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連載:OL魂

日大アメフト足立大成 OLでもRBでも、ただフェニックスを勝たせるために

ボールを託された足立は倒れ際、必死にダイブした(すべて撮影・北川直樹)

アメフトの関東大学リーグ1BIG8の第3節で10月6日、日大が下高井戸のホームグラウンドで駒澤大に48-10と快勝。開幕3連勝とした。この日三つ目のタッチダウン(TD)を挙げた日大のオフェンスシリーズで、背番号65の選手がボールを託され、11ydをゲインした。彼に注目した。

背番号65RB11yd前進

日大の65番は足立大成(3年、知徳)。身長172cm、体重97kg。ちょっと古い言い方かもしれないが、「豆タンク」タイプだ。メンバー表を見ると、登録は「OL」になっている。球技であるフットボールにおいて、基本的にボールを持てないオフェンスラインだ。ただ5人のOLが最前線にセットしてさえいれば、本来OLの選手をRBとして起用できる。

中央やや左に開いた穴を抜けた足立(中央)

前述のプレーは第2クオーター(Q)、日大が14-7でリードしていた状況だった。敵陣45ydから始まったオフェンスで攻撃権を更新し、ゴール前32ydからの第1ダウン10ydQB(クオーターバック)からボールを託された足立は、中央やや左に開いた穴を駆け抜ける。相手のDB(ディフェンスバック)にタックルされたが、簡単には倒されず、巨体を前に投げ出して低空ダイブ。11ydの前進につなげた。一発で攻撃権を更新だ。日大のホームグラウンドに駆けつけたファンが沸いた。この4プレー後、日大はパスによるTDを決めた。

足立は試合終盤にはOLで登場。OL5人の中で左のタックルというポジションを務めた。上背はないが、持ち前の機動力を生かして相手をブロック。味方の走路を切り開き、パスのときはQBを守った。試合後、足立のところへ向かった。

「ナイスランでした」と声をかけると、人なつっこい笑顔が広がった。「大きい穴が開いてたんで、そこを上がりました。11になってタックルされても、引きずって走らないと。今日はそこがちょっと……」と言って、少しだけ表情を曇らせた。今シーズン初めてのボールキャリーだった。自分がボールを持つプレーがコールされたとき、「来たな。やってやろう」と思ったそうだ。

静岡の知徳高校でアメフトを始めた。オフェンスではRB(ランニングバック)、ディフェンスではLB(ラインバッカー)と、両面で試合に出て奮闘した。試合形式の練習である「スクリメージ」が並外れて多いチームだった。毎日3時間ほどかけて、オフェンスとディフェンスで計100プレーはやっていた。一般的には大学でもこの半分ぐらいだ。とくに足立は攻守両面でプレーしていたから、出ずっぱりだ。「あれだけ当たってると、怖さはまったくなくなります。こんなにやってるチームはない、っていうのが自信になってました」。高3の春は関東大会の準決勝まで進んだ。慶應義塾(神奈川)に負け、3位決定戦は日大鶴ケ丘(東京)に負けて4位。秋は関東大会1回戦で早大学院(東京)に負けて引退した。

足立は駒大戦の終盤、OLとして登場した(65番)

兄の背中を追ってフェニックスへ

足立には2学年上に将悟という兄がいる。同じ知徳高のアメフト部から日大に進んだ。QBだった。日大では4番手、5番手の選手だったが、足立にとってはあこがれの兄だった。その兄はいま、知徳高の職員として働き、後輩たちにフットボールを教えている。足立は兄の進んだ日大にもあこがれた。「勝っても淡々として、大騒ぎしないところがカッコいいと思いました」。兄のあとを追って、フェニックスへやってきた。

日大に入ってすぐはLBの練習をしていた。1年生の秋のシーズンの途中にOLになった。いまはOLRBどちらの練習にも入っている。RBの中でも、主に中央付近に突っ込むランを任され、ブロッカー役になることも多いFB(フルバック)だ。「ほんとのことを言えばFBがやりたいんですけど、チームが勝つためならどこでもやります」。足立が柔らかい笑顔で言った。

OLとしては小さいが、小ささを逆手にとって勝負しようと考えている。「OLに入ると、自分より小さいのはいないです。でも、低く当たるのは自分にしかできない。そのメリットを生かして、強いブロックをやっていきたいです」

OLとしては小さいが、小さいからこそできることで勝負する

いよいよ秋のシーズンも後半に入っていく。日大はBIG8で優勝してTOP8への昇格を決め、来シーズンで3年ぶりの大学日本一へ返り咲くことを目標に掲げている。「もう一回日本一になるために、チームをしっかり引っ張っていきたいです。プレーじゃない部分でも引っ張れるようにやっていきます」

 ただひたすらフェニックスの勝利のために。どんな形であれ、足立は体を張り続ける。

OL魂

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