伊那駅伝・男子 世羅V決めた増木祐斗は副寮長
男子第42回春の高校伊那駅伝2019
3月24日@長野・伊那市陸上競技場を発着点とする6区間42.195km
1位 世羅(倉本玄太、細迫海気、吉本真啓、新谷紘ノ介、ジョン・ムワニキ、増木祐斗) 2時間10分58秒
春の高校駅伝日本一を決める伊那駅伝が3月24日、長野県伊那市であった。第42回を迎え、109チームが参加した男子のレースは6区間42.195kmで争われ、世羅(広島)が2時間10分58秒で4年ぶり3度目の優勝を飾った。2位には12秒遅れで仙台育英(宮城)が、3位には学法石川(福島)がそれぞれ入った。
最後の上りで勝負あり
先にレースのあった女子で仙台育英が優勝。男女同時優勝へ向け、仙台育英は4区でトップに立った。世羅の5区(5.1km)を走るジョン・ムワニキ(1年)は40秒遅れの3位でたすきを受ける。ムワニキの猛追が始まった。トップには立てなかったが、仙台育英に1秒差でアンカーの増木祐斗(2年)へ託せた。仙台育英のアンカーはメガネランナーの中澤優希(1年)だ。最終6区(5.295km)の行方に、一気に注目が高まった。
後ろについていた世羅の増木が2km付近で前に出た。「スパートしたつもりじゃなかったんですけど、上りで相手のペースが落ちて、勝手に前に出た感じでした。『キツいのかな? 』と思いました」と増木。まだ焦らない。再び並走。1kmほど続いた上りがいちど平坦(へいたん)になり、最後の上りに入った3.7km付近で、増木は勝負に出た。「あそこで前に出て、下りで突き放そうと思いました」。まさにその通りの展開になり、逆転優勝のゴールまで駆け抜けた。
優勝で恩返し
増木はまだ全国高校駅伝で都大路を走ったことはない。駅伝のアンカーも初めてで、「最後まで勝ったって確信はなかったです。後ろを見る余裕もなかった。絶対に優勝しようと思って、それだけ考えてました」。興奮冷めやらぬ早口で振り返った。5区のムワニキが逆転して、差をつけてくれると思ってたんじゃないですか? と尋ねると「はい、できれば……」。正直に言って大笑いした。
世羅のメンバーにとっては特別なレースだった。男女含めて世羅を6度の全国高校駅伝優勝に導いた岩本真弥監督(53)が、4月から実業団チーム「ダイソー」の初代監督になる。「最後なので、絶対に勝ちたいというのがありました」と増木。レース前には監督から「好きに走れ」と言われたという。「その言葉を、いいようにとらえました。自分がどうにかしてくれると思ってくれてる、って。そう思ったら力が出ました」。恩師を優勝で送り出す直接的な役目を果たし、増木が満面の笑みで言った。
新チームになって、増木には役職ができた。副寮長だ。「去年はここからのトラックシーズンでいい結果を残せなかったので、それを残しつつ、生活面でみんなが緩まないように、副寮長として自分が締めていきたいです」。副寮長の自覚は十分だ。
「伊那駅伝で優勝できたので、これを弾みに全国でも勝ちたいです」。まだ自分が走ったことのない都大路に思いをはせ、増木が真顔で宣言した。