大学アメフト

最前列の男、「空白の半年」を倍返しだ 関学アメフト今井健

試合のフィールドに戻ってきた関学のDL今井

 K.G.BOWL

4月27日@王子スタジアム
関西学院大 42-0 法政大

ひとりの大男がフィールドに帰ってきた。関学のDL(ディフェンスライン)今井健(たける、4年、長浜)。身長189cm、体重100kg。この春初戦の法政大戦に先発出場すると、長い腕で相手のOL(オフェンスライン)をコントロールし、QB(クオーターバック)に迫った。「まだまだです。もうちょい体重を増やして、4回生としてプレーで引っ張れるようにします」。反省の言葉を語る顔に、充実感も漂った。

単位不足で試合に出られず

昨年の秋シーズン、関学は立命館大との死闘を経て甲子園ボウルに出場。早稲田大に勝ってライスボウルへ進んだ。しかし、今井は1試合も出ていない。防具さえ着けていない。毎試合、スタッフとして観客席でプレー分析の手伝いをしていた。大けがをした訳ではない。
単位不足で、部の規定により試合に出られなかったのだ。

昨夏、春学期の成績が出た。商学部の今井は、このままいくと1年留年しても卒業できないと分かった。本番の秋シーズンは試合に出られないことになった。「情けなかったです。自分のやったことなんで……。甘かったです」。当時のことを語るとき、苦々しい表情になる。

相手のオフェンスラインを下からかちあげる

今井は「アメフトどころ」滋賀県長浜市出身。長浜南中、長浜高で活躍し、関学から声がかかった。2回生のときにDLの2枚目までたどり着き、3回生の秋はスターターとして出るつもりだった。そのチャンスを、自分でなくした。幼いころから自分のアメフト人生を支え、ずっと応援してくれる長浜の人たちを裏切った気持ちにさえなった。

「ほんとにふがいなさしかなくて……」。最初はなかなか気持ちを切り替えられなかったが、そうも言っていられない。練習ではオフェンスの仮想敵のひとりとしてDLに入った。「僕にはオフェンスを強くすることしかできない。そう思ってやりました」。日々、練習台をやり抜いた。

授業は最前列の真ん中の席で

勉強の面では完全に心を入れ替えた。授業を受けるときは、最前列の真ん中の席にどっかりと座った。分からないことがあったら、すぐに質問。質問に行くようになると、先生が自分のことを覚えてくれた。授業の空きコマの間も勉強。アメフトの練習が終わってからも勉強。
秋学期はとれる限りの単位取得に成功し、この春から試合出場を許された。

今井には、その背中で引っ張っていきたい後輩がいる。同じDLの青木勇輝(2年、追手門学院)だ。同じ長浜出身で、かつて長浜南中で一緒にプレーした。ともに189cmの長身。青木は体重が120kgあり、ルーキーだった昨秋のシーズンから、くしくも今井の穴を埋める形で試合出場を果たした。

試合前、同じ滋賀県長浜市出身のDL青木(左)と話す

青木は高3のとき、関学のほか立命館からも勧誘を受けていた。それを知った今井は「ぜひ関学に来てくれ」と声をかけた。「一緒にやりたかったんで、説得しました」。今井のその思いは、この日かなった。ともにDLとして法大戦のスターターに名を連ねた。

プレーで引っ張る4回生になる

今井は言う。「4回生としていろんな役割がある中で、僕はプレーで引っ張るDLになりたいと思ってます。手本になるように心がけたいです。プレーを予想して、判断して、いいヒットをして、タックルまで。すべてにおいて手本になれるようにしたいです」。

アメフトではディフェンスの最前線に立ち、授業は最前列に座る。
最前列の男、今井健。昨年の「空白の半年」を倍返しにするため、戦い抜く。

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