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特集:第74回甲子園ボウル

OL10年目の関学副将・村田健太 甲子園でも、ひたすら最後まで泥臭くやりきる

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第74回甲子園ボウル
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甲子園球場での練習でも、一つひとつフィニッシュにこだわる村田(右、すべて撮影・安本夏望)

アメフト全日本大学選手権決勝・甲子園ボウル

1215日@阪神甲子園球場
関西学院大(西日本代表、関西2位)vs 早稲田大(東日本代表、関東)

球技なのに基本的にはボールにさわれない。オフェンスを前に進めるため、ただひたすらにぶつかり続ける大男たちがいます。自己犠牲のポジションとも言えるOL(オフェンスライン)の生きざまについて書き尽くす「OL魂」。1215日の甲子園ボウルで30度目の優勝を狙う関西学院大ファイターズの左タックル(T)村田健太(4年、関西学院)にスポットライトを当てました。

リーグ5戦目でようやく左Tのスターターに

関学のOL陣にとって苦しいシーズンだった。15-17の接戦になった関西学生リーグ第4戦の神戸大戦、ランで13ydしか稼げずに負けた最終戦の立命大戦。いずれもOL5人が踏ん張れず、プレーが壊れた。QB(クオーターバック)の奥野耕世(3年、関西学院)は相手ディフェンスに追い回された。OLのスターターは昨シーズンから1人の入れ替わりしかなかったにも関わらず、けが人が出たりしてメンバーが固定できず、安定感を欠いた。 

村田も苦しみ抜いてきた。定位置であるはずの左Tでの先発出場は、リーグ第5戦の近大戦から。この秋は大学からアメフトを始め、TE(タイトエンド)からコンバートしてきたばかりの亀井優大(3年、報徳学園)にスターターの座を奪われていた。「けがをしたわけじゃなくて、シンプルに実力不足です」と苦い表情で話す。関学の中学部からOL10年の村田ではなく亀井を起用していた理由について、OL担当の神田有基コーチは「ウチのチームは実力が一緒だと、若いメンバーから出していく」と語った。4回生だろうが副将だろうが、ファイターズでスターターを張り続けるのは難しい。 

「親分」と同じ関学の左Tで、がむしゃらにブロックにいく(右から2人目が村田)

副将なのにプレーでオフェンスを引っ張れないという屈辱の中で、村田は自分と向き合った。同じ4回生やOLの後輩たちに村田のことを聞くと、決まって二つの言葉が挙がる。「ストイック」「まじめ」。誰よりも早くグラウンドに出て、防具をつける。全体の練習が終わってからも、後輩たちの練習に付き合う。右Tのスターターである牧野隼大(しゅんた、3年、啓明学院)が「す、すごいですよ」という村田のこだわりがある。OLの基本の一つである「フィニッシュ」だ。ランプレーで相手にぶち当たって走路を切り開くとき、最後までしつこく足をかき、相手を押し続ける。村田は練習でも鬼の形相でフィニッシュをかける。「OLをやってて楽しいのは、最後まで目の前の相手を自由にさせないこと。フィニッシュをかけるときが一番楽しいです」。相手にブロックを外されてはいつくばることもある。コーチには下手くそと言われる。副将のプライドもクソもない。ただ村田は誰よりも泥臭く、ただひたすらに泥臭くやってきた。 

心酔する2学年上の「親分」のためにも

村田は2学年上の主将で左Tだった井若(いわか)大知(現・富士通フロンティアーズ)を尊敬してやまない。フィニッシュへのこだわりも、井若に影響された部分が大きい。井若は1回生から不動の左Tだった。関学OLの「絶対神」だった。「いままで見てきたOLの中で一番うまいです。まねできないぐらい強いし、勝ちたい気持ちが見える人だった。抜けてるとこもめっちゃあるけど、気持ちは伝わるし、背中で見せるキャプテンでした」。井若はいつも後輩のOLたちを子分のように引き連れ、ことあるごとにブロックのコンビネーションやタイミングを確認し合った。村田は「親分」の指導を忠実に聞き、ミーティングでは必ず近くに座った。その井若から、121日の西日本代表決定戦の2日前に電話があった。「お前の生きざまをフィールドで見せるだけや」。親分の言葉で、それまで不安に襲われていた村田は吹っ切れた。決戦前日の練習終わりのハドル。副将として前に立った村田の口から、井若の主将時代の決めゼリフが出た。「迷ったら俺の背中を見ろ!」 

全日本大学選手権の神戸大戦でしつこくブロックにいく村田

2年前、井若が主将だったときの甲子園ボウル。日大に17-23で敗れたが、村田は親分の生きざまを見た。井若は体の痛みをこらえながら、最前線で体を張り続けていた。「アカンかったかぁ」。涙を流し、主務の三木大己と話す姿を目の当たりにし、感じるものがあった。「やりきった上でダメやったんが伝わってきました。本気になってやってたのに、日本一になれない。日本一になるのは難しいと実感しました」。今年も2年前と同じように、リーグ最終戦で立命に敗れ、西日本代表決定戦でリベンジして甲子園ボウル出場をつかんだ。同じ轍(てつ)は絶対に踏まない。相手は早稲田だが、甲子園ボウルに対する親分の借りも返しにいく。 

審判の笛が鳴り終わるまで前へ、前へ

OLは脇役とは思わない。むしろ俺が主役

いざ、甲子園。OLとしての誇りを胸に戦う。「OLは目立たなくて、地味で、縁の下の力持ちと言われるけど、あまりそういう風には考えてないんです。もちろん、バックを走らせる役割があるけど、自分がこうしたいと思ってプレーしてるから、脇役っていう気持ちはない。むしろ俺が主役って思ってます。ポジションがOLでよかったと思ってるし、楽しんでやってます。生まれ変わってアメフトをやったとしても、OLをやるぐらい好き。納得できるプレーをして、絶対に勝ちたい」。ぜひ、関学の79番を見ていてほしい。笛が鳴るまで、いや、笛が鳴り終わるまで、必死に足をかいて相手を押し続ける。学生アメフトの聖地で、村田は生きざまを見せ続ける。

OLとして10年目を迎えたフットボール人生を語る村田

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