大学アメフト

「関学のQBとは」 重責を担ってきた男たちの思い(下)

社会人XリーグのLIXILでプレーする加藤翔平さん(右)が遠投を披露

昨年で73回目を迎えた甲子園ボウルに出場すること52回。日本のアメリカンフットボール界において、関西学院大学ファイターズの存在感は別格だ。そのチームの勝敗を左右するQB(クオーターバック)ともなれば、日本でアメフトに関わる全員から注目を受ける。

4月13日、神戸市内で関西学連主催のQBクリニックがあった。そこに指導役として、関学の歴代QBのみなさんが集結した。最年長は元監督の武田建さん(87)。最年少は2016年の甲子園ボウルでMVPに輝いた伊豆充浩さん(24)。

みなさんにアンケート記入をお願いした。問いはただ一つ、「関学のQBとは」。

武田さんはその答えとして、私に「関学アメリカンフットボールと私」という自筆の冊子をくださった。ほかの元QBたちは、それぞれの受け止め方、それぞれの思いを記してくれた。2回に分け、年代順に21人の回答を掲載します。前編に続き、後編の6人です。

前編はこちら

■2008年度卒 幸田謙二郎さん

私は4年間ずっと控えQBで、スターターで1試合を任されたこともなく、試合終了間際の数分間プレーすることがほとんどでしたので、関学のエースQBからはかけ離れた立ち位置でしたが、小野さんや諸先輩方に指導を頂きながら、関学のエースQBとはどんなものかを感じ取ることができました。

まず関学ファイターズのQBとは、『常に勝ち続けなければいけないチーム』の軸であり、『先を見据えて冷静に判断すること』ができる人物だと思います。

プレー面で勝つこと、試合中に冷静であることは当たり前で、それ以上に、チームの行く先を見据えた行動ができなければいけないと、小野さんや先輩方を見て思いました。
その背景にはやはり小野さんの存在があります。

特に小野さんとの一番の思い出は、3回生の終盤にスカウトチーム行きを言われたことです。その時、私の同学年には加納がおり、下級生にも浅海、加藤、糟谷がいました。4回生のQB2人がレギュラーを争うのでは後輩が育たない。つまり関学が『勝ち続けるチーム』であり続けるには、後輩に経験を積ませることが大事だという小野さんの判断でした。

正直すぐに納得はできず悔しさがありました。しかし『勝ち続けるチーム』を裏方で支えることもチームに貢献できることだと思い、スカウトチームに行きました。

4回生のシーズンが始まり、試合に出ることがなかったため、もう選手を辞め、分析スタッフにいくことを決意し、小野さんに伝えました。しかし、小野さんはそれに反対で、この時すでに先を見据えており、「レギュラー3人が全員怪我した時にはすぐ行けるように準備しておくように」とだけ私に伝えました。私は3人も怪我するわけがないと半信半疑でしたが、小野さんを信じ準備していました。

すると、秋シーズン中に本当に3人怪我をし、私に出番が回ってきました。そこまで小野さんが先を見込んでいたのか、私にはその判断ができませんでした。つい気持ちや直感で動いてしまいがちなことが社会に出てからもある中、『冷静に判断すること』の重要性を教えて頂いたと思います。関学ファイターズで学んだこと、これからの人生に活かしていきたいと思います。

幸田謙二郎さん(左)

■2009年度卒 浅海克豪さん

関学のQBが特別な存在だと思って現役時は過ごしたことはありませんでした。卒業して社会人フットボールで練習をしたり、社会に出て他校のアメフト経験者と話したりして、関学のQBを特別な感じで見てもらっていると感じました。

今改めて現役時代を考えてみると、FIGHTERSというチームが、監督、コーチ、先輩方を含め、アメフトを真剣に考えて、日本一を本気で目指す集団という環境であったからこそ特別な存在に自分を成長させてもらったと思っています。

