陸上・駅伝

MGCの出場選手発表、神野大地「最後の坂で逆転サヨナラ満塁ホームランを」

MGCの前に選手発表記者会見で登壇した(左から)NHKのMGC解説の野口みずきさん、神野大地、瀬古利彦リーダー、TBSのMGCスペシャルキャスターの高橋尚子さん(会見の写真はいずれも撮影・松永早弥香)

9月15日に開催される東京オリンピックのマラソン代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場選手発表会見が6月3日、東京都内で開かれた。男子31人、女子12人が映像とともに紹介された。4月までに出場権を獲得した選手のうち、秋の世界選手権のマラソン出場を優先した川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)ら男女各3人が辞退した。

 MGC後に「TEAM JAPAN」合宿

日本陸連強化委員会のマラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦氏が会見の冒頭であいさつ。「いよいよMGCが始まるなという実感がわいてきました。なんか、ドキドキ、ワクワク。いまも手に汗をかいています!!」と笑わせた。どのようなレース展開が予想されるか問われると「いろんなタイプの選手がいますので、こればっかりは分からない。とにかく言えるのは、誰が勝つのか分からないということです!!」と力強く返した。

MGCの男女それぞれ上位2人が東京オリンピックのマラソン代表に内定する。さらにMGCファイナルチャレンジ(男女それぞれ3レース)で「MGC派遣設定記録」(男子2時間530秒、女子2時間2100)を上回る最も速いタイムを出した1人が内定。いなければ、MGCの3位選手が内定となる。現実問題として、MGCで3位に入れば、代表に大きく近づける。

この日の会見の中で、日本陸連強化委員会で長距離・マラソンディレクターを務める河野匡氏がMGC後の予定について説明した。MGCで内定した男女各2人は925日~101日まで、北海道・千歳のオリンピック最終調整合宿地でキックオフ合宿に参加する。日々の練習はこれまで通り選手の所属チーム任せとなるが、男女の代表選手やコーチに瀬古リーダーや強化委員会、科学委員会のメンバーらも含め、「TEAM JAPAN」として、定期的にプランの確認や情報共有の場を設け、東京オリンピック本番へ備えていく。

「ただ一つ言えるのは、誰が勝つか分からないってこと」と瀬古リーダー

 神野「一発逆転サヨナラ満塁ホームラン」

会見にはMGCに出る神野大地(青山学院大~セルソース)も登場。神野は昨年5月にプロランナーに転向。ケニアやエチオピアで合宿して鍛え、昨年と今年の東京マラソンの結果(昨年は2時間1018秒で日本人12位、今年は2時間115秒で日本人4)でMGC出場権を得た。

MGC出場を決めたときの心境を問われた神野は「なかなか自分自身の思うような結果が出ずに、(青山学院大時代に箱根駅伝で活躍した際の)『山の神』としてのプレッシャーに負けてきたところがあったんですけど、ギリギリでしたけど東京マラソンでMGC出場権を獲得できて、素直にホッとしました」と語った。そして続けた。「ですけど『東京オリンピックでメダル』をずっと目標にしてきましたので、このMGCで代表を決めたいと思ってます」

神野は今年の東京マラソンで念願のMGC出場権を手にした(撮影・藤井みさ)

神野は2週間前にMGCのコースを試走した。信号を守りながら、1km4分ペースで走り、2時間48分で完走した。「想像以上にタフなコース」と感じたそうだ。とくに最後の5kmは坂が続く。しかし神野はここが自分にとってはチャンスになると見ている。

「最後まで足が元気な状態で走りきれる選手はなかなかいないと思うので、レースまでにどれだけ脚をつくってきたか、最後まであきらめないレースができるか、というのが鍵になるのかなと思います。最後の5kmの上り坂で、一発逆転サヨナラ満塁ホームランが打ちたいです。35km地点で10番目だったとしても、自分には大いにチャンスがあるなというぐらい、最後の坂は自信を持ってます。試走の時にイメージトレーニングをしてました。最後の5km地点で横に(リポート)バイクが来て『この1kmを一番速いペースで走っているのは神野です』と言ってるような感じを。そうやって最後に逆転できたらと思ってます」

MGCまで約3カ月。神野は来週からは1週間程度、長野県で高地トレーニング(標高1800m)を、さらに7月末からケニア(2300m)で合宿に入る。暑さへの順応期間を含めて、MGC10日前に帰国し、最終調整に入る。神野がMGCを決めた今年の東京マラソンのときも、10日前にケニアから帰国し、最終調整に取り組んだ。

「日々の練習の成果がMGCに出ると思います」と神野

瀬古リーダー「MGCで燃え尽きてしまっては困る」

MGCは915日、男子が850分、女子は910分にスタート。この時期にMGCを開催するのは東京オリンピックを見すえてのものだ。東京オリンピックのマラソンは、女子は82日、男子は9日にある。河野ディレクターによると、過去20年の9月15日に台風が来たのは1度。午前10時の平均気温は25.4度、平均湿度は67.3%。過去最高の気温は1999年の29.7度で、最低は2002年の19.6度という。

瀬古リーダーは「まだ夏の暑さも残ってるわけで、たぶん気温はスタート時でも25度はあるでしょう。とにかく我々は東京オリンピックで勝つためにMGCをやるわけですから、暑い中で走れる能力もないと。みなさん、モチベーションはものすごく上がってます。ただ、MGCで燃え尽きてしまっては困るので、選手たちには『こんなの当然だ』ぐらいの気持ちで勝ち上がってほしいなと思ってます」と期待を込めた。(松永早弥香)

※出場選手は以下の通り

【男子】大迫傑(ナイキ)、設楽悠太(ホンダ)、井上大仁、木滑良、岩田勇治(以上MHPS)、服部勇馬、藤本拓、宮脇千博、堀尾謙介(以上トヨタ自動車)、今井正人(トヨタ自動車九州)、中村匠吾、荻野皓平、鈴木健吾(以上富士通)、中本健太郎(安川電機)、山本憲二(マツダ)、佐藤悠基、村澤明伸(以上日清食品グループ)、山本浩之、谷川智浩(以上コニカミノルタ)、上門大祐(大塚製薬)、橋本崚、一色恭志(以上GMOアスリーツ)、園田隼(黒崎播磨)、福田穣(西鉄)、竹ノ内佳樹(NTT西日本)、高久龍(ヤクルト)、大塚祥平(九電工)、神野大地(セルソース)、藤川拓也、岡本直己(以上中国電力)、河合代二(トーエネック)

【女子】安藤友香、福士加代子、一山麻緒(以上ワコール)、松田瑞生、前田彩里(以上ダイハツ)、関根花観、鈴木亜由子(以上日本郵政グループ)、小原怜、前田穂南(以上天満屋)、岩出玲亜(アンダーアーマー)、上原美幸(第一生命グループ)、野上恵子(十八銀行)

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