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連載:OL魂

特集:第74回甲子園ボウル

神戸大の最重量男・堀本流石 おもろい先輩に教わった、さすがのブロックで関学に挑む

神戸大OLの左端にそびえ立つ男、それが堀本だ(撮影・安本夏望)

球技なのに基本的にはボールにさわれない。オフェンスを前に進めるため、ただひたすらにぶつかり続ける大男たちがいる。自己犠牲のポジションとも言えるOL(オフェンスライン)の生きざまについて書き尽くす「OL魂」。11月24日に関西学院大との大一番を控えた神戸大レイバンズから、77番のOL堀本流石(さすが、3年、金光大阪)を紹介します。

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右利きのQBの背中を守る左T

堀本はオフェンスの最前列に5人並ぶOLの中でも、オフェンスから見て左端に位置する左タックル(T)。右利きのエースQB是澤太朗(4年、東海)がパスを投げるとき、左は「ブラインドサイド」にあたる。QBにとって見えにくいサイドのラッシュを止めるという重責を担う。昨年から左端が堀本の定位置だ。「左のTをやるのは怖さがある」と言いつつ、体を張ってQBを守っている。

身長179cm、体重120kgで、神戸大のOLでは最重量だ。OLというポジションには「重いことが正義」という側面があり、誰もが太ろうとする。あるいは太らされる。体重を増やすのに苦労する選手も多いが、堀本は入学当初から110kgあった。高校では柔道の100kg超級の選手だった。太ももの裏側を使って投げる「内股」が得意技だった。100kg超級は選手が少ないこともあり、大阪府の大会でも上位に入ったことがある。「柔道の要領で手をうまいこと使って、ホールディング(反則)にならないように相手を引き込むのは得意です」。OLだからこそ、柔道の経験が生かされている。

苦しんで中京大に勝ったあと、観客席を見つめる(撮影・安本夏望)

神戸大に入った直後、大男はアメフト部の「獲物」と化し、激しい勧誘を受けた。「この人たちからは逃げられないと思いました。僕自身アメフトをやりたいとか、勝ちたいという感情はなかった」と苦笑い。「何もしないままだと生活習慣病にでもなりそうと思ったので」と、巨漢らしい理由でアメフトを始めた。当然、割り当てられるポジションはラインだと覚悟していたが、「どちらかと言えばDL(ディフェンスライン)がよかった」と笑う。DLだとプレーを止めれば出番がすぐ終わるが、OLだとうまくいけばいくほどオフェンスが続き、体力的にキツくなるからだ。

「グッっていって、バンっていけ」という指導

地味で痛いだけのOLを続けられているのは「先輩たちが好きだから」だそうだ。2学年上にあたる昨年の4回生には、とくにお世話になった。毎日のようにブロックの練習やパスプロテクションの練習に付き合ってもらった。今年1月の「OL魂」に登場した昨年の主将、藤川凌(りょう、豊中)もその一人。藤川はOLとDLの攻守両面でとしても出場し、攻守の最前線を張り続けた男だ。「藤川さんってプレーが激しくて怖いイメージやと思うんですけど、実はポンコツでよくイジってました」と、満面の笑みで教えてくれた。「とにかく口下手なんです。ブロックを教えるときも『グッっていって、バンっていけ』ですから。何を言ってるのか分からないんです。よく藤川さんのモノマネをしました」

柔道の技術も駆使してDLに立ち向かう(撮影・松尾誠悟)

そんな堀本がこの夏、体調を崩した。秋のシーズン序盤までの2カ月はチームを離れていた。第2節の関大戦からチームに合流したが、11年ぶりの関大戦勝利はサイドラインから見つめた。「今シーズンは試合にもう出られないかな」と思っていたが、チーム事情もあって第3節の立命館大戦から戦列復帰。「試合に出て、休んだ分を返していきたい」。そんな思いを持っていま、フィールドに立つ。

目立たないところで土台になるのがいい

堀本を取材しようと思った最初のきっかけは、神戸大のスターター表にあった「流石」という名前に引き寄せられたからだ。「流れる石のようにそつなく生きてほしい」との願いが込められているそうだ。チームのみんなからはもちろん「さすが」と呼ばれている。ローマ字表記にすると「Sasuga.HORIMOTO」となり、何となく褒められている感じが、うれしい。

OLは目立たないところがいい、と堀本(撮影・安本夏望)

OLとして生きて3年目。このポジションに愛着がわいている。「OLは落ち着いてるとこが好きです。試合が終わってから『あー勝ったんや』って思います。僕にしてみれば目立たないところがいいんです。黙々と見えないところで土台になるのが気に入ってます」。さすが堀本、よく言った。これぞOL魂である。

神戸大(関西3位)の悲願である甲子園ボウル初出場まで、あと2勝。11月24日の西日本代表決定トーナメント準決勝では、昨年の学生王者の関学(関西2位)と対戦する。リーグ戦では15-17と追い詰めながら、負けた。「必死にやるだけです。関学どうこうは関係ない。負ければ終わりの勝負なんで、いい準備をして、思いっきりやりたいです」。神戸大がパスに出たときは、OLの左端の77番を見ましょう。そして彼が相手のラッシュからQBを守り抜いたら、こうつぶやきましょう。「さすが堀本」と。

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