アメフト

日大フェニックスQB林大希、2年間で味わった光と影

日大のQB林は再出発にあたり、背番号を10から1に変更した

練習試合

5月4日@日体大世田谷グラウンド
日大 42-0 日体大

日大アメリカンフットボール部「フェニックス」が新たな一歩を踏み出した。5月4日、関東学生連盟による公式戦出場資格停止処分が3月末で解けてから最初の対外試合に臨み、日体大を圧倒した。フェニックスの再起戦は、ど派手なタッチダウン(TD)で始まった。いきなりのロングパスを決めたのは、2年前の12月、日大を27年ぶりの大学日本一に導く原動力となった男だった。

いきなりのロングパス

日体大の試合開始のキックオフをリターンし、日大の最初のオフェンスシリーズは自陣28yd地点から始まった。QB(クオーターバック)は2017年の年間最優秀選手、林大希(たいき、3年、大正)。センターからのスナップを受けた林は、大きなテークバックから右腕を振り抜いた。大きな弧を描いたボールは、右サイドを全力で駆け上がったWR(ワイドレシーバー)岸澤淳之介(3年、日大豊山)の腕に収まり、72ydのTDパスになった。

日体大戦の最初のプレーで、ロングパスを投げ込む

日大のベンチはお祭り騒ぎ。林は右手の人さし指を立てただけで、妙に冷静にベンチへ戻って来た。「ほんまは、めっちゃうれしかったんですけどね」と、林が笑って振り返る。昨年8月に就任した橋詰功監督(55)は、ハイタッチで林を迎えた。林が言う。「うれしかったです。いままでは、ああいうのできない雰囲気やったんで。いい意味でチームが変わっていってるんかなと思います」。かつて立命館大のオフェンスコーディネーターだった橋詰監督は、夜中まででもやっていた練習を2時間程度にした。その分ミーティングの時間を増やし、選手たちに考えさせ、選手と積極的にコミュニケーションをとっている。

初っぱなにTD狙いのロングパスを投げたことについて、林は「1年ぶりに日大が戻って、一発でとったらかっこいいなあと思ってました」と話し、やんちゃな笑顔になった。

人生の恩師との別れ

昨年5月6日の関西学院大との定期戦から1年。日大フェニックスの面々は激動の日々を過ごし、秋のシーズンがなくなり、関東大学リーグ1部TOP8から1部BIG8へ降格した。
この1年を振り返り、林は「大変でした。大変すぎました。長かったです。4年に感じました」と語る。

タッチダウンを決め、冷静なふりをしてベンチに戻る

1年生の秋、林はリーグ3戦目から背番号10をつけた。代々のエースQBがつけた番号に見合う活躍で、フェニックスを27年ぶりの甲子園ボウル制覇まで押し上げる力になった。

あの1年が「光」なら、2年生の1年は「影」。林を日大に誘ってくれ、「アメフトだけじゃなくて人生の恩師」と慕う長谷川昌泳コーチはチームを去り、秋のシーズンもなくなった。
橋詰監督が就任して新しいチームづくりが始まっても、いろんなことを否定的にとらえてしまう自分がいた。試合がないから、時間だけは恐ろしくあった。林が珍しく本を読もうと思うほどに。そして、この言葉に出会った。

「変化に対応できる人が、いちばん素晴らしい」

これや。林は思った。「いまマイナスだと思ってることが、実はいちばん大事なことかもしれん」。そこからは前向きに、チームのみんなと試行錯誤してきた。

最短での甲子園ボウル制覇を目指して

フェニックスの面々が思い描くのはただ一つ、最短での甲子園ボウル制覇だ。この秋にBIG8で勝ってTOP8との入れ替え戦に勝利。来年の秋にTOP8を制し、東日本代表決定戦にも勝って、甲子園ボウルにたどり着く。そして3年ぶりの学生王者となる。3年生の林には、学生日本一への道がかろうじて残された。

林にとって、フットボーラーとしてのベストパフォーマンスが、1年生の甲子園ボウルだ。パスに出て、ランに切り替える思いきりがよく、また走り自体も鋭かった。関西学院大のディフェンスを切り裂き、ランで113yd、パスで126ydを稼いだ。当たり前のように甲子園ボウル最優秀選手に選ばれた。

日体大との試合後、少年ファンのサインの求めに応じた

林は少し寂しそうな表情で、言った。「あの甲子園ボウルが10割としたら、7割ぐらいしか戻ってないです」。甲子園で勝ったあとのライスボウルで足首をけが。「あれで体のバランスがすべて崩れてしまいました」と林。その後、別の箇所も痛めた。いまは、足に鉛がついているような感じだという。「思ったように走れないし、カットも踏めない」。残りの3割を戻すための試行錯誤を続けているが、10割まで戻らない覚悟も決めている。「だから周りに頼らないといけないんです。自分が活躍できるかどうかはまったく気にしてないし、活躍したいとも思いません。周りのみんなに成長してもらうのがいちばん大事です。勝つために」

WRのエースと一緒に背番号変更

再起戦となった日体大戦を迎えるにあたり、林はWRの林裕嗣(ひろつぐ、3年、佼成学園)と話し合った。林裕嗣は2年生の春から、日大のWRのエース番号にあたる25番をつけていた。日大が関東の最上位リーグ以外で戦うのは史上初。そこにエース番号はふさわしくないんじゃないかという話になった。だからQBの林は10番から1番に、WRの林は25番から11番に変えた。「何でも1番になる、ってことで!!」と、林大希は笑う。

最短での甲子園ボウル制覇について、林は言う。
「いけると思ってます。甲子園で勝って、『俺らは戻ってきたぞ』って言いたいです」

フェニックス(不死鳥)の真価を問われる闘いが始まっている。

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