サッカー

明大DF小野寺健也、総理大臣杯の舞台で放った最高の輝き

決勝点をあげ、笑顔を見せる小野寺

第43回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント

9月7日@大阪・ヤンマースタジアム長居
決勝 明治大(関東第1)2-1 法政大(関東第5)

夏の大学日本一を争う総理大臣杯は、2年連続で明治大の優勝で幕を閉じた。決勝の相手は法政大。天皇杯ではJ1・ガンバ大阪を下し勢いづいているチームだ。攻守の歯車が噛み合わず前半23分に先制を許し、序盤から苦しい展開を強いられるも「どうしても勝ちたかった」と栗田大輔監督。関東王者の意地を見せつけ、2-1で全国の頂点に再び上り詰めた。その立役者となったのが、DF小野寺健也(4年、日大藤沢)だ。

監督からの檄で「生まれ変われた」

「ビビってるのか。お前はそんな選手じゃないだろう!」。同点で迎えたハーフタイム、栗田監督はいままでにないほどに語気を荒げ、小野寺に檄(げき)を飛ばした。小野寺自身、どこか引いてしまっていた部分があったという。この試合、3バックの一員として先発出場したが、相手トップ下の選手を捕まえきれない場面も散見。先制を許し、明大はいまいち波に乗りきれていなかった。小野寺の消極的なプレーもその一因として挙げられた。そんな矢先に監督からかけられた熱い言葉。気合が入らないわけがなかった。

「栗田さんの言葉で生まれ変われた」と小野寺。後半に活気を取り戻した。明大の代名詞でもあるハイプレスディフェンスを展開。それを後方から支える土台として、幾度となく体を張り続けた。前半ダメだった分、とにかく取り返したい一心だった。チーム全体としてサイズの大きさが目立つ法大イレブンに対し、負けじと張り合いストッパーとしての仕事を完遂。すると小野寺の前に最大のチャンスが転がり込んできた。

大学4年目で公式戦初得点

後半23分、明大はコーナーキックを獲得した。キッカーはいつもの通りMF中村健人(4年、東福岡)だった。「健人とはホットラインというか、普段練習しているかたちがあったので、いつも通りの場所に入った」と小野寺。ゴール前中央の位置に上がった正確なキックに、慌てることなく冷静に頭で合わせた。ネット左方が揺れたことを見届けると、両手を掲げてそれまで抑えていた感情を一気に爆発させた。「小細工なしでヘディングは誰にも負けないという自信があった。セットプレーになり『お前が決めろ』という周囲の期待に応えることができてよかった」と笑顔を見せた。

大学4年目での公式戦初得点が、最高のかたちになった

大学4年目にして生まれた公式戦初得点は、チームにとっても値千金の決勝ゴールとなった。「泣きました。いままで苦しい時間を過ごしたときもあったとは思いますけど、同期として感無量です」とMF森下龍矢(4年、ジュビロ磐田U-18)。一躍現れたシンデレラボーイの活躍は、スタジアムを熱狂の渦に包みこんだ。

ひたむきな努力でトップチームに

DFを本職としながら、豪快なヘディングを武器に高校2年生のときの選手権神奈川予選では得点王を獲得している。「その話を聞いた時はゾッとした」とMF瀬古樹(4年、三菱養和SC)は言う。輝かしい実績を引っ提げ明大サッカー部へ入部したものの、昨年度までの3年間は決して陽の当たる場所にいたわけではない。安定してトップチームにいられるようになったのは今年からだ。

高校からの盟友・MF中村帆高(4年、日大藤沢)らが結果を残して名を挙げていく中、小野寺は昇格できずにいた。それでも腐ることは絶対になかった。「下のカテゴリでもやることは変わらない。そこでの土台作りが評価されていまの自分の立場がある」と振り返る。ひたむきな努力が実を結び、今季からトップチームのメンバー入りを果たした。「栗田さんが自分のことを信じてくれて、自分の武器をうまく出せるようになってます」。そう話す小野寺は3バックを採用した今年度のディフェンスシステムの中でも鍵を握る選手として、ここまで存在感を発揮し続けている。

見すえる先はプロの舞台。「3年生までは試合にも出場できなくて、正直無理だと思ってました」。一度は諦めかけた夢だったが、自身を取り巻く状況が変わったことで心境にも変化が生まれた。「挑戦できるのはいましかない。絶対に後悔はしたくない」。あこがれを現実に。小野寺のサクセスストーリーは序章を迎えたばかりだ。

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