東海大3年・塩澤稀夕「東海は黄金世代だけじゃないというのを見せたい」
ホクレンディスタンスチャレンジ第5戦 網走大会
7月22日@北海道・網走市営陸上競技場
男子5000mB組 1位 塩澤稀夕(東海大) 14分5秒45
7月22日のホクレンディスタンスチャレンジ(以下、ホクレン)網走大会、男子5000mB組で東海大学3年の塩澤稀夕(きせき、伊賀白鳳)が14分5秒45で走り、1位でフィニッシュした。
トップで気持ちよくゴールしたかった
空は晴れ渡り、気温24度と網走にしては暑いぐらいの気候。遮るものがない網走市営陸上競技場には、朝から強風が吹きつけていた。ホクレンは記録を狙うための大会だ。5000mB組のターゲットタイムは13分55秒。ペースメーカーが引っ張り、塩澤は初め、先頭集団の中ほどについてラップを刻んだ。2500mを過ぎたあたりで菊地賢人(コニカミノルタ)、服部翔太(ホンダ)、野中優志(大阪ガス)が抜け出し、2800m付近で塩澤はその3人のあとについた。残り4周となったところで先頭はペースメーカー、菊地、塩澤の3人に。残り3周を切って菊地が離れ、塩澤とペースメーカーの二人旅に。そのまま失速することなくトップでゴールした。
ホクレンでは持ちタイム順で組分けが決まるが、塩澤は「A組とB組どちらでもいい」と言われていたという。「A組の中盤で自己ベストを出すより、B組の先頭でゴールしたほうが、そのあと気持ちよく駅伝シーズンに入っていけるかなと思って」と言って笑った。自己ベスト更新と勝ちきることの二つをテーマに走った。13分57秒03の自己ベストには届かなかったが、B組1位の記録が残った。
「ベストというか、13分台は出したかったんですけど、このコンディションで……。走る前から少しナイーブになってしまったところもありました。両角(速)監督からは『13分40秒台で走れる力はついてきてる』と言われました。このあとは夏合宿なのでしばらくレースはないんですが、合宿明けに条件のいい大会で記録を出せればと思います」
アメリカでつかんだ手応え
塩澤は好調の理由について「今年はけがをしてないのが一番大きいです」と語る。2017年、1年生の全日本大学駅伝で2区を走ったが、昨年は夏合宿後のけがで全日本インカレの10000mを欠場。三大駅伝のメンバーに入れなかった。今年1月の都道府県対抗駅伝に三重代表として出場し、区間最下位に沈んだ。その後、春先のアメリカ合宿でフォーム、接地の見直しをして、動きづくりに取り組んだ成果がいま出ているという。
「アメリカから戻ってすぐは練習を全部こなしながら大会に出たりしていたので、疲労がたまったりして、関東インカレでも思うような結果が出てませんでした。でも、ようやく落ち着いてきて、いい調子になってきたと思います。接地、フォームを変えたことで、けがをしにくくなったと思います」と分析する。
黄金世代だけじゃない、3年生にもできる
今後の目標は、やはり三大駅伝出場だ。東海大には前回の箱根駅伝優勝メンバーの4年生がたくさんいる。その中で自分が三大駅伝を走るにはどうしたらいいと思うか、と尋ねた。「やはりコンスタントに結果を残すことだと思います。東海大は全員強い、と言われてますけど、やはり個人では波があったりするので。その中で自分が安定していれば、信用されて駅伝にも使われると思います。この先はレースがあまりないので、まずは夏合宿の強度の高い練習でもしっかり走れるというところを見せていきたいです」
同じ3年生の名取燎太(佐久長聖)、西田壮志(九州学院)とはお互いを刺激し合う関係で、「三人で強くなろう」と言ってここまでやってきた。「僕たちは『上の世代に勝つ』という気持ちで入学してますので。(一つ上が)黄金世代と言われてても、今年の駅伝は『3年生がいて勝つ』っていう状態に持っていきたいと思います」。実際、今年の箱根駅伝で8区を走って区間新記録を出し、MVPに輝いた小松陽平(4年、東海大四)はこの日、塩澤と同組で走ったが、14分36秒73で21位だった。箱根で4区を走ったキャプテンの館澤亨次(4年、埼玉栄)は昨年まで2連覇していた日本選手権1500mで入賞を逃し、箱根で優勝のゴールテープを切った郡司陽大(4年、那須拓陽)は故障で3カ月走れない期間が続くなど、波に乗り切れていない選手が多い。だからこそ、塩澤にもチャンスがある。「今年しっかりインパクトをつけて、来年力が落ちたって言われないように、しっかりけがなく上がっていきたいです」
同学年の仲間への思いを聞かれると「ようやく三人そろって駅伝に臨めそうだなと思います。今日も名取と一緒に走ったので、彼にだけは負けたくないと思って走りました」。名取は4位でゴールした。塩澤が取材を受けている間に、彼の荷物を運んできた名取は言う。「もともと両方全然走れてなかったから、一緒に上がってこられてうれしいです」。塩澤は伊賀白鳳高校3年生のときに都道府県対抗駅伝で高校MVPに輝くなど、潜在能力は確かだ。同学年の二人とともに、東海大の主力に名乗りを上げる。