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明大バレー、主務兼アナリストの陸川航は「影の功労者」

明大バレー部で主務兼アナリストを務める陸川

今年の明大バレーボール部は絶対的な守護神だった前主将の小川智大(現・豊田合成トレフェルサ)が抜け、戦力低下が心配された。しかし、新チームは春季リーグで3位、東日本インカレでは4位と上々の成績を収めた。そのチームを支えるのが、主務兼アナリストの陸川航(わたる、3年、近江)だ。その働きぶりを鈴木康時(やすとき)監督は「影の功労者」とたたえる。誰よりも熱い思いを持ち、裏方に徹する陸川の素顔に迫る。

滋賀の名門・近江高ではキャプテン

高校時代の陸川は超高速クイックで名を馳せたミドルブロッカーだった。春高バレー34回の出場を誇る滋賀の名門・近江高で、1年生から試合に出場。3年生のときは主将として個性派集団を束ねた。インターハイでは宮浦健人(現・早大3年)、鍬田憲伸(現・中大2年)らを擁する鎮西高(熊本)を破り、近江高を初のベスト8へと導いた。明大から声をかけられた。

転機は大学2年生の春。同じミドルブロッカーのポジションに「怪物」三輪大将(ひろまさ、2年、高川学園)が入学してきた。「ベンチにも入れず、目標も持たず練習するくらいなら、チームのために裏方からサポートしたほうがいいのかなと思いました」と陸川。

そんな陸川にアナリストとしての道を示したのが、陸川が「アニキ」と慕う前主務の廣田祐也さん。「試合に出られないで腐るより、裏方でチームを支えるほうがかっこいいし、今後の人生の財産になる」。廣田さんからかけられたこの言葉で、陸川は明大での選手生活に区切りをつけ、アナリストの道へ進むことを決意。当初は慣れないパソコンの入力作業に戸惑ったが「これもバレー人生の一つ」と、いまでは立派にアナリストとして独り立ちした。

前主務の廣田さんの言葉を受け、陸川はアナリストになることを決めた

今年は、尊敬する廣田さんから主務も受け継いだ。従来のアナリストの役割に加え、部費の管理やOB会への対応など、部の運営に関わる仕事が増えた。「最初のころは大変でした」と陸川。それでもいまは「陸川が部の運営をしてくれるから、俺は勝つことだけを考えられる」と、主将の小松一哉(4年、雄物川)に言われるまでになった。

アナリストであり主務であり「第2の監督」

選手からは「わっくん」の愛称で呼ばれている。試合中は観客席でデータを収集するアナリストの白井優花(4年、明大明治)から送られてくる情報を選手に伝え、普段あまり練習に顔を出せない鈴木監督に代わり、リリーフサーバーの起用の決定など「第2の監督」としての役割も担う。タイムアウトのときは持ち前の明るいキャラクターを発揮して仲間を励ます。「一番いいのは、お互いに言い合える関係」をモットーにする「わっくん」の存在が、明大には不可欠となった。

ベンチに座る陸川は、明るいキャラクターでチームを鼓舞

絶妙な声掛けで選手を乗せる。陸川は「明治の持ち味は爆発力。でもそれは時に諸刃の剣でもあるので、いかに全員をのせるかが大事」と語る。明大は浮き沈みが激しいチーム。それゆえ陸川はタイムアウトのときのベンチでの声の掛け方にはとくに注意を払っている。例えばお調子者のセッター上林(かんばやし)直澄(3年、東亜学園)にはとにかく褒める。逆に負けず嫌いの安井恒介(1年、市立尼崎)らセンター陣には正直にプレーの感想を伝え、発奮を促す。関東1部で1、2を争うほどに個性の強いメンバーに対し、それぞれに合った的確なアドバイスでチーム全体の士気を高めている。「人によってやる気のツボが違う」。同じく個性派がそろっていた近江高時代に主将として身につけた「やる気スイッチの押し方」が、いまに生きている。

「やっぱりチームが日本一になるのが一番うれしい」と陸川。インカレ優勝を目指す明大バレー部の一員として、今日も裏方の道を突き進む。

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