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連載:OL魂

京大アメフト町野友哉 197cm、132kgの「5回生」、ドイツでNFLのトライアウト挑戦

ここ京大農学部グラウンドで4年間、町野は大文字を見上げて練習してきた(撮影・松尾誠悟)

昨年まで京大アメリカンフットボール部でOL(オフェンスライン)として活躍していた町野友哉(22)が、夢のNFLに挑戦する。ドイツ・ケルンで1019日、20日にある「NFL international combine」に招待された。アメリカの4大プロスポーツのうち、日本選手が誕生していないのはフットボールのNFLだけ。京大の誇る大男が難関に挑む。

日本人初のNFLプレーヤー目指して挑戦

NFL international combine」は2017年から始まった。今年は初めて北米以外の地域から50人を招待。身長197cm、体重132kgの町野にも声がかかり、ドイツへ渡った。40yd走や立ち幅跳び、垂直跳び、フットボールの技能のテストを受ける。昨年は50人中4人が合格した。これを通過すると、来年の1月から3カ月に渡ってアメリカのIMGアカデミーでトレーニング。そこで高評価を受けると、4月から練習生として1年間、NFLのチームに帯同できる。過去2年で8人が練習生となり、うち2人がNFL選手としてロースター入りした。極めて狭き門ではあるが、夢の世界への一番の近道。町野は唯一の日本人選手として、第一関門に臨む。

学生最後の試合となった昨年のリーグ最終戦で関大に勝ち、町野は泣いた(撮影・篠原大輔)

町野は岐阜県大垣市の出身。進学校の大垣北高校では野球部だった。当時から身長は194cmあり、4番でファースト。「まるで外国人の助っ人みたいですよね」と笑う。京大工学部工業化学科に現役で合格し、アメフト部に入った。入部時で195cm90kg。即OLになった。2回生の春から左のタックルでスターターに。大きなけがもなく4回生まで出場し続けた。18年には大学世界選手権の日本代表に選ばれた。いまは「5回生」として大学に在籍し、研究をしながらコーチとして後輩たちを指導している。

京大アメフト部で、高校までの安定志向にサヨナラ

日本の選手で社会人Xリーグのチームを経ずにNFLに挑戦するのは珍しい。昨年11月に京大ギャングスターズを引退したあと、Xリーグの複数のチームから声がかかった。留年が決まっていた町野はまずは就職を考え、就職活動を始めていた。気持ちが変わったのは今年に入ってからだ。「やっぱりアメフトがしたい。続けるならワクワクするようなことがしたい」と、海外挑戦を決めた。2月に考え始め、決断したのは4月。その間は関西学院大出身でNFLヨーロッパ(当時)に参戦経験のある山田晋三さんや、京大前監督の西村大介さんに相談。京大初のプロ野球選手である田中英祐さん(元ロッテ、現在は三井物産勤務)にも会いに行ったりと、さまざまな人と話した。「みなさんポジティブで『おもろいやん』と言ってくれました。たくさんの後押しを受けて、踏み出せました」

昨年の関大戦で相手のLBをブロックし、RBを走らせる町野(77番、撮影・篠原大輔)

今回、NFLから招待を受けられたのは、町野がこの7月、来年から復活するXFLというリーグのSummer Showcase(トライアウト)に参加したことも大きい。XFLのトライアウト参加が決まったのは、わずか1週間前だった。すぐに飛行機やホテルを手配して、3日後には京大の三輪誠司ヘッドコーチとともに渡米。日本ではトップクラスのサイズを誇るが、行っていると周りの選手たちの大男ぶりに圧倒されたという。「向こうでは、少しデカいTE(タイトエンド)くらいでした。OLは体重が140kg150kgというのが普通で、下半身、とくにお尻の大きさが全然違いましたね」。それでも手応えもあった。「自分の武器はスピードとクイックネス。それに若さ。勝負できないわけではないと思いました」。トライアウトを通過し、ドラフトプール入り。だが1015日、16日のドラフトにはかからなかった。

高校時代までは安定志向だった。「楽な方へ、楽な方へと流れてしまってました」と、自身の性格を分析する。それが京大ギャングスターズに入ってから変わった。「打倒関学」「日本一」を掲げるチームに所属し、チャレンジ精神が身についた。「大介さん(西村前監督)の影響も大きいですね。『なんでもやってみろ』と教えられました」と話す。そして、人生をかけた挑戦を決めた。「京大に来て自分は変われた。京大生だから、という固定概念を壊したい。努力次第で変われるところを見せたいです」と、力強く語る。

ワクワクする道へ歩み出した町野(撮影・松尾誠悟)

ノーベル化学賞の吉野さんは学科の先輩

工学部工業化学科では太陽電池の研究をしている。日曜日以外は京都・桂キャンパスの研究室で午前10時から午後6時まで研究の日々。リチウム電池の開発でノーベル化学賞を受賞した吉野彰さん(旭化成名誉フェロー)は、町野の学ぶ工業化学科の前身に当たる石油化学科の出身。この記事の取材をした1010日はノーベル化学賞の発表翌日で、町野は「世界から認められて、すごいと思います。学科出身の先輩ということで誇りに思います」と敬意を表した。22歳の町野も世界へ挑む。「日本人の希望になりたい。大した選手じゃないけど、日本人でもできるんだというのを証明したいです」と、目を輝かせる。

OLという体格がものを言うポジションで、日本選手初のNFL入りを狙う。
でっかい町野が、とてつもなく高い壁に立ち向かおうとしている。

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