アメフト

西南学院大WR城代、全身全霊のゴールデンルーキー

九大戦でタッチダウンを決め、喜ぶ城代

甲子園ボウル西日本代表決定2回戦

11月11日@福岡・春日公園競技場
西南学院大(九州)vs金沢大(北陸)

今週末、このゲームをご覧になる方にはぜひ、西南学院大の15番に注目してもらいたい。WR(ワイドレシーバー)の城代慈英(じょうだい・じえい、1年、筑陽学園)。ルーキーながら秋の九州学生リーグでは常時出場し、5試合で15回のキャッチはリーグ3位の好成績だった。4つのタッチダウン(TD)を挙げ、5戦全勝でのリーグ5連覇に貢献した。間違いなく九州ナンバーワンのWRになれる力があり、関東や関西の1部で活躍できるレベルの選手にもなれる。ただQBも兼任していて、今後はそちらでの活躍も期待できそうだ。

高校では軟式野球の捕手

九州学生リーグの大一番となった第4節、九州大との全勝対決でも城代の能力の高さは垣間見えた。第2クオーター(Q)、九大に6点を先取された直後の攻撃シリーズ。敵陣40ydから第3ダウンのパスが失敗。攻撃権更新まで8ydを残して、西南大は早くもギャンブルに出た。選んだのは城代へのパス。右サイドを縦に抜けた15番へパスが飛ぶ。左後方から落ちてくるボールを、両腕を柔らかく使ってキャッチ。ギャンブル成功で、しかもゴール前10ydまで前進。これが西南の同点TDにつながった。

さらに1シリーズ後、最初のパスが左サイドでフリーになった城代へ飛んだ。いや、パスが短い。九大のDB(ディフェンスバック)がボールの正面に入り、インターセプトかと思われた。「やばい」と思った城代もインターセプト後のDBをタックルするために戻ろうとした。するとDBがボールを空中にはじく。しかも城代のいる方向へ。ルーキーは「ラッキー」とばかりにボールをつかみ、エンドゾーンまで駆け抜けた。

相手と競り合いながらの柔らかい腕の使い方、そしてラッキーをものにする勝負強さ。とてもこの春からアメフトを始めたばかりの選手とは思えなかった。

九大戦でロングパスをキャッチした城代(手前)

リーグ5連覇と西日本代表決定トーナメントへの出場を決めた九大戦後、城代に話を聞いた。ロングパスを受けたシーンを振り返り、「フォースダウンで飛んできたパスを捕れて、うれしかったです。ああやって後ろから飛んでくるパスも、苦手じゃないです」。ほほぉ、言うねえ。ランプレーで相手をブロックにいくときも、いっさい手を抜かないのがいい。身長180cm、81kgの体を、がむしゃらに相手にぶつけていた。

城代が高校まで野球をしていたのは分かっていた。あのパスキャッチの動きからして、背走しながら球を追うこともある外野手だったのかなと想像していた。すると、「軟式野球のキャッチャーをしてました。チームはめちゃくちゃ弱かったです」との返事。意外だった。

「慈英」の名、体現する男

父の隆行さんも西南大でアメフトをしていた。当時は部員数も少なく、攻守ともに出場する「両面(りゃんめん)」のラインだった。父からアメフトのことを聞かされていた城代は、テレビで見たスーパーボウルでこの世界に引き込まれた。「選手がカッコよくて、やりたいなって思いました」。そのとき注目していたのはRB(ランニングバック)だったという。

大学からアメフトをすると決めて、指定校推薦で父の母校へとやってきた。入学するころにはパスを捕るのが楽しそうだと思っていて、WRを希望した。練習していくうち、運動能力の高さを見いだされ、QBの練習もするようになった。

初めて試合でパスを捕った日のことは一生忘れない。5月13日の甲南大戦。どしゃぶりの日だった。コーチに呼ばれ、1プレーだけ出た。「フック投げるから入れ」。5ydまっすぐ走って振り向く、入門編のルートだ。何度も練習してきたのを思い出しながら走って、振り向いて、捕った。

いまは一人暮らし。実家に帰ると、食事の時間に父とアメフトの話になる。父は言う。「3年生にいいQBがいるから、2年間はWRでしっかりやれよ。もう試合に出てるのは幸せなことやぞ。けがせんよう、思いきりやれ」。先輩の言葉を、心に刻んで帰る。

WRをやっていてうれしいのは、タッチダウンをしたあとにOL(オフェンスライン)のでっかい先輩たちから褒められる瞬間だという。「あれが一番ですね」。城代の表情がグッと緩む。

西南大、そして九州勢にとっての壁は、11日に金沢大に勝てばぶつかる東海勢だ。ここ4年で一度しか勝てていない。今年は名城大が11日の勝者を待ち受けている。「打倒東海っていうのは、入学してからずっと言われてきました。去年の名古屋大学との試合をずっと見て、東海との試合をイメージしてます」。その前にまず、金沢大だ。「練習も全力、試合も全力で、ブロックして走って。必死で先輩たちに着いていきます」。城代の目に力がこもった。

城代(15番)は1年生ながらすでに存在感がある

「慈英」という名前は、とても気に入っているのだという。友だちからも名前で呼ばれるのが、すごくうれしい。命名の由来は、城代が生まれる前年に父が博多祇園山笠に出たときのこと。父の関わった「舁(か)き山」の標題に「慈」という漢字が含まれていた。慈(いつく)しむ。その言葉の意味をかみしめた父が名づけた。「大事にする」。そしていま、新しい競技で出会った仲間を大事にして、城代慈英は前進の日々を過ごしている。

11日、春日のフィールド。全身全霊でプレーする15番が見られるだろう。

in Additionあわせて読みたい