名古屋大から初のプロ野球選手誕生! メガネのエース松田亘哲が中日の育成1位指名
名古屋大硬式野球部のエース松田亘哲(ひろあき、4年、江南)にとって、2019年10月17日は忘れられない日となった。プロ野球ドラフト会議で、地元の中日ドラゴンズが育成選手の1巡目で松田を指名。松田は入団の意向を示していて、名大初のプロ野球選手が誕生する。
育成選手の指名が始まると、一本の電話が
この日は午後5時から名古屋大シンポジオンホールでドラフト会議のパブリックビューイングが開かれた。その壇上には松田と服部匠監督の姿があった。会場にはテレビカメラ5台が並び、駆けつけた記者も約30人いた。野球部の仲間たちも笑顔でシートに陣取っていた。全国の選手たちが次々と指名されていく。松田は笑顔を見せながら運命の瞬間を待っていた。
指名が5巡目に入った6時40分ごろ、記者は50人ほどに増えてきた。「そろそろか?」と、会場の誰もが前のめり。とくに中日の指名で別の選手の名前が呼ばれると、会場にため息がもれた。松田は正面を見たまま何度もうなずき、次の指名を待った。6巡目には選択終了を表明する球団も出始め、8巡目を終えてすべてのチームが選択終了となった。その瞬間、モニターを見ていた松田は笑みを浮かべ、また何度もうなずいた。
休憩を挟み、7時25分に育成選手の指名が始まった。その直後、服部監督に一本の電話が入った。松田を見てうなずくと、電話を切る。松田は姿勢を正すと、遠くを見た。そして中日ドラゴンズからの指名。会場が歓喜に包まれる中、松田は笑いながら、どこか困ったような表情を浮かべた。「たくさんの方に見られてるから、どう喜んだらいいのかと悩んでしまったんです」。のちに松田はそのときの心境を教えてくれた。
プロになっても「考える野球」を貫く
すぐに記者会見が始まり、服部監督は「ただただホッとしたのに尽きます。振り返りますといまから3年半前、名古屋大学のグラウンドに彼が初めて顔を出したとき、高校時代はバレー部と聞いて、正直一緒にやっていけるのかという不安がありました。ですが『ピッチャーをやりたいんです』とはっきり言いました。そのときの私は今日、このようなことになるとは夢にも思っていませんでした」と語った。
そして松田はというと「本日はお忙しいところに、たくさんの方々に来ていただきありがとうございました。頭が真っ白になっておりまして、本日は、え~と、本日は……(笑)。どうぞよろしくお願いします」と、この日一番の緊張ぶりを露呈した。
それでも「自分は大学のチームメイトにすごく恵まれてて、その中で野球を伸び伸びとできたんで、これだけ成長することができたのかなと思ってます。自分はまだ劣ってるところがたくさんあります。自分は野球をたくさん考えてここまできたので、プロになっても野球についてたくさん考えて、一歩一歩成長できたらいいなと思ってます」。力強くそう言って、プロとしての第一歩を踏み出した。