アメフト

立教アメフト岩月朗 高3のけがで選手を断念、戦術分析でチームを引っ張る4years.

日体大戦の試合中、ベンチで笑顔をのぞかせる岩月(すべて撮影・北川直樹)

関東大学リーグ1部TOP8 第3節

9月28日@東京・駒沢第二球技場
立教大(2勝1敗)24-7 日体大(3敗)

アメリカンフットボールの関東大学リーグ1部TOP8の第3節で、立教大が日体大を24-7で下し、通算2勝1敗とした。立教のスペシャルチームを裏で支える4年生に注目した。

赤シャツの男はスペシャルチーム担当のAS

試合が動いたのは第2クオーター(Q)、立教のQB若狭彰吾(4年、立教新座)からWR渡邊大輔(同、立教池袋)へのパスが決まり、一気に49ydをゲインした。このチャンスにエースRB荒竹悠大(同、立教新座)のランでゴール前へ進み、最後は若狭がボールを持ってエンドゾーンに押し込んだ。立教が7-0とリードして後半に入ると、立教オフェンスが機能し始める。荒竹のランとWR飯田尚樹(同、同)へのパスでTD。日体大は立教DL仲瀬正基(同、高槻)や丸山剛史(同、立教新座)らのアグレッシブなディフェンスを前に、思うように攻められない。第4QにQB中村享史(3年、日大三)からWR久保村光(同、厚木東)へのTDパスで7点を返したが、立教がフィールドゴール(FG)を決め、24-7で勝った。

岩月の担当するキッキングゲームで大活躍だったパンターの吉田

試合中、立教のサイドラインには、ひときわ目立つ赤いシャツを着た男がいた。ヘッドセットをつけ、資料に目をやりながら精力的にチームエリアを歩き回り、選手に指示を出す。相手の戦術分析を担当するアナライジングスタッフ(AS)の岩月朗(あきら、4年、立教新座)だ。スタッフの中で真っ赤なシャツを着ているのは彼だけ。「メンバーを集合させるときに目立ちやすいから」と言って笑った。

岩月がASとして受け持っているのはキッキングゲームのスペシャルチームだ。キックオフとパントそれぞれのカバーチームとリターンチーム、そしてFGの戦術を担当している。試合前に対戦チームの映像を分析し、傾向や弱点を見つけ出して対策を練る。試合中に流れを読んで作戦を決めるのが主な仕事だ。昨シーズンまでは社会人コーチと一緒にやってきたが、今シーズンは岩月がスペシャルチームを率いている。岩月はキッキングゲームの面白さについて「一発でゲームをひっくり返すようなプレーが生まれるところ」と表現する。たとえオフェンスやディフェンスで思うような展開にならない場合でも、キッキングゲームで好プレーが一つ出るだけで、試合展開をガラッと変えられる。キッキングは、決してオフェンスとディフェンスの「つなぎ目」などではなく、試合の中で非常に重要な部分を占める。実際にこの試合でも、序盤の拮抗した展開の中で、キッキングによって立教にアドバンテージが生まれた。パンターを務める吉田孟弘(4年、桐光学園)が50yd級のパントを蹴り続けて蹴り、相手のオフェンス開始地点を遠ざけた。スペシャルチームの活躍は立教の今シーズン2勝目に大きく貢献した。

試合中はベンチ内を動き回っている

全員立教アメフトの岩月4兄弟

岩月は、4人兄弟の三男。4兄弟はみな立教大学ラッシャーズに所属してきた。2歳ずつ離れた兄が2人おり、3歳下の弟である要(立教新座)は1年生でRBをしている。まさに「ラッシャーズファミリー」だ。岩月はまず小学校のフラッグフットボールチームでプレーし、立教新座高に進学すると、迷うことなくアメフト部に入部した。一貫してDL(ディフェンスライン)としてプレーしていたが、頭部のけがのために、高3の秋のシーズンを前にヘルメットを置いた。

フィールド上の仲間たちに目を光らせる

体を動かすことが好きだった岩月は、別の競技でスポーツを続けることも考え、大学に入学するとさまざまなサークルの話も聞いた。しかし、アメフトほどアツくなれそうなものは見つからなかった。そして、大学でもアメフト部に入る道を選んだ。選手として活躍できないのならASだ、と裏方の道を迷わずに進んだ。高校生のころはアメフトの戦術について深く立ち入ることはなかったが、先輩やコーチのもとで熱心に学び、理解を深めた。選手として活躍する以外にも、チームの頭脳としてチームを引っ張る楽しさを知った。

下級生のころは、プレーヤーでない自分が試合に出ている先輩に意見することへ遠慮もあった。しかし前主将の森上衛(現・東京ガス)が率いたチームから雰囲気が変わった。試合に出るかどうか、選手であるかどうかに関係なく、チームを前に進ませるために誰でも発言していこう、と。そんな中で岩月自身も変わっていった。昨シーズン、森上は言っていた。「ASの岩月が前に出てきてくれるようになったのが、チームとして大きいです」

「4年生はもっともっとやりきらないと」

岩月は今シーズン、ASでありながら副将も務める。「もう、1試合も負けられない。チーム全員がそのことを本気で意識して、練習からやれるか。とくに4年は頑張ってる下級生のためにも、もっともっとやりきらないといけないんです。」。アツい。

ASとしてチームを引っ張る。岩月のラストシーズンがどんどんアツくなる

試合前夜は緊張し、寝つけなくなることもしょっちゅうだという。そんなときは練習や試合の映像を見返したり、新歓向けの映像を見て、気持ちを盛り上げる。岩月は24時間アメフト漬けの生活を送っている。

立教大ラッシャーズにはいま、学生のASが9人いる。多様性のスポーツであるアメフトにとって、フィールドに出て戦う選手だけではなく、戦術分析を専門とするスタッフをはじめ、トレーナー、マネージャーら裏方の活躍は非常に重要だ。アメフト観戦の際はぜひ、ベンチや、ヤグラの上も見てほしい。そこには選手たちと同じハートで戦う仲間がいる。

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