陸上・駅伝

埼玉栄のエース白鳥哲汰、目指すは世界だ!!

埼玉栄の白鳥(左)は伊那駅伝の1区で圧倒的な強さを見せつけた(撮影・大島佑介)

男子第42回春の高校伊那駅伝2019

3月24日@長野・伊那市陸上競技場を発着点とする6区間42.195km
5位 埼玉栄(白鳥哲汰、佐藤快成、上吉川颯馬、三角隼人、石口大地、西田大智) 2時間12分19秒
1区(6.6km)1位 白鳥哲汰(2年) 18分54秒 (区間新)

春の高校日本一をきめる伊那駅伝が3月24日、長野県伊那市で開かれた。109チームが参加した男子のレースで、序盤の注目をさらったのは埼玉栄の新主将、白鳥哲汰(2年)だった。1区は伊那市陸上競技場のトラックを2周したのちロードに出て、伊那市駅前までの道のり。ここで白鳥はダントツの強さをみせた。

1区で区間新記録を更新

「トラックを2周する間は引いてしまい、まわりに引っ張られてしまいました。反省です」と苦笑いした白鳥だが、競技場から出たあとは圧勝だった。集団からポーンと飛び出し、引き離していく。18分54秒のトップで2区の佐藤快成(1年)にたすきをつないだ。従来の区間記録を7秒上回った。

伊那駅伝のスタート直後から先頭に立った白鳥(中央)

スタート前はさほど区間記録は意識していなかったという。「残り2kmあたりから沿道の応援の方に『区間新いけるぞ』と声をかけていただいて、そこから意識し始めました」。それよりも「いままでしっかり引っ張って勝ち切れたレースがなかったので、それができたのがよかったです」と、タイムうんぬんでなくレースを引っ張り抜いたことを喜んだ。白鳥の言葉の端々からは、しっかりとした信念のようなものが伝わってくる。そして、走り終わった直後には、コースに向かって一礼した。「今日はとくに沿道で応援してくださる方々の声が、自分の力になりました。まわりの方に支えられて結果を出せてるので、お辞儀は自然に出ました」。埼玉栄のエースは好青年だ。

高校入学後に止まった躍進

昨年までは思うように結果が出ず、あがいていた。
白鳥は小学校では野球をやっていたが、まわりからの薦めもあり、春日部市立豊野中学校で陸上部に入った。中3のときの全日本中学校陸上競技選手権男子3000mでは3位に入り、都道府県対抗男子駅伝では埼玉チームの一員として走った。ランナーとして着実に成長していた。

そして駅伝強豪校の埼玉栄に進学したが、鳴かず飛ばず。「高校1年から2年は失敗のレースばかりでした」と話すように、苦悩の日々をすごした。強い白鳥が戻ってきたのは昨年末の全国高校駅伝だった。1区で区間賞の走りをみせ、埼玉栄の6位入賞に貢献した。「去年の冬は競技的にも、生活面を含めた人間的にもいちばん成長できたと思ってます」

区間賞の表彰状やトロフィーを手に笑う白鳥

今年に入り、白鳥の勢いは増していく。2月23日に福岡で開催されたU20クロカン日本選手権8kmで4位になり、世界クロカンへの切符を手に入れた。「日本代表を視野に入れて大会に臨んだので、よかったです」。そして伊那駅伝の快走だ。

埼玉栄の偉大な先輩たち

埼玉栄には大学の陸上界で大活躍する選手が何人もいる。昨年の日本選手権男子1500mを制した館澤亨次(東海大3年)や、先日の日本学生ハーフマラソン2位でユニバーシアード代表に内定した中村大聖(駒大3年)などなど。「偉大な先輩がたくさんいるので、自分もあとを追わなければと考えますし、いろんなところで記録を残していく先輩を見て、自分たちも頑張れてるのかなと感じてます」。トラックでも駅伝でも好結果を残す先輩たち。白鳥にとって、館澤と中村はとくにあこがれの存在だ。「館澤先輩には東海大の記録会に行ったときに練習面で的確なアドバイスをいただいたり、大聖先輩と会ったときも具体的な話をいろいろとうかがいました」

白鳥は東海大の館澤や駒大の中村ら、高校の偉大な先輩たちから刺激を受けている

白鳥には夢がある。「大学ではもちろん駅伝で活躍したいと思ってますが、自分の最終的な目標はマラソンで活躍することです。マラソンで世界に目を向けて頑張っていけたらなと思います」。4月からは高校最後の1年が始まる。「去年の先輩たちは本当に強くて。自分たちは去年の先輩を超えたいというところでも、主将としてチームをしっかり引っ張って、勝ちにつないげていきたいです。個人としては世代トップを狙って、しっかり存在をアピールできたらなと思います」

次の戦いは3月30日にデンマークで開催される世界クロスカントリー選手権。世界へ挑戦する若きサムライに期待したい。

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