法政アメフトRB阿部快斗 伝統の29番をつけ、覚悟のシーズン
関東大学リーグ1部TOP8 第2節
9月14日@東京・AGFフィールド
法政大(2勝)30-20 慶應義塾大
アメリカンフットボールの関東大学リーグ1部TOP8の第2節で法政大と慶應義塾大が戦い、法政が30-20で勝った。
最後はランで慶應を突き放した
第1クオーター(Q)、法政は最初のオフェンスプレーでRB星野凌太朗(1年、日大三)が53ydのビッグゲイン。主将のRB岩田和樹(4年、法政二)が体をねじ込んで先制タッチダウン(TD)を決めた。慶應も直後のオフェンスシリーズでダウンを5回更新し、約7分を費やすロングドライブを展開。最後はQB西澤巧馬(4年、清風)がWR工藤眞輝(2年、慶應義塾)へのTDパスを通して7-7の同点。攻守が入れ替わり、すぐに法政がTDを奪い、14-7とした。慶應が小刻みに攻め込むのに対し、法政は一発ロングゲインから得点。対照的なオフェンスだった。第2Qは両チームともフィールドゴール(FG)を2本ずつ決め、20-13と法政リードで前半を終えた。
第3Qに入り、両チームともなかなか得点につながらない。自陣深くからの攻撃が続き、思うようにドライブできない慶應に対し、フィールドポジションで優位に立った法政がFGで3点を追加。23-13。法政オフェンスが息を吹き返し、第4QはRB小林颯希(4年、法政二)とRB阿部快斗(3年、横浜立野)がナイスランを連発。試合残り3分で小林がTD。30-13と3ポゼッション差をつけ、試合を決めた。慶應もロングパスを2本通してTDする粘りを見せたが、30-20でタイムアップとなった。
テレビで見た甲子園ボウルで法政にあこがれ
法政のエースランナーといえば29番だ。今年からこの番号をつける阿部が、新たなエースRBとして骨のある走りを見せた。TDこそなかったが、随所で試合の流れを手繰り寄せるラン。15回ボールを託され、139ydのゲインと上々だった。「抜けたプレーもありましたけど、最後に捕まってしまったという感覚のほうが強いです。オフェンスもテンポにまだまだ課題がありました」。阿部は試合後に反省ばかりを口にしたが、粘り強さとスピードを兼ね備えた走りは、法政のランナーらしく堂々たるものだった。
阿部がアメフトに出会ったのは2006年12月17日。テレビで法政と関学の戦う甲子園ボウルを見た。当時の法政はエースRBの丸田泰裕やQB菅原俊(現・オービック)ら豊富なタレントを擁し、爆発的なオフェンス力を誇っていた。当時小学3年生だった阿部は、法政のはつらつとしたプレー、明るい雰囲気に惹(ひ)かれたという。そして、自分も丸田のようなRBになり、オレンジ色の29番を着たいと思った。
アメフトに魅了された阿部は、小学5年生からオンワード・オークス(現・ノジマ相模原ライズ)のジュニアチームでフラッグフットボールを始めた。中学に上がるとタッチフットボールチームのジュニアトマホークスでプレーし、フットボーラーとしての下地をつくった。神奈川県立横浜立野高校に進学。2年生のときにはオールスター戦のSTICKボウルにも出場して活躍し、スポーツ推薦の誘いを受け、あこがれの法政へ進んだ。2年生の昨シーズン途中からは実質的なエースとして活躍、法政のランオフェンスを担ってきた。
阿部が入学する前年、法政はチームの体制変更に伴い、ニックネームが「トマホークス」から「オレンジ」に変わった。オレンジになってから昨シーズンまで、伝統のエースナンバーをつける選手はいなかった。子どものころから法政の29番を胸に走るのが夢だった阿部はエースとなった今シーズン、迷うことなくこの番号を選んだ。「法政で29番をつけるということは、チームのOBやOGはもちろん、観客の方々にも注目されます。今年のランは自分にかかってると思ってやってます」。阿部は覚悟を口にした。有澤玄監督が「試合よりも練習の方がいい。まだまだですね」と期待をかける阿部の走りは、試合ごとに力強さを増している。阿部がエースとしてさらなる覚醒を見せれば、法政オレンジは面白い。