アメフト

横浜育ちの関学WR鈴木海斗 「おばあちゃんの唐揚げ」を楽しみに、勝負の3年目

龍谷大戦でロングパスを受けてタッチダウンし、喜ぶ鈴木(すべて撮影・安本夏望)

関西学生リーグ1部 第2

98@大阪・エキスポフラッシュフィールド
関西学院大(2勝)19-0 龍谷大(2敗)

4年連続の甲子園ボウル出場を狙う関西学院大が龍谷大を19-0で下し、開幕2連勝とした。主将のDL寺岡芳樹(4年、関西学院)やエースQB奥野耕世(3年、同)らの主力数人を温存し、選手層を厚くするための試合と割り切っている。もちろん晴れ晴れとした内容にはならず、今シーズン限りでの退任を表明している鳥内秀晃監督(60)はニヤッと笑って「ナメてるよ」。すべて計算ずく。王者関学ならではの序盤の戦いだ。

「決めたいね」と話していたルートで55ydTDパス

ほとんど見せ場のなかったオフェンスで一瞬の輝きを見せたのがWR(ワイドレシーバー)の鈴木海斗(かいと、3年、横浜南陵)だった。3-0とリードした第2クオーター、自陣45ydからの第3ダウン8yd。この日の先発QB(クオーターバック)平尾渉太(2年、啓明学院)がランプレーのフェイクからパスに出た。鈴木は左に2人出たレシーバーの内側。スピードで縦に押していき、斜め右へコースを変えた。平尾は龍谷大ディフェンスに捕まりそうになったが、かわして少し前へ出た。目はずっと鈴木の動きを追っていた。右奥で鈴木がフリーになるのを確信した瞬間、右腕を振り下ろす。ロングパスがゴール前の鈴木へと通り、エンドゾーンへ駆け込む。55ydのタッチダウン(TD)パスになった。

高校と大学1回生まではランニングバックだった

「決まって気持ちよかったです。練習で何度もやってたプレーで『決めたいよね』って言ってたプレーなので」。試合後の鈴木はいい笑顔になって言った。この日、パスレシーブでチームトップの91ydを獲得した。

鈴木は神奈川県立横浜南陵高校アメフト部の出身。「関学の一つのパートぐらいの人数しかいないチームでした」と振り返る。オフェンスとディフェンスを兼ねる「リャンメン(両面)」が当たり前。しかしエースRB(ランニングバック)だった鈴木は特別待遇を勝ち取った。最後の秋はオフェンスだけ。エースランナーとして走り回った。

3回生になって凡ミスが減ってきた

関学でも最初はRBだった。1回生の桃山学院大戦でリーグ戦デビューすると、いきなり2TD。鮮烈なデビューだった。大村和輝アシスタントヘッドコーチと話し合い、2回生になるとWRへ転向。WRのデビュー戦は201856日、あの日大との定期戦だった。奥野が背後からありえない一撃を食らったプレーは、鈴木がパスターゲットだった。何とも複雑な思いを抱えてきた。それでもWRへのコンバートについては前向きに受け止めていた。「関学のRBはうまい人が多いんで、試合に出られてなかったかもしれない。転向してよかった」と言いきる。

インサイドレシーバーの1番手として独り立ち

今シーズンは副将のWR阿部拓朗(4年、池田)がアウトサイドのWRに移り、鈴木がインサイドのWRとしては1番手になった。頼りにしてきた阿部からの独り立ちを求められ、「自分がやらないと、という気持ちが強くなった」と話す。練習中にポロポロ落としていたミスも減った。いまは後輩の育成にも精を出す。「底上げをしていかないと。去年の経験から、しっかり伝えていきたい」。鈴木は気持ちの面でもワンランク上のところへ来た。

「関西でアメフトをやりたい」と関学にやってきて3年目。横浜育ちの男はまったく関西弁に染まっていない。常に「実家に帰りたい」と思っている。「おばあちゃんの唐揚げが食べたいんです」。でも、シーズンが終わるまではお預けだ。「今年は個人的な記録も狙っていきたいです」と意気込む。歴代の関学のエースレシーバーたちに匹敵する勝負強さを身につけられるか、鈴木にとって勝負の3年目である。

龍谷大戦後に整列した際、同じ3回生のエースQB奥野(左)と語る鈴木

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