アメフト

関大アメフト主将「誰よりも熱き皇帝」山田周平

山田は主将としてOLとして、チームを支える(撮影・篠原大輔)

どのようなスポーツチームにおいても、主将の存在はとても大きなものだ。関西大学アメリカンフットボール部「カイザース(皇帝)」を率いるOL(オフェンスライン)山田周平(4年、関大一)も例外ではない。

「主将が迷ってはいけない」

持ち前の明るさでチームを引っ張る山田。副将のLB(ラインバッカー)前野太一(4年、追手門学院)は山田の第一印象を思い出し、「元気で主張が強い男」と語った。高校時代に大阪府選抜チームに選ばれたとき、山田を中心にした関大一高のメンバーがにぎやかにしていたという。人望も厚い。副将のQB(クオーターバック)入佐一輝(4年、関西大倉)は「誰からも嫌われてない。みんなから頼りにされてる男だと思う」と話す。

山田の中に主将になろうという気持ちがわいたのは、3回生の春だった。「1回生や2回生のころはチームのことに無関心というか、どういうことをすればプラスになるのかが考えられてなかった」。3回生になり、コーチや先輩らと話を重ねた。さまざまな話を聞き、同期の中で考えを重ね、大役に名乗りを上げた。「自分が主将をしたら、自分にとってもチームにとってもプラスに働くと思いました」

「元気で主張が強い男」。山田を端的に表した言葉だ(撮影・篠原大輔)

代替わりの際、前主将のDL(ディフェンスライン)岡田勝行(2017年度卒、郡山)にかけられた言葉がある。「主将が迷ってはいけない、と。主将が迷えばチーム全体にも迷いが生じるから」。その上で、副将には自分とはタイプの違う前野と入佐を据えた。「前野はすごくストイックで、何事にも考え方が深い。入佐は常に冷静で、全体をしっかりとらえて自分の意見を言える人間だと思ってます」

当たり負けしないフィジカルで

今年は、9年ぶりの学生日本一を目指す勝負の1年。現在、関西の学生アメフト界は関学と立命が覇権を分け合う。毎年のように2強の後塵を拝す現状を打破すべく、掲げたスローガンは「覚悟」。チーム全員が日本一になるための覚悟を持って前進することを意図した。新たに導入したのが、「ブラザー制度」。同じポジションの選手で4~5人のグループを作り、一緒に行動する。上級生と下級生の距離を縮めるため、山田が中心となり取り組んできた。

春から勢いをつけたいところだったが、勝てない。春の1軍戦は5戦全敗で、チーム内にも危機感があった。秋のシーズンへ向けて強化を図ったのが、当たり負けしないフィジカルの養成。グラウンドで重りを持って走り、室内ではウエートトレーニングに明け暮れた。秋は、攻守ともパワーで相手を上回るシーンが増えた。「フィジカルは身についてきてる」と、山田も手応えをつかんでいた。

「ブラザー制度」のおかげで、関大の選手たちは心の距離が近い

そして10月20日、開幕4連勝同士で立命とぶつかった。チームで合宿してミーティングを重ね、立命の映像を繰り返し、繰り返し見た。全員が「パンサーズに勝つ」という気持ちを強く、強く持って臨んだ一戦。先制には成功したが、ミスから失点を重ね、敗れた。

悔しさを胸に、2週間後の関学戦へ練習を重ねた。「目の前に青いヘルメット、青いユニホームのKGがおるんやぞ、と何度も言ってきました」と山田。並々ならぬ覚悟で11月4日、万博記念競技場へ乗り込んだ。前半を12-6とリードして折り返し、後半に関大は1タッチダウン、関学は2つのフィールドゴールで加点した。19-12の試合残り2分からの関学の攻撃。関大は続けざまにパスを決められ、残り5秒でタッチダウンを奪われた。同点で試合終了だ。勝つことはできなかったが、2011年から負け続けてきた関学と引き分けた。

あと一歩で関学に勝ちきれず

「日本一への道が途絶えたわけではない。京大を倒すことに集中する」と山田は言った。最終節に関大が京大を下し、関学が立命に敗れれば、立命が全勝優勝で関大と関学が5勝1敗1分の2位に並ぶ。このときは抽選で、甲子園ボウルの西日本代表決定トーナメントへ進む2校目が決まる。確かに道は続いている。このチームで戦う期間は、そう長く残されてはいない。誰よりも強い覚悟と強い気持ちを胸に、熱き漢たちは最後の最後まで全力で戦い抜く。

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