ラグビー

サンウルブズで世界に挑戦する大学生たち スーパーラグビーが2月1日に開幕

20分間の出場でも、しっかりアタック面を引っ張った齋藤(すべて撮影・斉藤健仁)

21日のスーパーラグビー開幕戦を控えて、参入5年目で日本を本拠地とするプロチーム「サンウルブズ」が125日、福岡・ミクニワールドスタジアムで、トップチャレンジ(2部相当)に所属する選手の選抜チーム「チャレンジバーバリアンズ」と対戦した。 

天理のフィフィタが大学生で唯一の先発

現在、大学生でサンウルブズのメンバーに選ばれているのは天理大のWTBシオサイア・フィフィタ(3年、日本航空石川)、早稲田大を大学選手権優勝に導いたキャプテンのSH齋藤直人(4年、桐蔭学園)の2人。日本代表だけでなく、南アフリカ代表、オーストラリア代表、イングランド代表、フィジー代表の経験者もいる中でフィフィタは先発出場を果たし、齋藤は控えに入った。 

ほかにも練習生である早稲田のCTB中野将伍(4年、東筑)に明治大のLO箸本龍雅(3年、東福岡)とFB雲山弘貴(2年、報徳学園)、さらには慶應義塾大のHO原田衛(2年、桐蔭学園)と流通経済大のWTBイノケ・ブルア(2年、フィジー出身)の5人も、ベンチから出場をうかがった。なお同じく練習生の明治大PR安昌豪(4年、大阪朝鮮)と摂南大のPR郭玟慶(3年、台湾出身)の2人はメンバー外だった。 

先制はされたが、序盤からセットプレーで優勢だったサンウルブズが猛攻を仕掛け、計13トライ。81-28と快勝し、開幕戦に弾みをつけた。大学生で最も輝いていたのはフィフィタだった。 

四つのトライでMOMに

4トライを挙げてMOMに選ばれたフィフィタ

前半15分、裏へのキックに反応し、快足を飛ばしてしインゴールでボールを押さえてトライ。さらに前半に一つ、後半にも二つのトライを挙げて「ハットトリック超え」。この試合のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれた。 

天理ではセンターでプレーしているフィフィタだが、サンウルブズではウィングでプレーした。「50m62くらい」というフィフィタは「ウィングは高校時代もやってたし、天理でもたまにやっているので」と、まったく問題ない様子だった。 

天理の小松節夫監督には、5月末までサンウルブズに集中する許可をもらっているという。初のスーパーラグビー出場に向けてフィフィタは「単位は問題ないです。スーパーラグビーでもハットトリックがしたい。オールブラックス(ニュージーランド代表)の選手たちと対戦するのが楽しみです」と、先を見すえた。 

サンウルブズの大久保直弥ヘッドコーチに「そういえば大学生でしたね。貫禄がある」と言わしめたフィフィタ。このままスーパーラグビーでも持ち前のフィジカルとスピードでトライを量産すれば、日本代表入りにも大きく近づくはずだ。 

SH齋藤は後半20分から出場し、持ち前のパスさばきだけでなく、スクラムから自らブラインドサイドを攻めたり、キックで相手の裏を狙ったり。昨年度、大学生で唯一日本代表候補に入った実力を発揮した。 

早稲田の齋藤は栄光忘れ、サンウルブズに集中

初めてサンウルブズのジャージーを着ての試合に、齋藤は「去年までテレビを見て応援してたチームのジャージーを着て、グラウンドに立てたのはうれしいんですけど、まだスーパーラグビーが始まってもいないので、成長できるように頑張りたいです」と笑った。 

大学選手権決勝から、まだ2週間と少し。完全オフを4日ほどとったが、116日にはサンウルブズに合流した。「(優勝の)余韻に浸っててはダメだと思って、(合宿地の大分に)向かう飛行機の中で、自分の目標を書いて切り替えました。一度、テストのために東京に戻りましたが、『優勝を忘れてたな』と思いました。それくらいサンウルブズに集中してやれてます」と話した。 

サンウルブズには9カ国の選手が在籍しているため、チームの公用語は英語だ。また齋藤がポジションを争うライバルは南アフリカ代表経験のあるルディー・ペイジだ。 

齋藤は「スクラムハーフというポジションは信頼が必要なので、英語はしゃべれないですが、自分から積極的に関わる姿勢は見せてるつもりです。(周りの)全員がプロ選手ということで、グラウンド外の姿勢とかコンディションを整える行動とか、すべてが参考になります。こんな貴重な経験はムダにはにできないですね」と意気込んでいる。 

大久保ヘッドコーチは齋藤に関して「キャプテンとして早稲田を引っ張ってましたが、いま、プロ選手としてスーパーラグビーで何が必要か、そこのマインドセット(心構え)ができてます。プレー時間は少なかったですが、彼の持ってる視野の広さ、パス、キックスキル。慣れてくれば今後、もっと生かせると思います」と期待を寄せた。 

早稲田の中野はフィジカル面でアピール

激しいタックルにいく中野

ほかにもCTB中野、WTBブルア、LO箸本、FB雲山が後半の途中から出場。残念ながらHO原田は出場時間をもらうことができなかった。中野は「攻守にわたってフィジカルにいこうと思った」と言ったように、外国人選手相手にも当たり負けせず、ロングパスでトライも演出。本メンバー昇格に向けたアピールに成功したといえるだろう。 

大久保ヘッドコーチは「(大学生も)戦力として考えているので、ここにいてジャージーを着てます。おととい、昨日とテストをして、(再びチームに)入ってきた選手も何人かいる。若い選手が成長したい気持ちは、チームに活力を与えてくれます。中野、(齋藤)直人、箸本もみんなそれぞれ普段は静かですが、激しさを前面に出してくれたのでよかった」と、一定の評価を与えた。 

左から原田、箸本、雲山

国内リーグであるトップリーグも始まっており、すでに2023年ワールドカップの代表メンバー争いはスタートしている。大学生といえども、スーパーラグビーでいいパフォーマンスをすれば6月の新しい日本代表の候補に選ばれるはずだ。シーズンは終わったばかりだが、大学生の選手たちはサンウルブズという新たな舞台で、世界への挑戦に胸を躍らせている。

途中出場したWTBブルア

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