アメフト

関学の歴代QBが集結、大学生にクリニック

愛媛大の竹内は関学元監督の武田さんと話し込んでいた

アメリカンフットボールの関西学生連盟が主催したQB(クオーターバック)クリニックが4月13日、3年ぶりに神戸市内で開催された。関西学院大学の歴代QBが集まり、関西学生リーグの2、3部に所属する大学のQBたちに、座学と実技の二本立てで教え込んだ。

63ページにわたる充実資料

まずは午前10時からの座学。講師役は関学ファイターズのディレクターを務める小野宏さん。かつて自らも関学のQBで、長らくコーチとしてQBの指導を続けてきた。「パスプレーを成功させる方法~QBに求められる技能を中心に~」と題したパワーポイント63ページにわたる資料を使って、関学で実際に教えていることを披露していった。詳しくは書けない部分もあるが、この資料を見たときにフットボール経験者の筆者は「すばらしいクリニックになる」と確信した。

午前中の座学で語り尽くした小野ディレクター

小野さんは「ひじを上げろ、は迷信です」と強調した。スローイングのときにひじを高く上げて投げ下ろせと教える指導者も多いが、小野さんは関学のエースQB奥野耕世(3年、関西学院)の昨秋のプレー映像を見せながら語った。ボールを高く掲げず、頭の少し上ぐらいの位置からポイッと投げる奥野の動きを説明し、「ボールを引いて、出してくる。奥野はいちばん短い動作で、体の回転だけで投げてます。ボールに力が伝わりやすいし、コントロールもつきます」

約2時間、ぶっ通しで続いた座学の最後は質問コーナー。なかなか手を挙げない参加者に対して、小野さんは言った。「QBというのはリーダーにならざるを得ないポジションです。大事な場面でパスを決めないといけないってときに、受け身になったら絶対にうまくいかない。そのときにドキドキする気持ちと、質問するのにドキドキする気持ちは連動してるんです。QBってのは『俺が勝たせる』と、全部背負って初めて充実してきます。受け身でやるにはつらすぎるポジションです。QBには、こういうときに思い切って質問できる人になってほしいと思います」

歴代QBが実技をレクチャー

午後2時からは王子スタジアムで実技の指導。小野さんを含む関学の歴代QBが顔をそろえた。1953年度卒で関学の教授、学長、理事長を務めた元監督の武田建さんから、2016年度卒の甲子園ボウルMVPに輝いた伊豆充浩さんまで、22人が集まった。

1985年の甲子園ボウルMVPに輝いた芝川龍平さんも熱心に指導

ひざをついてのキャッチボールに始まり、少しずつ距離を長くしての遠投まで。学生たちが投げるたび、関学の元QBのみなさんがこと細かにアドバイスしていた。

面白かったのは全速力でまっすぐ15ydほど走って、パスを投げ込む練習だ。拡声機を持った小野さんは言った。「これを1カ月やってると、人に向かって投げたときに、思ったところにいきます。だまされたと思って、自分の大学に戻って1カ月やってみてください。大事なのは加減せずに、フルダッシュすることです」

実技は約2時間半に渡り、充実の内容だった。

2008年のライスボウルで500yd以上をパスで稼いだ三原雄太さん(左)は、柔らかい関西弁で丁寧に教えていた

愛媛大からやってきて、憶せず質問レジェンドの言葉を胸に

この日、関西学生リーグ以外から参加したQBがいた。中四国リーグ所属の愛媛大学ボンバーズからやってきた竹内凉(4年、小野田)だ。関学の元QBのみなさんに教えてもらえると聞いて、リーグの枠を超えて申し込んだという。「いろんな大学の選手が来るから、刺激になったらいいと思いました。今日まで知らなかったQBのみんなと同じ空間にいられて、頑張ろうと思いました」と話した。もちろんQBの技術論や具体的にパスをどう決めるという話もためになったが、竹内の心に残ったのは、レジェンド中のレジェンドの言葉だった。

竹内は練習の合間に武田建さんに話しかけられた。話し込む中で、愛媛大のオフェンスキャプテンとして質問した。「下級生を育てるにはどうしたらいいんですか? 」 武田さんは言った。「とにかくほめてあげることですな。関学では昔からそうしてきたんです」と。竹内は「いいこと聞きました。来たかいがありました」と言って、やんちゃな笑顔を見せた。やっぱり、憶せず質問すれば、いいことがあった。

最後に全参加者で記念撮影

この日学んだことを生かして成長し、秋のリーグ戦で輝くのは誰か。いまから楽しみだ。

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