野球

特集:東京オリンピック・パラリンピック

広島からドラフト1位指名の明大・森下暢仁、大学経由で実らせた夢のプロ入り

広島の佐々岡新監督との2ショットに収まる明大の森下

10月17日、2019年のプロ野球ドラフト会議で森下暢仁(まさと、4年、大分商)が広島東洋カープから1位指名を受けた。プロ球団から明大の選手が指名を受けるのは2010年の荒木郁也(現・阪神タイガース)から10年連続。早大の9年連続を抜いて史上最長となった。1位での指名となると、2017年の齊藤大将(現・埼玉西武ライオンズ)以来になる。同じ九州出身で投手の伊勢大夢(ひろむ、4年、九州学院)も横浜DeNAベイスターズに3位で指名された。

駿河台キャンパスに、全国から報道陣が大挙

自らの名前が呼ばれた瞬間、森下の表情が少しだけ緩んだ。交渉権を獲得したのは、前日にドラフト1位指名を明言していた広島。明大の善波達也監督と握手を交わし「おめでとう」と祝福を受けると、ようやくあどけない表情で白い歯をこぼした。「本当に1位で指名されたんだなという気持ちです」と森下。感慨深げに指名された瞬間を振り返った。

広島から1位指名を受け、善波監督とともに笑顔を見せる

今回のドラフト会議で森下は、大船渡高の佐々木朗希、星稜高の奥川恭伸とともに「BIG3」として注目されていた。そのため、例年は東京都・府中市の硬式野球部寮で指名を待つところを、今年はそれよりもはるかにキャパシティがある駿河台キャンパスのアカデミーコモンを使用。会場には、広島が拠点とする中国地方や森下の地元・大分のメディアまで、全国各地から報道陣が集まった。

今季は投手兼主将として、チームを引っ張る

高校卒業後の進路について、森下はプロ入りか大学進学かで悩んだ。プロ入りを叶えたかった半面、本当に戦っていけるのかという不安が当時は少なからずあった。そんな森下に声をかけたのが明大の善波監督だった。「大学でしか経験できないことをやってほしい」と6度も大分に足を運び、野球部への入部を説得。最後は坂本誠志郎(現・阪神)と柳裕也(現・中日ドラゴンズ)を引き連れて、森下の元へ出向いた。監督、先輩、OB、そして両親。多くの人に背中を押され、森下は明大の門を叩いた。

そこから4年が経ち、誰もが認める大エースへと成長した。今年は柳以来となる投手兼主将を務め、チームを40度目のリーグ優勝、38年ぶりの日本一へと導いた。大学日本代表には3年連続で選出され、日米大学野球選手権ではMVPを獲得。チームの3大会ぶりとなる優勝の立役者になった。

シーズン開幕前、森下はこう語った。「自分はドラフト1位でプロに行かないといけない」。今季の華々しい活躍の裏にあった強い覚悟。そこにもう迷いはなかった。

野球部員たちから胴上げで祝福された

来季からは赤色のユニホームに袖を通す。熱狂的なファンたちがすでに入団を心待ちにしている。指名直後、ツイッター上では「森下くん」や「森下一本釣り」といったワードがトレンド入り。単独指名の喜びが綴られた。広島の佐々岡真司新監督は「若いチームの中で頑張ってほしい」と1年目からの登板に期待を寄せる。

「新人王を目指して頑張りたいです」。プロ入りへの意気込みを語った森下は、先輩の野村祐輔(現・広島)のように、ルーキーイヤーからの活躍を狙う。

in Additionあわせて読みたい