大学野球

近大の最速152km男・村西良太 カエサルの心境でドラフトを待つ

村西は大学で初めてエースになった(すべて撮影・安本夏望)

プロ野球のドラフト会議が10月17日午後5時に始まる。高校生139人、大学生108人がプロ志望届を提出している。近畿大の村西良太(4年、津名)はサイドに近いスリークオーターから最速152kmの直球を投げ込む右ピッチャー。運命の瞬間を待つ。

「サイドで投げてみいや」

10月6日、ともにドラフト候補である立命館大の坂本裕哉(4年、福岡大大濠)とのエース対決となった。村西は3回に高めに浮いた直球をライトスタンドへ運ばれた。6回を投げ、このソロホームランによる1点だけに抑えた。リリーフ陣もゼロで切り抜けてくれたが、坂本の前に完封負け。「悪いなりに変化を使って抑えられました。力みはないんですけど、うまく投げられなくて、抜けることが多いです」。村西は自分の現状を口にした。

この日はプロ8球団が視察に訪れた。巨人の渡辺政仁スカウトは村西について「まだ完璧じゃないけど伸びしろはある。中継ぎとしての適性があると思う。シンカー系(のボール)が投げられるようになれば、幅が利く」と話した。

サイドに近いスリークオーターから、最速152kmのストレートを投げる

兵庫県は淡路島の出身。この投げ方になったのは中学1年生のころだ。小3で野球を始め、外野を中心にショートやサードを経験。「ピッチャーもやれ」と言われて始めたが、コントロールが悪かった。「めちゃくちゃで、キャッチャーが捕れないくらいに抜けてました」。中学生になってピッチャーに専念。地元クラブのアイランドホークスに入り、監督に「サイドで投げてみいや」と言われた。投げてみると、いい感覚があった。そこからはフォームは変えていない。「腰の回転を使えて、強い球を投げられる。コントロールは難しいですけど」。自分のフォームの長所と短所を、村西はこう考えている。

県立津名高校のころは全国的には無名の選手だったが、スポーツ推薦で近大に入れた。1回生の秋からリーグ戦にデビュー。だが、2回生の春から3回生の春までの3シーズンは合計2試合の登板だけ。コンディションを崩し、投げられなかった。その間、トレーニングに励んだ。「下半身ではなく、上半身を主に鍛えました。(自分の投球は)背筋で投げる感覚なんで」と村西。高校時代の最速は143kmだったが、いまは152kmになった。昨秋まではリリーフだったが、この春から先発に転向。中学や高校時代にけがもあってエースになれなかった男が、大学野球の名門でエースにのし上がった。

大学でもほとんど投げられない時期があった

淡路島が生んだ虎のスターに続け!

昨秋のドラフトで阪神から1位指名を受け、1年目から大活躍だった近本光司も淡路島の出身だ。長嶋茂雄氏のセ・リーグ新人最多安打記録を更新する159安打を放ち、36盗塁で盗塁王にもなった。村西も「テレビをつけたら、ずっと打ってる(笑)。来年(のドラフト候補)には、東洋大の村上(頌樹、智辯学園)もいるんで、(淡路島出身選手のプロ行きが)3年続けばいいなと思ってます」と話す。

この春、新調した茶色のグラブに、この言葉を刻んだ。
“The die is cast”
「賽(さい)は投げられた」。結果はどうなろうと後戻りはできない、断行あるのみ、という意味の成句だ。かつてポンペイウスと争ったカエサルが軍隊を率いてルビコン川を渡る時に言ったとされている。「なんか、かっこいいなぁと思って。プロに入ることが終わりじゃない。入ってからどれだけ活躍できるかが大事だと思ってます」。もう、引き返せない。まずは人生をかける場所がどこになるのか。その瞬間を待つ。

もう引き返すことはできない