日大フェニックスの1年生WR山下宗馬「試合に出たらタッチダウンしないと」
関東大学リーグ1部BIG8 第2節
9月21日@神奈川・富士通スタジアム川崎
日大(2勝)31-7 神奈川大(1勝1敗)
アメリカンフットボールの関東大学リーグ1部BIG8の第2節で、日大と神奈川大が対戦し、日大が開幕2連勝した。思わぬ苦戦を強いられる場面もあったが、下級生の活躍は収穫だった。
橋詰監督「期待の新人です」
第1クオーター(Q)、日大はエースQB林大希(3年、大正)の率いるオフェンスがドライブし、RB柴田健人(2年、立命館守山)が先制タッチダウン(TD)を決めた。7-0。日大は神奈川大の攻撃を抑えると、次のシリーズもランで攻め込み、フィールドゴール(FG)を決めて10-0。第2クオーター(Q)にはRB川上理宇(3年、佼成学園)がTDを決めて17-0とした。しかし、神奈川大が次のオフェンスシリーズでロングドライブ。QB船戸怜郎(4年、敬愛学園)が主将の坂本 アントニー マウネディ(4年、横浜立野)らレシーバー陣に冷静にパスを決めてTD。坂本はダイビングキャッチを見せ、観客席をどよめかせた。17-7で試合を折り返した。日大は第2Q終盤から、林に替えてQBに室井正道(4年、大阪産大附)を起用。第3QにWR大谷空渡(2年、駒場学園)へのTDパスで加点。さらに第4Qに再び登場した林が、WR中野直樹(4年、同)へのTDパスを通して試合を締めくくった。31-7と日大の快勝だったが、神奈川大オフェンスのドライブ力も光った試合だった。
この試合、日大はWRのエース格である林裕嗣(3年、佼成学園)と小倉豪(4年、大阪産大附)が欠場したが、中野や大谷といった2番手以降のWRが活躍。BIG8では群を抜く選手層の厚さを見せつけた格好となった。日大のレシーバー陣にあってTDこそなかったが、ナイスキャッチを披露したのがルーキーの山下宗馬(そうま、箕面自由学園)だった。山下はオフェンスのスターターでは唯一の1年生。初戦の青山学院大戦でも先発し、キャッチにブロックにといい働きをしていた。橋詰監督も山下について「期待の新人です」と評した。
「日大に来てよかったです」
山下は大阪出身。小学1年生のときにチェスナットリーグの「千里ファイティングビー」でフットボールを始め、一貫してWRをプレーしてきた。箕面自由学園高では3年生で副将を務め、エースWRとして活躍。関西学院大に進学したWR糸川幹人とともにゴールデンベアーズを引っ張った。突出したサイズも身体能力も技術もないが、ボールに対する集中力と、強いハートが武器だ。今年1月にはインターナショナルボウルのU18日本選抜の一員として、U17アメリカ選抜との死闘(24-28で負け)も経験した。
当初は関西の大学へ進もうと考えていた。思うように進学先が決まらずにいたところ、高校のコーチのつてで、日大の橋詰功監督から誘いをもらった。昨年の秋ごろのことだった。日大については再建が進んでいるのを知っていたし、QB林が率いるオフェンスを2017年の甲子園ボウルで見ていた。WRとしてやりがいがあると思い、日大進学を決めた。
日大には現在、箕面自由学園高出身者は山下以外にはいない。不安もあったが「レシーバーの先輩はみなさんよく教えてくれて、優しいです。QBの先輩も、ただ指示をするのではなく、パスユニットとして僕の意見も聞きながら一緒に考えてくれるので、とてもやりやすい。日大に来てよかったです」と、笑顔で語った。
1年生らしからぬ冷静さと確実性
QB林は山下について「自分に何ができて何ができないのか理解してて、向上心が抜群です。スピードはないんですけど、ボールへの執着心がすごい」と話し、一目置いているという。初戦の青学戦で林が独走TDを決めたあと、真っ先に山下のところへ駆け寄って「ナイスブロック!」と声をかけたのが印象的だった。
神奈川大戦で山下のパスキャッチは3回。TDにつながるシリーズでの19ydと21ydのパスキャッチが光った。1年生らしからぬ冷静で確実なプレーぶりだった。
山下は「1年生で出してもらってるので、とにかく一生懸命プレーすることを大事にしてます。今日も飛んできたボールを全部取れたのはよかったですけど、レシーバーという点を取るポジションで出てる以上は、TDを取らないといけないんです。青学戦で89点も取ってるのに、自分は1本もTDを取れなかった。まだまだです」。反省しきりだった。
春の法政大戦にも出ていて、3キャッチを記録した。TOP8上位の法政はプレーのスピードが速くて驚いたという。「自分は大学生のレベルにまだまだ足りてない。だから、いつも相手が上手(うわて)だと考えてプレーしてます。試合のたびに、自分が成長できてるのも感じます。ただ、先輩のけがで試合に出してもらってる状況なので、もっと頑張っていい結果を出して来年につなげたいです」
山下宗馬は向上心の塊だ。どん底から復活していくフェニックスとともに、少しずつ羽ばたいていく。