東洋大・村上頌樹 プロ注目の3年生エースの現在地
村上頌樹(3年、智弁学園)は今年、フル回転だった。“東洋大三羽烏”と称された上茶谷大河(かみちゃたに・たいが、現・横浜DeNAベイスターズ)、甲斐野央(かいの・ひろし、現・福岡ソフトバンクホークス)、梅津晃大(現・中日ドラゴンズ)が卒業し、名実ともに東洋大のエースとなった。春季リーグ戦は9試合に登板し、6勝無敗、防御率0.77の活躍で、対戦校すべてから勝ち点を奪う完全優勝に大きく貢献。最高殊勲選手、最優秀投手、ベストナインの三冠に輝いた。
初めての大学日本代表
大学日本代表にも選出され、初めて日本代表のユニフォームに袖を通した。日米大学野球選手権の第4戦では2回を投げ、被安打2、3奪三振の無失点で勝利投手になった。この代表での経験を「いろんな人と話したり学べたりと楽しかった」と振り返る。よく話したのは同学年の山﨑伊織(東海大、明石商)や早川隆久(早稲田大、木更津総合)。山﨑からはスライダーを教わったといい、「曲がりが大きくて気になったので自分で聞いた。スライダーが変わって投球の幅が広がった」と成長するためのチャンスを見逃さなかった。
チームのために投げ続けた秋
「エースとしてチームを勝たせたい」と臨んだ秋季リーグ戦は8試合に登板するも、打線の援護に恵まれず、3勝2敗と苦しんだ。開幕戦となる立正大1回戦では9回完封の圧巻のピッチングを見せたが、その後は3戦目にもつれる試合が続き、中1日での週2回登板。「疲れてて球がいかなかった」と話すように疲労も溜まり、調子もいいとは言えない試合が続いた。
3カード目の駒澤大1回戦では、延長10回163球を一人で投げ抜いた。「正直6回くらいで交代したいと思ってた」と語ったが気丈に振る舞い、任されたイニングを投げ続けた。杉本泰彦監督も「村上がいい粘りをしてくれた」とエースの熱投を讃える。
好きな言葉は「粉骨砕身」。グローブにも刻まれ常に心に留めている。その言葉通り骨を粉にし、身を砕く思いでチームのために力を尽くした。防御率は1.26で後藤茂基(中央大2年、城西大城西)にわずか0.01及ばず、最優秀防御率のタイトルを逃した。「勝てなかったのであまりよくないシーズンだった」と悔しさをにじませた。
大学ラストイヤーは日本一、そしてプロへ
10月17日、一学年上の先輩、佐藤都志也(4年、聖光学院)がプロ野球ドラフト会議で千葉ロッテマリーンズから2位指名を受け、プロ入りを決めた。「(バッテリーを)一緒に組んでた人がプロの世界にいくのは光栄なことですし、来年は自分もいきたい」と刺激を受けた。
まず目指すのは春季リーグ戦4連覇。村上が入学してからここまで、東洋大は春、優勝しかしていない。防御率0点台の投球を誓い、その先には大学ではまだなしとげられていない日本一も見据える。そのためにも「体幹や柔軟性をいまは鍛えたい」と努力を惜しまない。
2016年春のセンバツで日本一をつかみとった男は、大学での日本一を達成し、プロの世界を見すえる。さらに一回り成長するため、厳しい冬を迎える。