アメフト

遅れてやってきた走り屋 神戸大RB森分優人

小学3年からずっとアメフト

関西学生リーグ1部最終節

11月17日@大阪・万博記念競技場
神戸大(3勝3敗)vs近畿大(3勝3敗)

今シーズンの関西学生リーグでは、2部から復帰してきた神戸大と近大の奮闘が光った。両校は最終節、勝ち越しをかけて対戦する。その神戸大には楽しみなランナーがいる。1回生のRB森分優人(もりわけ、三田祥雲館)は今シーズン28回のランで194ydを進み、前節を終えてラン獲得距離の部門でリーグ10位につける。身長178cmの大型RBでスピードもあり、リーグを代表する走り屋に育っていく可能性がある。

「大学で関学倒す」と2浪

前節の龍谷大戦に勝ったあと、初めて森分に話を聞いた。この日は7回のランで37ydを走り、ショベルパスを受けて15yd前進。「インサイドゾーンを走ったときに逆サイドまで見えてて、今日は結構よかったと思います」。森分は笑顔で振り返った。2年間の浪人生活を経て、この春、神戸大学海事科学部に入学。念願のアメフト部「レイバンズ」に入った。

森分のフットボール歴は長い。父の博紀さんが防衛大、社会人のサンスター(当時)でQBとWRとしてプレーしたあと、小中学生のクラブチームである「大阪ベンガルズ」でコーチをしていた。「小学3年のときに練習につれて行かれて、やってみたら楽しかったんです。それで入りました。父のプレーの映像は見たことないです。写真は見たことありますけど、白黒でした」。森分が爆笑した。

兵庫県三田(さんだ)市の地元にある三田祥雲館高に進んだ。アメフト部は20人程度の小所帯。RBとして活躍したが、関西学院には歯が立たなかった。3年のときは春も秋も関学に0-33で負けた。引退試合となった秋の関学戦、森分は右足のけがでフルパフォーマンスを出せず、不完全燃焼に終わった。「大学で関学を倒したい」。この思いが出発点になった。神戸大を目指して受験勉強に入った。

中央付近の穴に飛び込んでいく森分

現役での受験は遠く届かなかった。家で自分なりに勉強した1年後も不合格。2浪目は大阪の河合塾に通った。さらに1年。やっと春が来た。自宅でネット上の合格発表に自分の番号があるのを確認し、号泣した。「めちゃくちゃ長かったです。ほんまにホッとしました」。2年の回り道をしたため、中学時代にベンガルズでともにプレーし、1学年下だった日大のQB林大希明治大のQB西本晟とは、学年が逆転した。

受験生へのメッセージは

2年のブランクは大きい。何とか間に合わせ、背番号21をつけて臨んだ秋のシーズン。初戦は立命館大戦。「強かった。これが大学のフットボールなんやなと思いました」。2戦目が憎き関学だった。「何もできなかった。悔しかったです」。そして3戦目の京大戦。森分は第4Qに48ydのロングゲイン。中央付近を抜群のスピードで駆け抜け、伸びやかに走った。「ちょっと自分らしいプレーができました」。チームの初勝利に貢献した。

これまでで最高の走りについて聞くと、高3の春の啓明学院戦を挙げた。「自陣30ydぐらいから4回連続でキャリーして、タッチダウンまでいったんです。相手も僕が走るって分かってたはずなんですけど、それでも走れたから、めっちゃうれしかったです」。大学でも、チームからそこまでの信頼を受けるランナーになりたい。

抜群のスピードに体の強さが加われば……

さあ、1年目のシーズンを締めくくる近大戦だ。「近大は強いですけど、いつも通りスピードでまくりたいです」。森分の目が輝く。

最後に彼にお願いした。自分と同じように、大学でアメフトをするために浪人している受験生へのメッセージを。

「僕は勉強の合間に、ライブ動画で関西学生リーグの試合を見てました。自分の立ちたいフィールドをしっかり意識して、モチベーションを上げて勉強してほしいなって思います」

2年の浪人生活は苦しかった。それでも神戸大に入ることはあきらめなかった。だからいま、森分優人は「立ちたいフィールド」にいられる。

遅れてやってきた走り屋は、神戸大学レイバンズで希望だらけの日々を過ごしている。

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