もうワンランクアップさせたものをしっかりこなして、一歩ずつ着実に前進できればいいかな」

世界基準のスピードでどれだけ長く走れるか。今回は25kmまでだったのを次は30kmまで、その次は35kmまでと勝負できる距離を伸ばしていく。「少しずつ伸ばしていけば、最終的には42kmまでたどり着くんじゃないかと思ってるんで、そのあたりは自分の体と相談して、しっかりとコントロールしてやっていければいいです」。意を決したチャレンジが、佐藤の自信につながった。

東海大を出て10年、佐藤(左)はずっと期待され続けてきた(撮影・大島佑介)

東京マラソンに心残りもあった。「後輩たちに、先輩としてゴールにトップで帰ってくるような姿を見せられたら最高だったんですけど……」。 母校の東海大学は今年、初めて箱根駅伝で総合優勝を果たした。佐藤が東海大を卒業してもう10年になるが、東海大には面識のある選手がたくさんいる。「(佐久長聖高校時代の)恩師の両角先生が教える母校で、自分も知ってる選手たちが自分たちができなかったことをしてくれて、すごく大きな励みになりました」。MGCこそは、後輩たちに大きな刺激を与えられる結果にしたいところだ。

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