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連載:OL魂

特集:駆け抜けた4years. 2020

甲南大主将・西谷純也 “動けるデブ”で始まったアメフト人生「甲南でやれてよかった」

同志社との入れ替え戦に敗れ、西谷は目を潤ませた(撮影・篠原大輔)

1年で1部に戻さないといけないって思ってたんですけど……」。2019年シーズン、甲南大学アメフト部レッドギャングの主将を務めた西谷純也(4年、大阪学院大)は、そう言ってうつむいた。昨年1214日、関西学生リーグ22位の甲南大は、17位の同志社大との入れ替え戦に臨んだが、8-35の完敗だった。 

「1部でやってなんぼ」言い続けたが……

西谷(中央)は敗戦後、観客席に向けて下げた頭をなかなか上げられなかった(撮影・篠原大輔)

201215年は2部だった甲南は、16年から3年連続で1部にいた。18年シーズンの入れ替え戦で2部にたたき落とされた相手が同志社だった。しかし、1年後のリベンジはならなかった。「僕らはチャレンジャーで、ただ1部昇格をつかみにいくだけやったんですけど、力の差が出ました。僕らの代は3回生までずっと1部でやらせてもらって、今年は2部で。やっぱり1部でやってなんぼや、っていうのを言い続けてきました。すごい悔しいです。責任を感じます」。西谷は言った。 

0-28の第4クオーター6分すぎ、甲南はようやくロングパスでタッチダウン。直後のキックオフは攻撃権をとりにいくオンサイドキック。高く跳ね上がったボールの奪い合いになるので、ボールを捕るのが得意な選手が起用される。そこに身長170cm、体重115kgOL(オフェンスライン)である西谷の姿があった。明らかに場違いだ。結局キックされたボールは彼のいたサイドとは逆に飛び、攻撃権奪取はならなかった。「あれは僕に注目を集めて、何とかボールをとろうする作戦やったんですけど……」。涙目で、西谷が笑った。 

相手ディフェンスをブロックにいく(中央が西谷、撮影・篠原大輔)

中学時代はバスケのセンター

大阪府高槻市出身の西谷は中3までバスケのセンターだった。当時すでに体重は90kgあった。彼の出ていたある試合を、たまたま大阪学院大高校アメフト部の顧問の先生が見ていた。 

「動けるデブがおるな」 

先生はそう思ったそうだ。声をかけられた西谷は「(アメフトを)やってみよかな」と思った。入学して取り組んでみると、「難しいけど、こんなにおもろいスポーツないな」と感じた。もちろんポジションはライン。高校時代はOLDL(ディフェンスライン)を兼任した。 

体形がそっくりな新入生

甲南ではOL3回生になると、自分とそっくりの体形をした新入生がやってきて驚いた。その名も岡崎玄竜(げんた、箕面自由学園)。身長172cm、体重128kg。岡崎は1回生からOLのスターターになった。OL5人の真ん中がセンターの岡崎で、左のガードが西谷。この2年間、いつも二人は隣り合ってオフェンスの最前線に立ち続けてきた。とくに後ろ姿が似ていて、ほほ笑ましかった。

西谷(左)と岡崎は後ろ姿がそっくり(撮影・篠原大輔)

「センターとして、頼れる存在でした。ハドルブレイクのときはデカい声を出して、いつもオフェンス全体を励ましてくれてる感じでした」。西谷は岡崎をこう評した。 

昨秋のシーズン中のある日、試合形式の練習が終わった後のハドルで、西谷と岡崎が言い合いになったそうだ。「プレーのことで大げんかになって……」と西谷。でも翌日には持ち越さず、また隣に並んでひたすら相手にぶつかっていった。去りゆく主将が、新3回生となる弟分にエールを送る。「スピードがない分、頭を使って、しつこいブロックをやり続けてほしいです。相手のDLにとって、嫌なセンターになってほしい。アイツは自分をしっかり持ってて、熱いものも持ってるし、仲間思いです。1回生から出てるんやから、チームを引っ張っていってほしいと思います」

「さあ、いくで!」の思いが伝わってくるハドルブレイク(72番が西谷、その左隣が岡崎、撮影・篠原大輔)
西谷(72番)と岡崎(70番)で甲南オフェンスの真ん中を支えてきた(撮影・篠原大輔)

生まれ変わったら…… 

甲南は強豪の私立大と比べるとスポーツ推薦枠が少なく、フットボールの未経験者も多い。「しんどい部分もあったんですけど、イチからアメフトを教えながらチームを作っていくのには、甲南でしか経験できない面白さがありました。入れ替え戦でチームを勝たせられなくて悔しいですけど、僕は甲南でアメフトができてよかったです」 

最後に、生まれ変わったらやりたいポジションを西谷に尋ねてみた。「パサータイプのQBですね。めっちゃ楽しそう。OLも楽しいんですけど、次は目立ちたいです」。笑顔が広がった。

西谷(72番)は中学時代、バスケの選手だった(撮影・安本夏望)

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