大学アメフト

部室全焼の愛媛大アメフト、6日後の敗戦に感謝と涙 27日にシーズン最終戦

愛媛大を引っ張ってきた4年生の選手たち(左から溝渕、石川、竹内、山田、すべて撮影・安本夏望)

部室が全焼し、防具も何もかも灰になった。その6日後、さまざまな支援のおかげで、愛媛大アメリカンフットボール部ボンバーズは中四国学生リーグ1部のトーナメント1回戦に臨んだ。そして、負けた。上を目指す戦いが終わった悔しさだけでなく、さまざまな思いが涙になって、彼ら、彼女らの頰(ほお)を伝った。

全国から支援の申し出が続々と

10月12日、広島広域公園第二球技場。愛媛大は島根大に7-9で敗れた。涙をこらえきれなかった。「勝つことで恩返ししたかった」「支援していただいたみなさんに申し訳ない」。愛媛大の面々は言った。この日の負けで、甲子園ボウルの西日本代表を決めるトーナメントへの道が絶たれた。

10月6日未明、松山市内の愛媛大山越グラウンドのプレハブ2棟が、不審火と見られる火災で全焼した。アメフト部と女子ラクロス部の部室だった。警察からの連絡を受けたアメフト部主将の石川力也(4年、生野)は、わけが分からないまま駆けつけた。目に入ってきたのは、黒く焼け焦げた部室に、灰になったショルダーパッドやヘルメット。ヘルメットにつける鉄製のフェイスガードだけが残っていた。

試合前、愛媛大の選手たちは輪になって思いを口にした

ほかのチームメイトも続々と集まってきたが、もう規制線の外から呆然と見つめるしかなかった。試合は6日後に迫っている。みんな一気に不安に襲われた。アメフト部のOBで中四国学生連盟理事の三瀬雄嗣さんは言う。「みんな面食らってて、どうしたらいいか分からない感じでした。次に向かって動きだそうという雰囲気は、まだなかったですね」

絶望してばかりもいられない。マネージャーがSNSで火災の被害に遭ったことを報告。OB・OGもSNSで支援を募り始めた。石川と山田寛裕(4年、大商大堺)は車で大阪へ。防具の譲渡を申し出てくれた人を訪ねて回った。瞬く間に支援の輪が北海道から九州まで広がった。OB・OGやほかの大学、社会人チームから用具や寄付金が寄せられた。ショルダーパッドは選手26人に対し、50以上も届けられた。8日にはアメフト用品専門店の「QBクラブ」が、大阪から新品のヘルメットを松山まで運んできて提供してくれた。届いた防具の安全性やサイズの確認もしてもらった。間に合った。9日には12日の試合ができる見通しが立った。全員が防具をつけて練習できたのは試合前日だけだったが、最悪の事態は免れた。

愛媛大主将の石川(96番)が島根大の選手をタックル

父は息子をたたえた「ええ仕事したな」

島根大との一戦には約20人のOB・OGや保護者らが駆けつけた。昨年の主将で愛媛大の大学院に通う岡本紘典(こうすけ)さんは後輩たちの様子が気になり、火災直後にも駆けつけた。動揺する後輩たちに「物を集めることだけじゃなくて、試合のことも考えろよ」と伝えたそうだ。「残念な結果だけど、いろんなことを乗り越えて頑張ったと思います」と、後輩たちをねぎらった。主将の石川の父は東京から、母は大阪から駆けつけた。年に1度、必ず応援に来るそうで、今年はこの日を予定していた。母の智香さんには火災のあと、石川からすぐに連絡があった。「心配でどうなるかと思いました」。父の伸吾さんは「今日は絶対に勝ってもらわんと、って思ってました。残念でしたけど、『ええ仕事したな』って言ってやりたいですね」。チームの立て直しに心を砕き、試合では攻守両面で出場。ナイスタックルを決めた息子をたたえた。

27日は今シーズン最終戦。支えてくれた人たちにやりきる姿を見せたい

石川は言った。「忘れられない1週間になりました。全国の方々に支援していただいたり、『頑張れ』と言っていただいて、精神的に救われました。中四国リーグの大学も連絡をくれて、フットボールというスポーツのつながりの深さを感じました。感謝しかないですね」。石川の表情が、やっと和らいだ。

「全国のみなさん、ありがとうございました」。試合後の取材でみんなが口にした。10月27日の高知大との順位決定戦が今シーズン最終戦だ。勝敗じゃない。全国のみなさんからもらった防具を身につけ、最後のプレーの笛が鳴り終わるまでやりきることが、恩返しになる。

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