ラグビー

【いざオールスター】リーグ戦選抜の東海大・中野幹「去年は大敗、今年こそ勝つ」

東海大の中野は高校からラグビーを始めた(写真はすべて撮影・斉藤健仁)

ラグビーの第7回関東大学オールスターゲームが6月30日、東京・秩父宮ラグビー場で開かれる。メインゲームは関東大学対抗戦Aグループと関東大学リーグ戦1部所属のチームから、関東大学春季大会で活躍した選手を選んでつくった選抜チーム同士の対戦(15人制)だ。注目の一戦を前に4years.では両チームの“中野選手”を紹介する。

「やれることは全部やる」と副将に就任

リーグ戦選抜では、春季大会で帝京大から公式戦初勝利を飾った東海大の副キャプテン、身長177cm、体重108kgの右PR(プロップ)中野幹(かん、4年、東海大仰星)に注目だ。

中野はスクラムを支える背番号3の右PRだ。春シーズンはキャプテンでCTB(センター)の眞野泰地(4年、東海大仰星)がコンディション不良や教育実習のためにチームを離れていて、全試合でゲームキャプテンを務めた。

木村季由監督と眞野キャプテンが話し合って、中野を副キャプテンに指名したのだという。昨年度の大学選手権準決勝で優勝した明治大に15-18で惜敗したゲームを念頭に、中野は「もっと自分自身できたことはあったし、もっとチームにとってプラスの存在になれたのにできなかった。昨年度の代はまだ終わってない。今年度、できることは全部やろうと思いました」と、副キャプテンを引き受けた。

チームを引っ張る存在としては「まだまだです」と中野は謙遜するが、「ミスを続けたら流れが悪くなる。ミスをしてトライを取られたら、円陣で次の話をすることにしました。レビューは試合後にできます。次のキックオフからどうするかを話すようになったら、ミスが少なくなりました」と誇らしげに言った。

中野は東海大のスクラムを支える右プロップだ

春季大会では負けなしだったが、勝ち点で帝京大と並び、得失点差で2位に。初優勝はならなかった。中野は「昨シーズンから前倒しで組織的なこともやってきたので、この時期で完成度が高いのは当たり前です。(春季大会で)負けなかったことは何とも思ってないです。課題しかない。秋に向けてやれることはたくさんある。あくまでも秋にいい結果を出して日本一になりたい」と、冷静に振り返った。

トップリーグのチームに出稽古

5月の招待試合では明治大にリベンジできず、24-40で負けた。春シーズン唯一の黒星だった。それでも東海大FW陣のスクラムとモールは相手にとって脅威となっており、大きな武器である。「セットプレーには例年よりフォーカスし、流れをつかもうとしてます。トップリーグのチームに出稽古(げいこ)に行かせてもらってます。FWとしてはトップリーグのチーム相手でも制圧できるように焦点を当ててます」

そんな中野は東海大仰星(現・東海大大阪仰星)高校の出身で花園の優勝経験もある。ラグビーは高校から始めた。東海大仰星中では野球部でレフトを守り、「当たれば飛びました!」と、打順は4番か5番を任されていた。中学の部活を引退すると同時に、高校の野球部に参加したが、上下関係が厳しく、そのまま野球を続けるかどうか迷ったという。その悩みを、中学校で同じクラスだった眞野に焼き肉を食べながら相談すると、「ラグビーやろうぜ。いちどラグビーを見に行こうぜ!」と誘われた。その試合は東海大仰星の出場する大阪府予選決勝だった。場所は花園ラグビー場だった。

その試合が中野の運命を大きく左右する。「選手たちが観客席の前にやってきてあいさつしたとき、試合前なのに涙を流してたんです。体をバチバチ当ててかっこいいし、ラグビーってこんなスポーツなんやと心を打たれました。僕も花園の舞台に立ちたい! と思いました」。あの光景はいまでも鮮明に覚えているそうだ。

試合中に仲間をたたえる

初心者だったが、強豪ラグビー部の門を叩いた。もちろん最下層のDチームからのスタートだった。最初はBKのCTB(センター)から始まり、FWのNo.8(ナンバーエイト)でもプレーした。あまりルールは分かっていなくても、試合はただただ楽しかった。2年生になると、膝の前十字靱帯を左、右と続けて断裂してしまい、1年間はほとんどラグビーをすることができなかった。

「ラグビーができない中でできるのは筋力トレーニングしかない」と没頭し、中野の体はいつの間にか体重が70kgから100kgほどに増えた。「プレーは1年間しかやってなかったのでラグビーのレベルは低かったんですけど、フィジカルは強かったんです」。結果的に中野は高校3年生の9月に復帰し、そこからいまでもプレーする右PRになった。「花園に出たい気持ちはめちゃくちゃありました」という中野はどうにかメンバー入りし、花園の準決勝では先発、決勝では後半から出場し、優勝に貢献した。

「高校ではラグビーで完全燃焼できなかった。花園で優勝したけど、仲間に優勝させてもらったようなもの」と感じていた中野は、東海大でラグビーを続けることにした。そして2年生からレギュラーの座をつかむと、U20日本代表として桜のジャージーに袖を通すまでに成長した。

ライバルとプレー、オールスターは楽しい

関東大学オールスターには昨年、初めて参加した。「シンプルに大学の中で強いヤツが選ばれて、ライバルとプレーできるのは楽しかった。U20代表のときに一緒に試合に出たPR藤井大喜、FL粥塚諒(ともに流通経済大4年)やFL佐々木剛(大東文化大4年)とは仲よしです。去年は対抗戦選抜に24-66でやられたので、今年はやるからには絶対勝ちたいです」と意気込んでいる。

好きな言葉は、「直感を信じろ」だ。「いままでの人生、直感で動いていい方向にいってる」と感じている。自ら「直感」と書いた紙を額に入れて寮の部屋に飾り、その額にタッチしてから日々、練習に向かっている。趣味は絵を描くこと。ジブリの作品や風景を描くことで、ラグビーから離れてリラックスできるという。

「幹(かん)」という名前は、「幹(みき)になってほしい」という意味以外に、字の左側に+(プラス)と日(太陽)が入っていることから、「周りの人にとって、太陽のようにプラスの存在になってほしい」という意味も込められているという。「早く上のレベルでプレーして、日本代表になるのが目標です。常に上を目指して練習していきたいです」。中野は今日も東海大の主力の一人として、チームを鼓舞しつつ、個のレベルアップに励んでいる。

ボールを持って強引に突き進む

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