大学アメフト

特集:駆け抜けた4years. 2020

西南学院大アメフト今村真也 主将として2年間やりきった信念と覚悟の男

「打倒関西」にかけた1年が終わり、今村に悔しさがこみ上げた(すべて撮影・安本夏望)

監督から「尊敬している」と言われる選手は、そうはいない。2018、19年度に西南学院大アメリカンフットボール部「グリーンドルフィンズ」のキャプテンを務めた今村真也(4年、東筑)がそうだった。 

王者関学に挑戦、26-47で終戦

大学日本一を決める甲子園ボウルの西日本代表を決めるトーナメントの2回戦が昨年1116日にあり、九州学生リーグ6連覇の西南大(九州)は関西学院大(関西2位)に26-47で敗れた。「打倒関西」を掲げた西南大の挑戦が、ここで終わった。 

関学戦の日、福岡県営春日公園球技場のスタンドが埋まった

リーグ戦中に吉野至監督を取材したとき、監督が主将の今村のことをこう評した。「いままで出会ってきたフットボーラーの中で一番尊敬してます」。驚いた。関西のフットボールを取材している限り、そんな言葉に出くわしたことがなかった。 今村とはどんな男なんだろう。興味が湧いた。

彼は福岡県立東筑高の出身。春夏合わせて9度の甲子園出場がある野球部にいた。高3の夏に野球部を引退したあと、アメフトの九州学生リーグの試合を観戦に行った。当時西南大の3年生だった兄の謙太さんが、ディフェンスのLB(ラインバッカー)で試合に出てきた。熊本であった福岡大との試合を見て、「シンプルにかっこいい」と惹(ひ)かれた。兄の後を追うようにして西南大でアメフトを始めた。 

1年生なのに「4年、もっとやれや」

西南大アメフト部は基本的に全員が初心者で、スタートラインはみんな同じだ。そんなチームにあって、今村は1年生のころから異次元のリーダーシップを発揮していたという。「彼がキャプテンじゃないか?」。吉野監督はすぐに今村の〝素質〟を感じたという。新入生の今村は4年生に向かって「4年がやらんでどうすんねん」「4年、もっとやれや」と言い放った。兄も4年生の一人だったが、それも気にせず堂々としていた。「いま思えば生意気でしたね。負けず嫌いで根拠のない自信があったんだと思います」と、今村は振り返る。 

とにかく負けず嫌いで、やると決めたことは最後までやる。身長167cm、体重78kgと決して恵まれた体格ではないが、愚直に取り組んだ。1年生のときは同じDBの中でもCB(コーナーバック)で、2年生から最後尾を守るSF(セーフティー)になった。入部当初に苦手だったタックルには、一切手を抜かなかった。練習前、練習後には必ずタックルの自主練習。そのうち今村のフットボールに対する姿勢は、誰もが認めるものになっていった。 

今村は小さな体でタックルにかけてきた

「2年計画」で3年生から主将に

3年生になると主将を任された。副将にも同期のQB伊藤嵩人(新宮)とRB/DB篠崎蓮(明善)が就いた。吉野監督は2年計画のチームづくりをしようと考えたのだ。同じ選手が2年連続で幹部を務めるのはチーム史上初のことだった。この年は「打倒東海」を目標に掲げた。「当たり前のように九州で勝たないといけないチームを引っ張るのはしんどかった」と今村。リーグ戦は全勝で5連覇を達成した。甲子園ボウルの西日本代表を決めるトーナメントで、東海代表の名城大と対戦。26-27と1点差で敗れ、目標の「打倒東海」はならなかった。 

関学戦で仲間のビッグプレーに喜ぶ今村(右)

今村には一つの考えがあった。「打倒関西をチーム全員で目指したい」。「打倒東海」という目標は達成できなかったが、これからの西南大グリーンドルフィンズのためにも、高い目標を設定しようと思った。そのことを仲間に伝えると、無謀ともいえる挑戦に反対する仲間もいた。「九州6連覇でよくない?」。そんな声も聞こえた。だが、今村はまったくぶれなかった。「打倒関西を目指すチームでなければ、僕がこのチームにいる意味はない」。退部も辞さない覚悟でチームメイトと向き合った。約20人の同期の心はバラバラになり、退部者が出てもおかしくない状態になっていた。 

関学と立命の死闘を見て「打倒関西」を掲げた

201812月2日。今村たち新4年生の姿は、大阪の万博記念競技場にあった。前日から車を走らせ、関学大と立命大の西日本代表決定戦を観戦に来たのだ。主将、副将だけで行くつもりだったが、ほかの4年生たちも一緒だった。一時は13点差をつけられた関学が、試合残り2秒からのプレーで逆転サヨナラフィールドゴールを決め、甲子園ボウルに進んだ。学生最高峰の死闘をしっかり目に焼きつけた。 

彼らの中に、奮い立つような感覚があった。「最強のチームに勝つ景色を見たい」。4年生たちはこの日を機に変わっていく。目標を決めるミーティングは1カ月半にも及んだ。新チームのスタートは例年より遅く、1月になったが、主将の今村を中心に西南大が本気で「打倒関西」を掲げる挑戦が始まった。今村は言う。「全員が同じ気持ちでスタートできないと意味がないと思ってました。話し合いを重ねて、僕なしでミーティングをすることもありました。最後は『みんなで勝ちたい』と、一つになれた。やめると言ったのは、僕なりの覚悟でした。覚悟がないと、絶対に勝てないから」 

関学に負けたあと、仲間たちの前で話す今村

そして今年度も九州学生リーグ1部で全勝して6連覇。西日本代表を決めるトーナメントで福井県立大(北陸)に勝ち、関西の大学と戦う挑戦権を得た。待ちに待った日がやってきた。相手は昨年の学生王者の関学。試合前に今村は笑顔で言った。「相手が決まったときは『関学か〜』って思いましたけど、いまは関係ないです。準備してきたことを出すだけです。緊張もなく、みんなもいつも通りですよ」 

監督からの「よくやった」に涙

17点差をつけられた第2クオーター(Q11分3秒、QB伊藤がゴール前3ydから自らボールを抱えタッチダウン(TD)を決める。ディフェンスでは今村も果敢に低いタックルを決めた。伊藤のパスがさえ、第4Qに一時10点差にまで迫ったが、26-47で負けた。「関学のプレーは一枚も二枚も上手でした。戦える部分もあったからこそ、悔しいです」と今村。西南大の挑戦はここで終わった。 

試合後のハドルで吉野監督から「よくやった」と言われ、今村は感極まった。涙をぬぐい、晴れやかな表情で言った。「1年生のころから期待されてたメンバーが多くて、期待に応えないといけないという苦しい4年間でもあったと思います。それでも楽しんでやってきたし、楽しい1年でした」。4年生たちの夢は次の代へ託された。かけがえのない仲間と目指した「打倒関西」。今村の人生において忘れることのない日々になっただろう。

同期の選手とスタッフに監督、コーチを加えて最後の一枚

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