大学アメフト

神戸大アメフト大可真治、「太れない男」が二つの武器で花開いた 10日に京大戦

OLの壁を突破し、パスラッシュをかける大可(撮影・北川直樹)

アメフト関西学生リーグ1部 最終節

11月10日@大阪・万博記念競技場
神戸大(42敗)vs 京大(33敗)

今シーズン中盤から、神戸大ディフェンスの最前線にいる「ひょろ長い」男が気になり始めた。屈強な男たちが居並ぶDL(ディフェンスライン)にあって、神戸大の55番は異質だ。細い。それでもDLの勲章であるQBサックの数は6試合で6回と、第6節を終えた時点でリーグ2位タイ。大可(おおか)真治(4年、修道)は1110日の「国立大決戦」でも、かつての志望校京大を相手に大暴れしそうだ。

長い腕と速さで勝負

 大可は身長183cmと大きいが、現在の体重は83kgしかない。「いつもコーチに怒られてます」と苦笑いで話す。しかし彼には二つの武器がある。長い腕と速さだ。「気をつけ」の姿勢をすると手の指先がひざの上まで届く。

今シーズン、神戸大ディフェンスの最前線で暴れ回ってきた(撮影・北川直樹)

 DLの中でも、外側に構えるDE(ディフェンスエンド)と呼ばれるポジション。相手オフェンスのプレーが始まると鋭くスタートし、OL(オフェンスライン)に当たって、長い腕を張る。パスならそこからQBに向かってラッシュをかけ、ランならボールキャリアーへ向かう。その一連の動きが、シーズンが深まるにつれて速くなってきた。ラッシュがうまくかからないときは、QBの投げるタイミングに合わせて長い腕を上げ、パスを阻む。

 陸上男子短距離の山縣亮太の出身校としても知られる広島の中高一貫の進学校、修道高校出身だ。野球部でピッチャーをしていた。高3の夏は広島大会の2回戦で崇徳に0-97回コールド負け。大可はこの試合、5番レフトで出て2打数1安打。途中で交代している。

京大を目指したが、センター試験で失敗

 3の春までは理系学部への進学を目指していた。科目としては生物が好きだった。しかし、自分の将来が分からなくなった。「ずっと実験ばっかりやっていくのもなあ……」。先生にお願いして、文系に転じさせてもらった。目指したのは京大だ。しかしセンター試験の点数が悪く、神戸大経営学部だけを受けた。受かった。アメフトをやるつもりなど、さらさらなかった。ただ、経営学科で仲よくなった友だちがアメフトに入ったのに巻き込まれるように入部した。その友だちはもう退部している。だいたい、そんなもんだ。

矢野川ヘッドコーチの評は「大黒柱感はまったくないですけど、いいヤツです」(中央55番が大可、撮影・安本夏望)

オフェンスの最前線で当たるばかりのOLになった。何しろ身長は183cmある。神戸大の首脳陣にしてみれば「食べてトレーニングすれば軽く100kgは超えて、いいOLになるだろう」という見込みがあっただろう。しかし、この男はいくら食べても太らない。太れない。「努力不足もあるんです」と、申し訳なさそうな顔で振り返る。OLというポジション自体は好きだったそうだが、2回生のシーズン限りでDLに転向した。京大の身長197cm132kgの超大型OLだった町野友哉(現・5回生コーチ)にひっかけて、神戸大の仲間内では「町野になれなかった男」と呼ばれているそうだ。

 それ以降も太ろうとはしてきて、昨年の冬には91kgまでいった。しかし、また減ってきて、いまは83kg。ちょっと大きなWR(ワイドレシーバー)といった感じだ。それでも二つの武器を生かすことだけに集中して、最後のシーズンにアメフト選手として花開いた。

今シーズン6試合で六つのQBサックはリーグ2位タイ(撮影・安本夏望)

「アメフトは気持ちのスポーツ」

 神戸大の矢野川源ヘッドコーチに、大可について聞いた。「ただのイジられキャラですよ。大黒柱感はないですね。でも寡黙にコツコツ頑張る、すごくいいヤツです」。4回生の最後を迎えてヘッドコーチにこう言ってもらえる選手は幸せだし、それだけのことをやってきたから、いまの活躍があるのだと思った。

 さあ、京大との「国立決戦」だ。「同じ国立ですし、京大は『神戸にだけは負けん』と思ってくるに違いないです。矢野川ヘッドコーチがいつも言うんです。『アメフトは気持ちのスポーツや』って。京大戦は、ほんとにその部分の勝負になると思います。京大に勝ってトーナメントに進んで、もう一回関学とやりたいです」。大可は表情を引き締めて。こう言った。

 京大に勝てば、甲子園ボウルの西日本代表を決めるトーナメントへ進める可能性が残る。神戸大の「ひょろ長い」DLが、最前線で暴れまくる。

長い両腕を張り、相手のOLを完全にコントロール(撮影・安本夏望)

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