アメフト

関学アメフト吉野大也 仲間のアツい言葉を胸に、2年ぶりのリーグ戦復帰

近大戦でインターセプトからのTDを決め、喜ぶ関学のDB吉野(すべて撮影・北川直樹)

関西学生リーグ1部 第5節

10月13日@神戸・王子スタジアム
関西学院大(5勝)44-7 近畿大(1勝3敗1分)

そこにいるだけで、みんなを笑顔にする。ごくまれに、そんな選手がいる。関学のDB吉野大也(4年、関西学院)がそうだ。チームが最悪の状態のときに2年ぶりのリーグ戦復帰。みんなを笑顔にさせ、ビッグプレーも決めた。

復帰戦でインターセプトからのリターンTD

関学は前節の神戸大戦で苦しみ抜いた。開幕4連勝はしたが、17-15の辛勝だった。スタッフも含めて約60人と大所帯の4回生に、フットボールにすべてをかける覚悟の足りない部員が多すぎる。鳥内秀晃監督らから指摘され、4回生が、そしてチームが変わる最後のチャンスと臨んだ近大戦だった。今シーズン初めてオフェンスの最初のシリーズでタッチダウン(TD)を奪い、37-0で迎えた第3クオーター終盤、吉野が主役となる瞬間が来た。

久々の試合で足をもつれさせながらも、エンドゾーンへたどり着いた

近大の自陣44ydからの第3ダウン10yd、近大の1回生QB清水大和(龍谷大平安)はWR大倉暉眞(てるま、3年、近大付)へスクリーン気味の浮かせたパス。すると吉野が反応よく大倉の前に走り込んでインターセプト。捕った瞬間、前には誰もいない。「これはいける、と思いました」と吉野。44ydのインターセプトリターンTD。足がもつれ、何とかエンドゾーンに転がり込んだ。最後はイマイチだったが、吉野はご満悦だ。「派手に復活できて、よかったです」。サイドラインに戻ると、チームのみんなが満面の笑みで迎えてくれた。「あれが一番うれしかったな」。吉野も満面の笑みで振り返った。

この日の第1クオーター、3度目の関学のディフェンスだった。昨年7月の大けがから復帰した吉野が、2年ぶりにリーグ戦でディフェンスに入った。このときも、ほかのディフェンスメンバーたちがハイタッチで吉野を迎えた。「みんな、僕のけがが重かったのもリハビリが大変やったのも知ってくれてるからやと思います」

昨年7月に大けが、この9月に練習へ合流

4歳から小6までラグビーを楽しんだ。関学の中学部に入ったときに「もうラグビーはええかな」と思ってフットボールを始めた。高等部2年生と3年生のときにクリスマスボウルで勝って高校日本一。そのディフェンスを支えた一人だった。

それでも、大学に上がるにあたって「絶対アメフト」なんて気持ちはなかった。「考えてみたらやることないし、友だちもおらんし」という思考の流れでアメフトを続けることにした。

吉野(中央)には、みんなを笑顔にさせる何かがある

1回生の秋は第2節の甲南大戦から第5節の関大戦までDBのスターターで出た。富士通とのライスボウルにも途中から出た。相手のオフェンスが怖かったが、自信にもなった。2回生になって随時スターターで起用された。甲子園ボウルで日大に負けた。吉野自身も相手のQB林大希(当時1年、大正)のランを止められなかった。3回生の春のシーズン、ポジション内の順列で2番手に落ちた。「夏は頑張ろうかな」と思っていた矢先の出来事だった。

昨年7月24日、マンツーマンのパスカバーの練習中に大けがを負った。「痛いどころじゃなくて、吐き気レベルでした」。病院の先生にも「こんなん初めてや」と言われた。すぐ入院し、手術。1カ月して退院したが、自宅で安静にするしかなかった。「またアメフトがやれるのは、早くて1年後ぐらい」と言われた。昨シーズンの甲子園ボウルもライスボウルもスタンドから眺めていた。想定より治りが遅く、ようやく今年9月に練習へ合流。リーグ第5戦の近大戦からフィールドに立てた。

「俺はお前ともう一回アメフトがしたい」

アメフトができない間のことを尋ねると「とくに何も考えてなかったです。いけるかな? って思ってたぐらいで」と笑い飛ばしたあと、突然アツい話をし始めた。

復帰への力になった言葉があった。今年1月、副将で同じDBの畑中皓貴(4年、滝川)が口にした言葉だ。ミーティングの中で吉野が「最後の秋のシーズンも試合に出るとこまでいかれへんかもしれん」と弱音を吐くと、畑中は言った。「俺はお前と一緒に、もう一回アメフトがしたい」と。2回生のとき、お互いに苦労しながら力を合わせて関学ディフェンスの最後尾を死守してきた。その一体感を、二人とも忘れはしない。「あの畑中の言葉が、めっちゃうれしかった。ここまで来られた原動力かもしれないです」。確かに吉野は近大戦のインターセプトリターンTDのあと、試合中のけがで大事をとってベンチに腰かけていた畑中に向けて、右手の親指を立てて合図した。

最後の最後に笑えるように、吉野(中央)はここからすべてを出しきる

DBの中でもいくつかポジションがあり、吉野は2回生の北川太陽(佼成学園)に続く2番手の立場だ。「太陽は体がデカくてフットボールのセンスもすごい。デカいだけに力任せになって、低いタックルにいけてなかったりするんですけど、チームのためには、太陽が試合に出続けるのが一番いいと思う。僕はスーパーサブになれたらいいです」。そう言って吉野はニヤッと笑った。「でもね、絶対自分が出て活躍したる。それはずっと思ってるんです。今日久々に試合出て、楽しかったし」。ほら、こっちが本音だ。

主将のDL寺岡芳樹(4年、関西学院)も、昨秋のけがから近大戦で戦列復帰。役者はそろいつつある。10月27日には、前節で立命に土をつけた関大と戦う。
チームの正念場でみんなを笑顔にするプレーをやってこそ、関学の4回生だ。

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