筑波大・上田雪菜、届かなかった「3秒」の向こうに
3位の田川友貴(松山大1年、盛岡誠桜)がガッツポーズでフィニッシュしたわずか3秒後、上田雪菜(筑波大3年、奈良育英)は苦しそうな表情のままゴールした。3位までに入れば7月にイタリア・ナポリで開かれるユニバーシアードの代表に内定したが、目の前で逃した。「悔しいのひとことにつきる、ってところで。でも、なんか全力で悔しいって言いきれない部分もあって……」。上田は言葉を詰まらせた。
先頭に立ちながら、増幅した不安
序盤、レースはスローペースで展開していった。今大会が初めてのハーフマラソンだった上田は焦った。「最後までスローで持ち込まれると、ラスト勝負になったときに太刀打ちできない。半分をすぎたところで、しっかり押していきたいと思いました」。1㎞3分20秒ペースで押すプランを立てていた上田は、10km手前で先頭集団を飛び出した二人に続いた。だが、一人はすぐにレースをやめ、もう一人には後ろに入られ、風よけにされた。「割り切って自分で引っ張っていこう、自分で振り落としてやろうって強気でいきました」。上田は前に出た。
向かい風だったこともあり、思ったようにスピードは上がらない。上田はこのとき、1km3分24秒のペースだったのを覚えている。後続は振り落とせなかった。「後半はすごく、自分でも怖さ、不安がある中でレースを続けてました。いま自分が先頭に出てるってことは、周りの人にとって有利で、自分の勝算はどんどん低くなってるな、って」
上田の不安は的中した。その通りになった。なってしまった。
先頭集団の人数はどんどん絞られていき、残り2㎞の時点で4人になった。20km地点で前に出た3人についていける体力は、上田には残っていなかった。「あの時点で脚もあんまり残ってなくて、あとは気持ちの勝負だって思ったんですけど、そこはもう自分の実力不足です。負けは負けです」。上田の目から涙がこぼれた。
いい感じできていた「陸上人生設計」
上田は今大会を自分の「陸上人生設計」の中で重要なステージと位置づけていた。「将来的にマラソンで勝負していきたいので、3年生から4年生になる直前でハーフっていうのは、タイミングとして悪くないなって。3年生の1年間が、自分にとってはすごい大きく成長できた1年間で、学生ラストチャンスのユニバの選考で、これは取りにいくしかないと思ってました」
昨秋のインカレで、上田の陸上人生設計はグッと前へ進んだ。
5000mで2位、10000mで3位という好結果が、上田をマラソンといういばらの道へ向かわせた。そして、このハーフマラソンに照準を合わせて練習してきた。3週間前、調整の一環で出場した日本選手権クロスカントリー・シニア女子8kmで6位に入り、世界クロカン(3月30日、デンマーク)の代表を勝ちとった。「比較的余裕をもって(1km)3分20秒でずっと押せていたので、このレベルが自分にとって楽とまではいかないけど、しっかりそのペースで押せるぐらいの実力はついたなって、ハーフに向けての手ごたえはありました」
そして本番。ユニバーシアードの代表に、あと一歩届かなかった。
「狙ったところでちゃんととれないっていう、こう、自分の弱さというか……。まだ整理はついてないんですけど、3番に入れなかったっていう事実は事実なので、次の試合ではしっかり、自分が自分に求めてる結果を出したいです。世界クロカンで日本人トップっていうのは譲らずにいこうと思います」。涙のあと、上田の言葉には力がこもっていた。
陸上人生設計は、また書き直せばいい。
どんなときも結果をしっかり受け止とめ、進む先に未来はある。