大学野球

大阪市大の新エース塘本武司 動作解析で変身、チーム初のリーグ連覇とプロ入り狙う

角度のある球が塘本の武器。ドラフト候補としても名を挙げられている(すべて撮影・小中翔太)

大阪市立大は昨秋の近畿学生野球リーグで4シーズンぶり4度目の優勝を飾った。古寺航(4年、市岡)がリーグ4位となる防御率1.80をマークし、最優秀投手に選ばれた。そして塘本(とももと)武司(3年、八尾)は防御率2.00でリーグ6位。今年のドラフト候補の一人に挙げられている。公立大学でスポーツ推薦はなく、練習日に指導者不在であることも多い環境で、なぜ好投手が育つのか。その理由は動作解析の専門家を招き、定期的な指導を受けていることにあった。

体の仕組みから説明してフォーム改善

株式会社Baseball Conditioning Systems(BCS)には、野球における動作改善指導を担う専門スタッフがそろっていて、大阪市大は数年前から月1回程度指導を受けている。BCS芦屋本店に勤務する池田翔平コーチは言う。「分かりやすい、と言ってもらえますね。『上から投げるというのがどのくらい上なのか。どうやったら振り下ろせるのか。そういう体の仕組みを解剖学や医学的な根拠から教えてます。『上から投げなさい』だけじゃなくて、『こういう理由でこういう仕組みがあるから上から投げなさい』と説明できます」

3方向からフォームを撮影し動作を分析する

ホーム側、三塁側、二塁側から投球フォームを撮影し、すぐさま改善点を正確に分析する。

「まずはバランスです。下半身主導でステップできているか。上半身が崩れていないか。整った上半身を下半身で押しきれているか。胸の向く方向は相手に定まっているか。胸を向けるための足腰はちゃんと進んでいるか。力の方向性などを、段階を踏んで見てます。だから『下半身は問題ないね』という選手もいれば、『上半身の前にまず下半身だな』という選手もいます。球速を上げるのとコントロールをよくすることは確実にできるので、本人のポテンシャルと最初に見たかたちから判断させてもらいます。おそらくいま見てる子に関しては、(球速を)5kmは上げられるんじゃないかなと思います」

実際にBCSの指導を受け、塘本は短期間で大きく成長した。

130km台前半の球速が144kmに

ドラフト候補の塘本もまた、BCSの指導で力をつけた一人だ。以前はステップして体が回転を始めようとしているときでも、ひじが下がったままだった。それを早くトップを作るフォームに改造。「高校のときは投げ方が汚くて球数も多くて、ランナーを出してから粘り強くという感じでした。1回生のときの夏に合宿に来ていただいて、そこから球速がグッと伸び、リーグ戦で投げさせてもらえるようになりました」と振り返る。

姿勢、左手の使い方、踏み出した足の向きなど。改善する度に、みるみるフォームがスムーズになっていく

1回生の秋にはリーグ戦のマウンドに上がり、実に48シーズンぶりの優勝に貢献。入学したときに130km台前半だった球速は144kmまで上がった。しかも表示された球速以上のノビとキレを感じさせる球質を手に入れ、キャッチボールの相手のグラブをいくつも壊した。

長身から投げ下ろす角度のあるボールは大きな武器で、昨年8月には阪神タイガースの2軍と対戦し、6回を投げて1失点。「いい経験になりました。たまたま抑えられてうれしかったです」と塘本。さらに「変化球はあんまりでしたけど、まっすぐでファールを打たせたり空振りを取れたりと、少しは通用したかなと思いました」と自己分析。打たれたヒットは、ソロホームラン1本だけという快投を演じた。

塘本のフォーム改造に携わったのは前任者の塩見達郎コーチだ。池田コーチは直接指導したわけではないが、並の投手から一躍ドラフト候補へ躍り出た塘本について「元々ポテンシャルが高かったとは聞いてます。彼の特徴として、ひじが下がり気味になってしまう。でも下がったところから全身のバネを使って引き出す能力があると聞いていたので、遠投で力を出せる選手をストライクゾーンに力を出せるように整えたのが塩見だと思います」と話す。

ピッチャー陣のリーダーを務める伊澤由紘(3年、桐蔭)は、塘本と並ぶ先発要員としての活躍が期待されている。「BSCで教えてもらったのが、いままで考えたことのない体の動かし方だったんで面白かったです。腕の上げ方や肩甲骨の動かし方を動画に撮って、プロと比較する。それがすごく分かりやすかったです。(指導を受ける前は)塘本には勢いはありましたけど、いまみたいな140kmは出てなかったし、高めに抜ける球が多かったので。夏で一気に変わりました。キャッチボールでも明らかに球が変わりました」と効果を実感。伊澤もまた、グローブを破壊された被害者の一人だ。

BSCは動作の改善点だけでなく、練習方法もアドバイスしている

それでも目指すは「打ち勝つ野球」

冬のテーマは誰がリーグ戦に出ても大丈夫なようなピッチャー陣をつくること。1回生の秋に優勝したときを振り返ると、翌年はけがの影響で1年間投げられなかった投手もいた。「誰が出ても大丈夫なように、平均的な底上げをしたいです」と伊澤。

投手を育てる環境はある。それでも2010年から指揮を執る辻盛英一監督には言う。「力で圧倒しないと、継続して強いチームにはなれない」。目指しているのは「打ち勝つ野球」。練習時間のほとんどをバッティングに割き、ファーストストライクは必ず振っていく。それがチーム方針だ。指名打者のない試合では、ピッチャーはバントをしない。辻盛監督は「国公立がそういう野球をやって、私立を倒すのに意味がある」と、選手たちに話している。

トレーニングの様子。オフ期間に体力強化に取り組む

大阪市大はプロへ選手を送り出したことも、リーグを連覇したこともない。2020年はそれらがダブルでやってくる歴史的な1年になるか。

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