奈良学園大・菅田大介 この4年で鍛えた二刀流で、プロの扉をこじ開ける
奈良学園大の「二刀流」男が9月17日、プロ志望届を提出した。菅田大介(すがた、4年、京都共栄学園)はこの春、近畿学生野球リーグ1部で3番バッターとして打率4割7分6厘(42打数20安打8打点)と打ちまくって首位打者に輝いた。投げては7試合に登板して1勝3敗ながら、最速146kmのストレートが光ってリーグ3位の防御率1.87をマーク。投打両面でプロから注目される存在になった。DH(指名打者)制のある大学野球では非常に珍しい投手兼外野手だ。秋のリーグ戦は第3節を終えて勝ち点1と苦しい戦いになっているが、菅田は打席で、そしてマウンドで奮闘している。
大学では投げないつもりだった
「自分が0点に抑えたら絶対負けることはないですし、そこでもし3番で打点を稼いだら、一人二役で両方ともヒーローになれるなっていうのはあります」。昨年の全日本大学選手権1回戦(対立命館大)では3番ライトでスタメン出場し、6回途中からマウンドへ。9回までゼロに抑える好リリーフを見せたかと思えば、9回には1点差に迫るタイムリーヒット。負けはしたが、東京ドームを沸かせた。
左投げ左打ち。中学時代に所属していた東淀川ボーイズではピッチャーもしていたが、けがの影響もあり、京都共栄学園高ではほぼ外野手に専念した。同じ京都府福知山市内の福知山成美高にいた主将の矢野広将(3年)は当時の菅田について「ひとりだけズバ抜けてて、打球が違う感じでした」と語る。菅田は高3の夏に公式戦で投げているが、奈良学園大にはピッチャーをしないつもりで入学した。実際、全国大会での二刀流デビューを果たした昨年でさえ、8:2か7:3で野手がメイン。その比率が今年から投手メインに逆転した。
「社会人さんの練習に参加させてもらったとき、ピッチャーとしての評価がよかったんです。試合に投げてないから分からないですけど、ブルペンで投げてたときの評価がよかったので、それで『一回先発してみるか?』という話を監督さんからもらって、やりました」
それが今年3月、阪神タイガース2軍との練習試合。5回を投げて4失点。立ち上がりに球がバラついて3失点したが、2回以降はプロを相手にしっかり試合をつくった。
「自分の中では『まっすぐが通用したかな』というのがありました。会心の当たりでとらえられたのが少なかったんで。ピッチャーとして自信がついたというのはあります」
3番ピッチャーで出場したこの試合では、2安打1打点と打っただけでなく、二盗も決めている。「打席に立ったときはいつも通り野手の意識でやってるので、3番で出塁したらツーアウトからでも盗塁します」と菅田。「いけたらいけ」のサインで果敢にスタートを切り、牽制(けんせい)球をもらえば頭から帰塁する。これが菅田の二刀流だ。
春は先発マウンドに立っていたが、この秋は抑えを担う。外野手でスタメン出場し、終盤のイニングに向け、打順の遠いイニングや5回終了後のグラウンド整備中にブルペンで肩をつくる。「外野で守ってるときから『そろそろ自分かな』ってピッチャーの気持ちをつくってます。審判の『プレーボール』でスイッチが入ります」。本格的なピッチャー経験が浅いだけに伸び代も大きい。先発に加えてリリーフを経験することは大きなプラスに違いない。
酒井真二監督から受け取ったプロ志望届
高校卒業の際にも育成枠ならドラフト指名を受ける可能性はあったが、4年後の支配下登録選手としての指名を目指し、進学を選んだ。そして迎えた秋の大学ラストシーズン、第2節1回戦の試合前に酒井真二監督からプロ志望届を受け取った。「もう一回、身の引き締まるじゃないですけど、やらないといけない、リーグ戦で勝たないといけないっていう気持ちが生まれました」と振り返る。
身長187cm、体重83kgの立派な体格で、体脂肪率は10%程度。大学に入ったときから10kg、この春からでも3kg増量している。器具を使ったウェイトトレーニングはあまりしておらず、練習に没頭する中で自然にビルドアップしてきた。外野手としては肩と球際の強さ、投手としてはまっすぐの伸びと変化球のキレがセールスポイントだ。
漠然と持っていたプロ野球選手の夢は、大学入学の時点ではすでに明確な目標へと変わっていた。好きな選手は「ピッチャーだったら和田毅選手みたいなストレートで押せるピッチャーになりたいなと思ってます。野手だったら豪快さで言ったら柳田(悠岐)選手なんですけど、自分は長谷川(勇也)選手が好きなので、1本のヒットで流れを変えられる人になりたいなと思います」。偶然にも好きな選手は福岡ソフトバンクホークスの3人で固まったが、ドラフトになれば12球団どこでも何位でもOKだという。
もちろんピッチャー、野手どちらの指名でも構わない。「そのために両方やってるっていうのもあるんで。いまはピッチャーの方が楽しいっていうのはあるんですけど、そこは評価していただくのであれば、野手でも。試合前のノックからでも目立ちたいなと思ってます」
自然体の二刀流男は10月17日の吉報をイメージしながら、ラストシーズンを戦う。