先輩や、後輩のQBを客観的にみてみるとメンタルが強い。失敗しても切り替えてプレーできる。ここぞというところでパスやスクランブルを決める。そういうイメージが強いです。私の現役時代のQBの先輩、後輩には三原さん、加納さん、幸田さん、加藤、糟谷、畑がいましたが、恵まれた環境でできたことに改めて感謝しています。

最後に。関学のQBは、このチームを必ず勝利に導くという気持ちが誰よりも強い、という思いを持ってます。

浅海克豪さん

■2010年度卒 加藤翔平さん

日本一への責任や期待を一番背負うポジションであり、そのプレッシャーや期待を力に変えてフィールドに立ち続けなければいけないポジションだと思っています。

現役当時、どんな状況でも仲間から信頼され、任される人間になるために、日々の言動、立ち居振る舞いは常に「関学ファイターズのQBとして相応しいのか」ということを自答しながら行動してました。それは自分自身がエースQBとしての責任を果たすために、日本一になるために心がけていたことでもあります。

それは誰に言われるではなく、私自身も下級生時に上級生(三原さんや加納さん、幸田さん)の練習への姿勢や日々の取り組みから学んだことでもあります。

加藤翔平さん(中央)

■2011年度卒 糟谷啓二郎さん

オフェンスのリーダーとして重責を担うことは当然と考え、敢えてポジションとしての特性にフォーカスを当てますと、他大学のQBにくらべて圧倒的に蓄積された知識と経験と伝統を受け継いでいると思います。

関学のQBはスローイング技術について言葉で噛み砕いて論理的に教えられます。そのノウハウが世代毎に脈々と引き継がれていると思います。

また勝つ為に必要なマインドも普段の練習や、OBの方々の実体験を基にした話などから鍛え上げられていると思います。また、今回のようなクリニックにも大勢で集まれる結束力もあり、好循環が続いていると思います。

糟谷啓二郎さん

■2012年度卒 遠藤洋紀さん

高い技術はさることながら、先輩が築いてきた歴史、勝って当たり前というプレッシャーを背負いながらも、物怖じしない精神力があり、他の10人の力を最大限に引き出せるQBが関学のQBだと思います。他の大学にはない、異様なプレッシャーが関学のQBにはあります。これは、エースQBだろうが、入りたての1年生QBだろうが、関学のQBの看板を背負う以上は必ずつきまとうプレッシャーです。

私が現役のときはスカウトチームにまわっており、試合に出場する機会は少なかったものの、引退して、社会人になってみると、改めて世間からの関学のQBへの注目度の高さを知りました。

関学の強さは歴史にありとはまさにこの事だと思います。私が現役のときはOBの方々、ファンの方々に支えがあってアメフトを続ける事ができました。今度は私がOBとして、またファイターズのファンとして、ファイターズの力に少しでもなれるよう応援していきたいと思います。

遠藤洋紀さん

■2016年度卒 伊豆充浩さん

日本一のQBのレベルを示す役割がある立場だと思います。理由としては二つあります。

一つ目は、私が3年生時にリーグ最終戦で立命館大学に負けた経験からです。立命館大学に負けた時、様々なアメフト関係者の方々からの励ましや、ありがたいご指摘を受けることがありました。これだけ多くの日本のアメフト関係者の方に見られ、期待されている立場なのだと身をもって実感しました。その立場の人間は、見られている立場を理解しレベルの高いプレーをし続けなければいけないと思います。

二つ目は大学卒業後、関学アメフト部以外のチームに訪問させていただいた経験からです。自身が想像していた以上に関学ファイターズのQBは見本にされていると感じました。また、関学ファイターズは恵まれた環境であったとも感じました。

以上二つの理由から関学ファイターズのQBは日本一のレベルを示す役割があると思います。他チームに模範にされるようなプレーをすることで、少しは日本アメフト界の発展につながると思います。

ただ、現役時代は「立命館大学に勝ち、日本一になること」だけを考えていました。引退した今だからこそ感じることでもあります。現役の皆様には、ライバルに勝つために負けることへの覚悟も決められるぐらい準備をやり切って、試合を迎えてほしいと思います。

伊豆充浩さん

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