アメフト

関大の1回生QB濱口真行がリーグ戦初タッチダウン 「いつか菅田将暉さんに会いたい」

早くもリーグ戦で躍動している関大のルーキーQB濱口(すべて撮影・安本夏望)

関西学生リーグ1部 第4節

9月29日@神戸・王子スタジアム
関西大(3勝1敗)40-14 龍谷大(4敗)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ部の第4節で、関西大が龍谷大に快勝した。第4クオーター(Q)には楽しみな1回生QBが登場し、リーグ戦初タッチダウン(TD)を決めた。

背番号27のQBが29ydのナイスラン

関大が33-14とリードした第4Q5分すぎ、関大は背番号27のQBをフィールドに送り込んだ。濱口真行(はまぐち・まさゆき、1年、池田)だ。身長174cm、体重72kg。一般的なサイズのルーキーQBがどんなプレーを見せるのか、気になった。

敵陣48ydからの第1ダウン10ydはRBに託してノーゲイン。第2ダウンはセンターのスナップが頭を越えて9ydのロス。「ああ、やっぱり1回生やな」。そんな中年ライターの通り一遍の見方を、濱口は見事に覆してくれた。第3ダウン19ydは左へ横パスのフェイクをしてからのQBドロー。濱口は中央から左へ、5人のタックルをかわしながら駆けた。29ydのゲイン。最小限のカットで小気味よくタックルをかわしていく姿に引き込まれた。

龍谷大戦は5回のパスで3回成功、タッチダウンと被インターセプトが一つずつ

続いて敵陣28ydからの第1ダウン。左から中に切り込んだWRへパスを決め、12ydのゲイン。これが濱口が初めてリーグ戦で決めたパスになった。乗ってきた。ところがフットボールは甘くない。次の敵陣16ydからの第1ダウンで投げたパスを相手にはたかれ、インターセプトを食らった。これもリーグ戦初の被インターセプトになった。

冷静に投げ込んだリーグ戦初のタッチダウンパス

次の攻撃シリーズでも相手のLBの動きが見えず、思いっきり相手の胸に投げ込んでしまったが、ラッキーにも落としてくれた。そしてゴール前9ydからの第2ダウンで、エンドゾーン左奥に走り込んだWR一条三四郎(4年、東山)へ冷静にTDパスを通した。一気に緊張が解け、ガッツポーズ。リーグ戦出場3試合目でセンスの光る走りを披露し、初めてのパスを通し、初の被インターセプトもあったが、初のTDパスまで決めてみせた。

試合後、濱口に話を聞く前に、関大の中村敏英ヘッドコーチに濱口評をもらった。
「ひょうひょうとして動じないところがあります。パスの感覚がオービックの菅原(俊)に近いものを持ってると思います。このタイミングでここが空く、という感覚ですよね。それと危機回避能力が高いQBです」。相当期待しているのが伝わってきた。

パスからのスクランブルでも大暴れしそうだ

濱口に話を聞くと、ヘッドコーチの評とは違う一面をのぞかせた。「最初にスナップが捕れなくてメンタルがやばかったんですけど、僕は考え込むと落ち込むタイプなので、もう考えないようにしました」。29ydゲインしたランはかなり練習してきたのかと思いきや、「急にやらされたんですけど、偶然走れました」と言って笑った。初のTDパスに関しては「ボールはめっちゃ悪かったんですけど、捕ってくれてよかったです」と振り返った。

アメフトで大学へ行くか、受験を頑張って国公立か

中学まで野球をやってきた濱口だったが、大阪府立池田高校に入学し、アメフト部の体験入部に行ってみた。そのときあった試合で、先輩QBの走りに目を奪われた。いま関西学院大の3回生でWRをしている木下健太。「プレーが崩れたときに自分で持っていってTDをとったんです。一気にあこがれました」。その試合では先輩DBのインターセプトリターンTDもあって、DBにも心が動いた。QB志望の同級生がひとりいたので、濱口はDBを希望した。しかし1学年30人以上と人数の多い代だったこともあり、「QBがもうひとりいた方がいい」ということでQBになった。

私立の強豪にはね返されてばかりで、チームとしてはなかなか勝ち上がれなかったが、高2の冬に関大から声がかかった。「アメフトで大学行くか、受験頑張って国公立の大学行くか、どっちかやと思ってました」と濱口。国公立大学を受けるべく勉強を頑張ってみたが、手応えを得られず、継続して声をかけてくれていた関大にスポーツ推薦で進むことにした。

いきなり秋のリーグ戦に出られるとは夢にも思っていなかった。「でも夏合宿ぐらいから『もしかしたら』というのはありました」。着実にステップアップしつつある。次節の10月12日はいよいよ立命館大に挑む。「もし出たら、やってきたことを信じて、仲間を信じて、がむしゃらにやりたいです。やる前からネガティブなことは考えんようにして、自分から『やろうやろう』とみんなに伝えるのを意識してやりたいです」。QB魂を一気に語った。

リーグ戦初のタッチダウンパスを決めてガッツポーズ。絵になる

菅田さんも池田高校のQBだった

濱口がこの競技を始めた府立池田高校のアメフト部といえば、いまをときめく俳優で歌手の菅田将暉(すだ・まさき)さん(26)がかつて所属していたことで知られている。東京で俳優の道を歩むために退学するまで、濱口と同じQBだった。いまも部室には菅田さんの名前も並んだメンバー表が置いてあるという。「だいぶ前に練習に来てくれたことがあるらしいんですけど、僕は会ったことないんです」と濱口。私が「めっちゃすごいQBになって、いつか会えたらいいね」と言うと、「はい、会いたいです!」と、目を輝かせて返した。

菅田さんに会える日を夢見て、濱口は名QBへの道を一歩ずつ進んでいく。

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